法人設立ワンストップサービスについて(その3) ~法人設立ワンストップサービスに関わる専門家について
2023.09.10更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で弁護士をしております、
野澤吉太郎です。
法人設立ワンストップサービスに関与する専門家について
書いていきます。
法人設立に関与する専門家は、
日本の制度においては分断されています。
一般には以下のように言われています。
・定款認証…行政書士か司法書士
・設立登記申請…司法書士
・税務届出…税理士
・労働保険と社会保険…社会保険労務士
弁護士がこれらに関わることは、ほとんどないように感じます。
そのため、弁護士はこれらの周りの事象について、意外と知らないことが多いです。
実際に、私自身も登記事務に関与し始めるようになったのは、登録から15年後くらいのことです。法律事務所によって違うのだろうと思いますが、おおむね餅は餅屋、ということで、そもそも他士業の分野には一切関与しないことが多かったと思います。
法人設立に限らず、ワンストップサービスに関する考え方については、さまざまな考え方があり得ます。法律事務所のホームページなどを見ると、いくつかの考え方があり得ます。
「司法書士、税理士、行政書士、社会保険労務士の先生と
提携しています。」
「事務所外専門家と連携しています。」
「事務所内専門家と連携しています。」
「あえて一切やらないようにしています。」
すべてあり得る考え方であり、全く間違っていないと思います。
法律事務所なり士業事務所の体制、経営戦略や
考え方次第のところです。
ただし、実際に個々の事例に接してみると、
どの方法にも欠点があるように思います。
まずどうしても避けがたいことは、専門家が別々であることを原則とする場合、人間関係上の気遣いが必ず発生します。このことは、事務所外であれ、事務所内であれ、変わりません。あの先生にとっては手弁当に近い仕事ではないか、あの先生はクライアントとウマが合うか、報酬の分配はどうしようか…、など。これは意外と骨の折れることです。
クライアントにとってみれば、何度もいろいろな先生に説明するのは大変だ、というような感情も生まれるように思います。これも意外と馬鹿になりません。
弁護士は、弁護士の職名において登記申請業務に関与することができ、国税局長に通知すれば管轄内において税理士業務をおこなうことができ(税理士法51条通知)、社会保険労務士会に登録すれば社会保険労務士業務をおこなうことができます(社会保険労務士法3条2項)。つまり、本来は、弁護士は法人設立ワンストップサービスのすべてに関わることができます。この長所を生かさないのはもったいないです。一般に広がっているイメージとはだいぶ異なる話を書いていると思います。
次回は、弁護士(というよりも私)がワンストップサービスに関わることの意味について書いていきます。
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