弁護士によるオンライン申請(その21)~法律事務所にとってのオンライン申請のハードル
2023.10.14更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で弁護士をしております、野澤吉太郎です。
最後に、法律事務所がワンストップサービスをオンライン申請でおこなおうとすることのハードルについて書きます。
何よりも、弁護士が電子署名をするための十分な仕組みが構築されていないこと、その手引き、ガイドとなるような説明が絶望的に乏しいことがハードルです。これは、弁護士業界側も社会の側も、法人設立ワンストップサービスに弁護士が関与するという考え方に乏しいからという理由によるものと思います。
業界やシステムが公認する業務上の電子証明書がないので、個人事務所の場合、マイナンバーカードを活用せざるを得ないことが多いです(弁護士法人には電子証明書などの別の方法があるのかもしれませんが)。
社会保険労務士登録していない弁護士がe-govを使えるのかどうか。登記業務の特例方式のような方式をe-govで利用することができるのかどうか。システムの仕組みも社会保険労務士法の建付けもよく考えたことがありません。私は社会保険労務士登録して電子証明書を購入したので、マイナンバーカードでどこまで行けるのか、きわどいところは、私にはよく分かりません。ただ、提出代行証明書においては、社会保険労務士登録番号を記載しなければなりません。システム上も社会保険労務士が対応することが当然とされる入力箇所がいたるところにあり、社会保険労務士登録していないと、個々の入力のところで撥ねられてしまい、オンラインを貫徹することは無理なのかもわかりません。
少なくとも届書作成プログラムでは、「初期情報を設定する」の「管理情報登録」の項目で、社会保険労務士登録番号8桁を入力しなければなりませんので、初期情報を設定できず、その先に進まないので、算定基礎届などは電子申請では出せません。
弁護士は包括的な資格などということで安心してしまうと、こういうところからじわじわと、地味に競争力を喪失し、排除されていくんだろうなという感じです。
だれかが意地悪しているということではなく、誰も意識をしていないから自然に排除される、ということかと思います。
現在、デジタル庁が立ち上げている法人設立ワンストップサービスという仕組みでは、一般の方がマイナンバーカードを利用してワンストップサービスの利用をトライする仕組みが出来上がっています。
サービストップ | 法人設立ワンストップサービス (myna.go.jp)
しかし、いかんせん法制度が難しいです。途中で詰まったりする(登記手続でいえば、補正が入るなど)事象が多々あるようです。結局は、紙媒体に戻るか、専門家(複数士業)に戻るか、ということで、従前と同様の世界に戻ってしまうのでは、と危惧しています。
弁護士が法人設立ワンストップサービスに関与できるようになり、それに付随して効率の良い業務プロセス(経理等を含む)をパッケージで提案できるようになれば、革新的な取り組みになるはずです。そういう話がほとんど世間に出ていないのでそれではいかんだろうと感じ、自分の備忘録も兼ねてブログを書いてみようと思い立ち、しばらく発信し続けてきた次第です。個々のブログはしょうもない話を書き連ねてありますが、全体を通して読んでいただくとそれなりにインパクトのあることが書いてあると思っております。
オンライン申請についてのブログは以上となりますので、今後は折をみて別の話題を書いてみたいと思っております。
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