弁護士によるオンライン申請(その19)~法律事務所にとってオンライン申請にどういう意味があるのか?
2023.10.12更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で弁護士をしております、野澤吉太郎です。
ワンストップサービスをオンライン申請でおこなうプロセスが、法律事務所にとって何か意味をもつのかについて考えを書いてみたく思います。
電子定款認証をすれば収入印紙4万円を節約できる、というメリットはあります。コスト面ではそのくらいかと思います。そのほか、郵送申請による場合は郵送事情により申請日(到達日)が左右されますが、オンライン申請の場合は到達日がコントロールできるというメリットはあります。
オンライン申請自体について直接に感じる法律事務所側のメリットは、そのくらいかもしれません。その仕組みを構築する労力は正直申し上げて相当大きいです。最初は紙媒体のほうが楽です。
どの程度のメリットを感じられるかは、法律事務所業務全般の業務効率化をどのように図るか、その運営方針と絡んでくると思われます。私の事務所の場合は、紙媒体を極力削減する方針で運営しています。オンライン申請をするようになり、いまだ試行錯誤はありますが、本当に業務が楽になりそうな気がしています。オンライン申請のための準備に膨大な時間を使いましたが、今後は強いメリットを享受できるだろうと思います。
紙媒体の場合、紙媒体で作成→コピー→郵送(封筒を作成し切手を貼ってポストに投函する)→受領印付控え返送→スキャン→データ保管、控えをクライアントに返送…というようなやり取りをすることになります。郵送の際には送付書を作成したりします。この事務作業は意外と馬鹿になりません。
オンライン申請の場合、登記の特例方式の場合は少し郵送が発生はしますが、それ以外は、申請→受理→承認されたデータのデータ受信→サーバー保管(私の事務所の記録)→クライアントにメール転送、で済みます。この時間短縮効果は個々的にみると非常に大きいです。最初に試行錯誤してできるようになってしまえば、後は何度か繰り返せば、簡単に時間の元が取れます。
何より、インターネットさえ繋がり、PDFデータの添付資料を用意できれば、いつでもどこでも申請ができる、その記録保管もパソコン(というよりもサーバー)上で、(サーバーの事故がない限り)確実に保管される、ということには、非常に安心感があります。フォルダをきちんと区分しておけば、物理的な動かし方を工夫することなくても、保管場所も明確に分かります。これに対し、紙媒体による場合は、一回取り出して誤って別の場所に入れたりした瞬間に、ほぼ散逸に近い状態になります。外出の際に持参して参照したいな、というようなときに、散逸の原因になります。データ保管に慣れてしまうと、紙媒体保管のほうが危険を感じてしまいます。
書庫が減れば、法律事務所に必要なオフィスの収納場所も減り、床面積も減ります。よって、必要な賃料も減ります。スキャンをする手間は必要であり、そこに人件費を要しますが、その人件費は家賃よりも優越だろうと思っております。もちろん、処理速度の遅いスキャン機器を使うと非効率となります。複合機はオペレーションの手間暇もあり、あまりお勧めできません。性能の良いスキャン専門の機器が必要となります。富士通のScansnapを利用しています。
法律事務所の業務全般を意識的にクラウド、オンライン、テレワーク等にシフトしている場合には、全ての業務の在り方をその方向に向けて改善するのがよく、仮に法人設立ワンストップサービスという領域に弁護士が進出していこうとするならば、それについてもオンラインでできるよう努力しよう、というのは、当然にあるべき流れになるのだろうと思います。
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