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企業法務(7)法務の役割~臨床法務

2016.02.09更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

久しぶりに企業法務についてブログを書きたいと思います。

これから何回か、法務の役割(臨床法務、予防法務、戦略法務)について

思うところを書こうと思います。

最初に臨床法務について書きます。

 

1 臨床法務


 

 

臨床法務とは、問題が顕在化した場合に

その問題の解決に向けて行われる活動です。

典型的なものは裁判ですが、

交渉、クレーム対応などもこれに含まれます。

弁護士などの外部専門家に依頼することが多くなる分野です。

 

要するに個別案件を処理するということです.

しかし、時代の変化のスピードが著しい状況のもとでは、

取引に関する紛争の争点を裁判に持ち込むこと自体が

得策でないことが多く、

紛争は担当者の方による交渉によって解決される場合が多く、

弁護士が相談を受けた場合にも

交渉による解決が目指されることが通常であり、

裁判に至ることは稀です。

臨床法務が必要となる場合は、

社会関係の希薄な当事者間での

紛争処理(損害賠償事故処理、クレーム処理)の場合が

比較的多いものです。

このことは、契約書(9)のブログで述べたことと重なります。

 

2 専門家と臨床法務の関わり方


 

 

臨床法務のノウハウを構築することは

弁護士等の専門家にとって最低限保持しておくべきノウハウです。

臨床法務においては、

当該個別案件の微細な事実関係を凝視して活動することになります。

従業員よりも細かく事実関係を把握するくらいの気迫がなければ

務まらない仕事です。

関連する事項を徹底的に調べることもあります。

このことは、法律に関わる文献(裁判例・学説)に限らず、

当該業界に関する文献などを探索することもあります。

 

その過程で、

当該ビジネスの持つシンボリックな反省材料などを

見つけ出せることが多々あります。

このことは法律的な白黒とは次元の違う話だと感じます。

法律的にはこちらに理があるとしても、

ビジネスの遂行上の問題点を内包しているケースは

結構多いものです。

 

3  臨床法務≒受動的業務


 

 

しかし、多くの場合、

個別案件の処理を任された弁護士の仕事はそこでお終いになります。

反省材料などを感じ取っても、

それを伝え、改善を提案する機会が与えられなければ、

ノウハウが眠ることになります。

弁護士の側が反省材料等をどの程度会社に伝えたいと思うかは、

依頼者次第であり、

反省材料などを聞いてもらうことを無理強いする筋合いでもありませんが、

ほとんどの場合において

個別案件が終われば当然に職務は終了、

という流れになるならば、物足りない話です。

 

取引紛争における臨床法務は、

契約関係、当事者の紛争も予め所与のものであり、

与えられたフィールドの枠の中で最善を尽くす側面がありますし、

微細にわたり事実関係を精査の上、紛争に対処することは、

会社、弁護士の双方とも、非常にエネルギーを遣います。

終わってしまえば忘れたくもなります。

このことは、ある程度は甘受せざるを得ないことです。

しかし、少なくとも、

弁護士がそのフィールドのみに甘んじているようでは、

業界が有するポテンシャルを

十分に果たしきれないのではないかと思います。

 

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