企業法務(2)会社法務と企業法務の違い(私見)
2015.12.15更新
東京都千代田区の半蔵門・麹町エリアの法律事務所で
弁護士をしております、野澤吉太郎です。
会社法務と企業法務の違いについて私見を述べたいと思います。
1 会社法務と企業法務はイコールではない
日本では会社法に関する法務に詳しい人を
ビジネス弁護士だと把握する傾向にあります。
ある外国の実業家に聞いたところ、
「それはおかしいのではないか?」と言われたことがあります。
私も、心底そう思っています。
会社法は会社の根本規範であることは間違いありませんので、
会社法務は企業法務の一部をなすことは間違いありません。
しかし、会社法は、事業内容との関係では中立的な法律です。
会社法務はどの会社にも共通であるルールを扱う業務であり、
企業法務は、各種の事業に関連するルールを扱う業務である
と思っています。
すごく乱暴な言い方ですが、
刑法総論と刑法各論のようなイメージかと思います。
例えば、株主は、自ら事業を行うものではありませんので、
会社訴訟などにおいて、株主が、
事業内容そのものに触れて議論を行うことはあまりありません。
会社法を扱っている方がイコール会社の実務に精通している
と判断するのは少し早急では?と思います。
会社法の理解が、事業内容そのものの理解というところに、
直結していないように思います。
2 会社法がビジネスを阻害する場合があること
もちろん、会社法に詳しい人が、
公正に事業を観察するマインドを持てば、
ビジネスに対する理解が深まるということはあると思います。
しかし、ビジネスに対する理解のないまま、
会社法の議論だけを振り回すと、
(例えば株主権だけを声高に主張する、など)
往々にして、泥沼の世界になります。
皆でビジネスを遂行しようという世界とは、
およそ無縁の世界になることがあります。
しかも、最近は会社法の議論に
ビジネスが振り回され過ぎているように感じます。
3 違いにこだわる理由
上に述べたような懸念を突き詰めて考えると、
企業法務、という言葉の定義が不明確だから、
という点に由来します。
若干、思考停止を招く傾向のある言葉です。
一見して過剰なこだわりにも見えますが、
この誤解が、企業の活動を阻害し、
弁護士の職域を狭めている原因となっているように
見えることがあり、
私自身も、時として、
業務上の支障を感じなくもない問題ですので、
つらつらと考えているところです。
引き続き書いていきたいと思います。
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