企業法務(8)法務の役割~予防法務
2016.02.10更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で
主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。
法務の役割のうち、次に、
予防法務について思うところを書いていきます。
1 予防法務
予防法務とは、
将来の紛争の発生を事前に予防するために行われる法務の活動です。
弁護士との関係では、多くの場合、事前に契約書をみてもらい、
確認を受ける、という活動が主になります。
そのために顧問弁護士を選任し、
顧問契約を締結したりすることもあります。
契約書等について
外部専門家の確認を受ける必要性を感じておられる会社は沢山あります。
予防法務の分野くらいまでは、
弁護士等もある程度進出している分野ということができます。
2 差別化の難しい業務
しかし、予防法務は、他との差別化の難しい分野です。
最近は会社自体の経験が蓄積され、
他にも文献のみならず、インターネット等の情報媒体も発達しており、
ある程度のレベルのものであれば、
努力すれば、情報を入手することができるようになっています。
必ずしも弁護士に事前に意見を聴くまでのことはない事例もあります。
臨床法務の場合と比べ、
弁護士に意見を聴く必要性のイメージが確立されきていないため、
事前に意見を聴くことの必要性に対する感度がどうしても薄くなります。
そして、契約書(8)のブログでも書いたことと裏腹の話ですが、
弁護士としての専門性を極めていけばいくほど、
どうしても裁判規範中心のものの見方になってしまい、
企業の取引実務の要望と乖離してしまう、という状況が、
弁護士に意見を聴くことの必要性に対する感度を鈍くしてしまうことも、
否定できないように思います。
裁判になったときの懸念と、会社が本当に脅威に感じている懸念とは、
必ずしも一致しない場合があります。
そのような場合には、
アドバイス自体がピンぼけになってしまうことがあります。
私自身も自戒しなければならないことです。
ピンぼけに聞こえるだろうなと承知しながら
アドバイスしなければならないこともあります。
予防法務は、
別の弁護士、別の専門家、別の方法(自分で努力するなど)と比較して、
この弁護士に相談して良かった、
と思わせることが、非常に難しい業務です。
3 予防法務もいまだに受動的業務である。
予防法務は、未だに紛争が発生しておらず、
どういう紛争が発生するかについて想像を巡らすことが必要であり、
臨床法務に比べて創造的な側面もありますが、
会社が取引形態の外枠を創っている以上、
その活動には、いまだに受動的業務の側面が残ります。
契約書の確認も、他社のひな形に問題がないかを確認する、
という場合も多くありますし、
さらに、沢山ある契約書を選別のうえ、
どの疑問点を抽出して弁護士に質問するか、
どの弁護士を活用するか、
という問題自体が会社の一存で決まることもあります。
ある程度法務部が手慣れていればそれで問題は起こりませんが、
そうでない場合は、会社の上層部もあまり知らない間に、
非常に高度な活動、
リスクの大きい取引などが行われてしまうことがあります。
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