労働問題(4)使用者側弁護士が労働事件でおこなう準備の例~残業代の事例
2015.12.24更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で
主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。
前回のブログで、
稼働の実態を再現することが重要であることを書きました。
残業代の事例を具体例として書いてみたいと思います。
1 事案
会社がみなし管理職として取り扱っているため(訴訟上は認めづらい)、
タイムカードを打刻しておらず、残業時間が分からない。
労働者側は週7日、1日16時間労働であったと主張。
手帳のメモ以外に書証はない。
使用者側は、週6日、1日10時間~11時間労働程度であったと認識。
ただし、書証はない。
2 テーマ
判断者(裁判所など)は、残業していることは間違いない、
という心証を得ており、残業代がゼロとは思えないものの、
どの程度残業時間が発生しているかについては心証が取れないので、
使用者側に対し、労働者側の主張に反論するよう求める。
3 対処
何も立証活動をしない場合、メモ以外に書証がなければ、
労働者側の主張が認められる可能性があるので、
部下の供述内容を陳述書にまとめ、
使用者側の認識する残業代を算定します。
証人尋問に耐えられるレベルに至るまで徹底的に事実を聞き出します。
その中から十数個くらい、設定できる条件を見いだします。
たとえば、何曜日には早く出社し(だいたい10分くらい)、
何曜日には早く退社し、
何曜日には★時ごろまで残業していた、
会社の上司が来るときには、何割かの確率で早く帰宅していた、
休憩時間は、昼間に1時間とっていた、
その他、控えめにみても1時間くらいはゲームをして遊んでいた、
何曜日には控えめにみて
2時間程度はパチンコに行っていることがあった、
月末には商品棚卸しの業務があるから残業をしていた、
というような感じです。
十数個の条件を、残業代の時効完成前の2年間の年月日に全てあてはめ、
残業代を算出します。
4 結論
労働者側と使用者側とでそれぞれ認識する残業代は、
ケタが1つ違っていましたが、
最終的には、使用者側の認識する金額に近い金額で和解しました。
5 必要なこと
ある程度の金額を支払うのはやむを得ない事案ですが、
その見解に会社がご同調いただけない限り、
このような解決を図ることはできません。
同じ方向を向けるのであれば、
徹底的な事実解明を行うことになります。
非常に泥臭い作業であることがおわかりいただけると思います。
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