企業法務/新規事業・ベンチャー立ち上げ支援(1)~ベンチャー弁護士が備えるべき条件
2016.04.07更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で
主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。
今回から、新規事業・ベンチャー支援に関して書きます。
最初に、ベンチャー支援に携わる弁護士が備えるべき条件について、
私自身の考え方を書いてみたいと思います。
1 ビジネスを深く理解する姿勢で取り組むこと
新規事業、ベンチャーは、全く何もないところから、
組織を創造する点に特色がありますが、
弁護士に特別な専門能力が要求される領域ではありません。
新規に行おうとしているビジネスそのものに着目し、
当該会社の既存ビジネスの情報、競争業者の事業の情報、
類似業種などで見聞した情報などを拾い集める過程を経て、
新規ビジネスから派生する法務問題を、
分野を問わず拾い上げていくことになります。
どの情報源にアクセスし、どのような潜在的な問題を想像し、
何を想像するか、というプロセスを回していくところに、
一定の訓練と経験が必要ですが、
偏見をもたずにビジネスに着目していく姿勢を持つことが、
最も重要なことです。
ちなみに、扱う法律問題はほぼ全ての領域にまたがる可能性があります。
何々法が専門、という、これまで弁護士のあり方とは、
相当に異なるように思います。
偏見を持たずに観察することが最も重要です。
2 経営者、担当者の話を丹念に聞くことができること
ビジネスそのものに着目し、一定の心証を抱いた上で、
経営者なり担当者から、大づかみな交渉状況を聞くなどして、
物事を固めていく順番を付けていくことになります。
具体的には、何の契約を締結するのか、
合弁契約なのか、ライセンスなのか、などです。
定款作成、定款認証、設立登記などの手続き、
許認可の取得などについても、イメージを持つようにします。
中小企業では、経営者の方々は、
先見性、パフォーマンスに圧倒的に優れた人が多いのですが、
細かく条文を規定する作業をすべき役割ではないので、
条文の作成などは部下に任せることになります。
しかも、経営者の圧倒的なパフォーマンスを、部下が、
文章に1つずつ落とし込むことができていないことが多いです。
要は、ついてこられない、ということです。
能力の問題というよりも、訓練、経験の積ませ方の問題だと思います。
設定した期限だけが先行し、精査がなされないまま、
簡単な内容の契約をもって事業を開始してしまうことが多いです。
経営者のパフォーマンスを文章に落とし込んでいくことが、
弁護士の仕事の1つとなります。
経営者の方々には時間がありませんので、骨子だけを聴き取り、
自分のイメージと経営者のイメージを照らし合わせて想像をめぐらし、
近い将来開始されるべき事業のオペレーションにも考えをめぐらせて、
1つ1つの条文を作成していくことになります。
必要に応じて関連部署の担当者とも打ち合わせをし、
丹念に話を聞いていきます。
とにかく、丹念に要望を聞いていくことが必要です。
弁護士の意見を過度に押しつけようとすることは禁物です。
3 レスポンスが早いこと
起業をめぐる情勢は、生もののように、日々動きます。
レスポンスが早いことは死活的に重要です。
論理的正確性を追求することよりも、
イメージを具現化することのほうが大事で、
すぐに方向性を示してあげないといけません。
弁護士が携帯電話の番号を教えておくことは必須だと思います。
これができない弁護士が意外と多いように思いますが、
ベンチャー支援をする際にはそれではダメだと思います。
軽く質問されたことについて、
取り急ぎの心証を言えないような状況では、
新しいものを創造することはできません。
少し話が脱線しますが、私は、具体的に依頼を受けた場合には、
携帯電話の番号を教えるようにしています。
事務所にもどってから電話する、では遅いし、かえって面倒です。
変な電話がかかってくるから教えないほうが良いよ、
と忠告されることもありますが、当人が思う以上に、
それほど変な電話はかかってこないものです。
4 求められた意見については専門内外を問わず具申すること
新しいものを創造しようとするときには、
何の分野であろうが、人手が足りないことが多いです。
求められた意見については、積極的に回答することが必要です。
後で責任追及されるのではないか、という、
後ろ向きな考えでは仕事が務まりません。
私は、以上の考え方にしたがって職務を遂行しています。
ついこの間もベンチャーの職務を経験しました。
未経験の業種でしたが、想像を積み重ねながら成果を提示しました。
あらゆる分野の考察をしなければならない領域であるため、
全貌を書き連ねることは難しいですが、次回以降に、
個々の職務内容をいくつか拾い上げて書いてみたいと思います。
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