顧問弁護士(9)顧問弁護士と社外取締役・社外監査役との、弁護士からみた違い
2016.02.07更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で
主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。
久しぶりに顧問弁護士について書こうと思います。
顧問弁護士の就任の要請を受ける場合と、
取締役・監査役の就任の要請を受ける場合の、
弁護士の側のものの見方の違いについて率直に書きたいと思います。
1 就任するかどうかの考え方の違い
違い、といえば、全然違うのは当たり前だろう、
とお叱りを受けそうですが、
仕事の依頼を受けた場合の判断要素の違いについて書きたいと思います。
一般的には、仕事の要請をいただくということは、
非常にありがたい話です。
しかし、取締役・監査役への就任は、顧問弁護士にくらべ、
少しハードルが高いように思います。
顧問弁護士は、依頼者である会社に責任を負いますが、
普通に職務遂行している限り、
それ以外の関係者に対して責任を負うことはほとんどありません。
しかし、取締役・監査役は、依頼者である会社のみならず、
依頼者ではない株主に対する責任を負うことがあります。
また、取締役・監査役に就任したとの情報は、登記されますので、
基本的に公開情報になり、職歴に残ります。
株主の動向、他の取締役の動向、内部統制等に、
何らかの問題点がある場合などには、
慎重に考えざるを得ない要素が残ります。
弁護士会も含め、各種団体が社外取締役、社外監査役を増やそうと
業界を挙げて取り組んでいるようです。
業界人としては助かる話です、しかし、就任する以上、
代表訴訟を提起される覚悟で臨まなければなりません。
野放図に職域を拡大しようとするだけであれば、
問題があるように思います。
リスクを覚悟しながらどこまで正論を言い続けられるか、
結果としてその人が究極的に会社に役に立つものなのかどうかは、
個々人に強く依存する問題のように思います。
2 取締役・監査役と顧問弁護士の間隙にある潜在的業務
しかし、取締役・監査役に自分ではなりづらい場合でも、
どうにかしてこの会社の助けになりたい、
という心情を抱くことは沢山あるはずです。
人助けをすることが弁護士の原点だからです。
このような場合には、
役員よりも身軽な立場の、顧問弁護士が役に立つと思います。
身軽な立場だからこそ貢献できる領域があります。
多くの会社には、すでに顧問弁護士がおり、
紛争処理、契約書のチェックなどを頼んでいますので、
余計には要らない、という考え方が一般的だと思います。
うちには顧問弁護士がいるし、ということです。
しかし、業務執行に関わる既存の専門業務、
すなわち紛争処理を遂行するだけが仕事ではありません。
主としてコンプライアンス・内部統制の観点から
会社業務全体を見渡す役割に特化しても良いと思いますし、
取締役・監査役間、取締役相互間、監査役相互間で
意見衝突が生じた場合に備えて調査を遂行し、オピニオンを出す、
といった存在意義を見いだすことも可能なはずです。
いまのところ、そのような活動に特化した弁護士は少なく、
費用も高額になりがちで、それゆえに、
問題が起きたときのスポット的な依頼が多いと思いますが、
裾野が増えればそのような現象はだんだん解消してくるように思います。
少なくとも私自身はホームページに記載したような
顧問弁護士報酬で請け負うことができると思っています。
現在の社会情勢では、上記のような内容は
社会の共通了解になっていないように思います。
しかし、役員の領域と顧問弁護士の領域の狭間には、
眠れる市場があることは間違いなく、むしろ、こちらのほうが
役員のルートを開拓するよりも裾野は広いのではないかと思われます。
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