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契約書(8)契約法と裁判例

2016.02.05更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

久しぶりにテーマを変え、契約法と裁判例の関係について書きます。

 

1 司法教育における契約法と実務の契約法の乖離


 

 

弁護士は、大学・大学院、司法研修所での要件事実の教育の中で、

民法を勉強することになりますが、

そこで教育の対象となる事柄は、裁判規範としての民法です。

出発点は民法の条文であり、

その解釈論、裁判例、要件事実論の教育に力が置かれています。

 

紛争当事者間が密接な社会関係をもたない領域においては、

その教育は非常に重要です。

例えば自動車事故等においては不法行為法の領域になります。

訴訟によらなければ解決できない場合が多く、

その結果、膨大な裁判例が蓄積されていきます。

 

しかし、契約法においては、

紛争当事者間が密接な社会関係に立つ場合が多く、

取引の交渉の中で紛争が解決することが多いため、

紛争が訴訟の場に持ち込まれること自体が少なく、

仮に紛争に持ち込まれたとしても、

訴訟の争点となる論点は契約全体のごく一部の条項に過ぎず、

裁判例があったとしても、

取引の周辺的な分野に関わることが多くなります。

多くの場合、契約条項の効力が民法の条文よりも優先するため、

法律上のどの条文の解釈が問題になるのか

分からない裁判例も多くあります。

 

そのため、司法教育における契約法と、

実際の取引で問題になる契約実務とは大きく乖離している、

といわざるをえなくなります。

既存の司法教育をどれほど沢山受けても、

契約実務の実像を掴みきることはできないように思います。

 

2 取引実務と弁護士実務


 

 

法学部生、ロースクール生、司法修習生から法曹実務家になり、

法曹実務家としての専門性を極めていけばいくほど、

どうしても裁判規範中心のものの見方になってしまい、

企業の取引実務の要望と乖離してしまう、

という状況があることは、否定できないように思います。

民事裁判官は、裁判事案を処理するわけですから、

それまで受けた教育で問題に対処することができますし、

むしろそうすべきですが、

弁護士はそれでは困ります。

ビジネスを真摯に見つめて事務処理をすれば、

自ずと取引実務の要望に近づいていくはずですが、

そうでない方も結構います。

 

一例ですが、秘密保持契約は、その内容よりも、

重要な情報をお互いに開示して密接な社会関係を築く足がかり、

という意味合いが強いため、

内容云々を時間を掛けて検討するよりも、

とにかく可及的速やかに確認を終えなければ

依頼者に迷惑を掛ける性質のものです。

従業員に対して求める誓約書などもその部類に入るかも知れません。

ビジネスにおいては本当に重要な契約書です。

しかしながら、秘密保持契約のチェックを

弁護士にたなざらしにされた例などを聞いたこともあります。

企業側と弁護士側の認識のズレにより、

ニーズを満たせなくなる、ということは、多々あるように思います。

 

3 文献


 

 

契約法に関する文献は世の中に沢山出回っていますが、

基本書は民法を出発点とした条文解釈と判例分析に偏りすぎており、

典型契約以外の契約類型に関する実務家の文献も

裁判例に引きずられたものが多いです。

裁判例を中心に書かれた文献をどれほど頑張って読んでも、

契約実務の全体像を理解することは難しいのではないかと思います。

 

その中で、平井宣雄教授の「債権各論Ⅰ上 契約総論」(弘文堂)は、

非常に優れた文献だと思います。

契約法学を「特定の取引主体間における権利義務関係を事前に設計することを主たる任務とするもの」

と定義されている点は、恐ろしく的を射た分析だと思います。

ビジネスにおいては、裁判を念頭に置いていることはほとんどなく、

契約書に書かれた内容によって交渉が規律されていきます。

 

これらを事前に予想することは、

ビジネスそのものを深く理解していないと不可能なことです。

ベストの契約弁護士になることは最も困難な途だろうと思いますが、

覚悟をもって進みたいと思います。

 

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