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不動産事件(8)管理の困難な不動産について

2016.04.02更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、管理費用の捻出が困難な不動産の案件に関与した際の、

若干の経験を書いてみたいと思います。

 

1 管理困難な不動産


 

 

マンションを活用した不動産賃貸業等を営む会社が、

支払不能になるケースなどが典型例です。

賃借人の退去が続き、売上(賃料収入)が減少すると、

費用の捻出に苦心します。

場合によっては、水道光熱費、火災保険料などを

拠出できない場合も出てきます。

不測の事態が生じた場合には、

賃借人に損害を与えるおそれがあります。

費用を工面できない場合には、

対処療法を施しながら粘っていくしかありません。

 

2 将来、管理困難な不動産の問題が深刻になっていくおそれ


 

 

詳細の言及は控えますが、

私もこのような不動産の管理に関与せざるを得なかったことがあり、

何度もヒヤッとさせられたことがあります。

営業中のテナントがいる不動産に関して、

明日電力供給を止めます、

いま水漏れが起きているけれどもどうしたらよいか、

などという緊急の電話が来たりします。

法律が絡む問題であれば、

倒産法制にしたがって処理しなければなりませんが、

背に腹を代えられない状況は沢山出てきます。

 

複数のテナント、賃借人がいる不動産において、

管理責任者が当事者としての責任を負えなくなることほど

恐ろしいことはありません。

ゴミ屋敷などの例がニュースで報道されたりすることもありますが、

不動産管理は不動産所有者や管理組合など、

当事者が行うのが大原則であって、

よほどのことがない限り行政が介入することはありません。

地方においては人口が減少し、

都市部においてはマンションの供給過剰の傾向にあり、

地方、都市を問わず、高齢者が増えていくという趨勢であるため、

この種の問題が今後深刻化していくことは

ほぼ間違いないと思われます。

肌実感ですが、現状の倒産法制は、

管理の荒廃について十分な配慮を施していないように思います。

 

3 高圧電力供給の問題


 

 

高圧電力供給の料金の未払いへの対処に

何度も悩まされたことがあります。

いったん電力供給を打ち切られると、

料金を支払えばすぐに供給が復旧する、

ということではなく、再開設まで2週間くらいかかる

(正確かどうかは不明です)ようです。

営業店舗などがテナントにいる場合には、

その期間の電力供給停止により、

回復不能な損害を被ることがあります。

 

そのため、多くの場合、結局は、

電力料金を支払わざるを得ないことになりますが、

そうは言っても1回分だけなら滞納できるかどうか、

など細かい注意点が沢山あります。

倒産法制の教科書的対応をしているだけでは

対処しきれないことが多いです。

私がたまたまそのような経験をさせられただけかも知れませんが、

高圧電力供給体制についてはほかの水光熱費の未払いにも

まして細心の注意を払う必要があります。

 

4 管理組合


 

 

管理組合が好き勝手な振る舞いをして

区分所有者が異常な苦労を強いられることがあります。

特定の団体(出入り業者など)が、

過半数の区分所有権を掌握したりすると、

気ままに管理組合を運営することがあります。

少数派が異議を申し述べたりしても一顧だにせず、

少数派がマンションを売却しようと思っても、

管理組合が重要事項説明書を不動産業者に提出してくれない、

したがって売却することもままならない、

などという事例があったりします。

 

区分所有法に限らず、会社法などを含め、

日本の法制度全般において、

多数決の横暴に対する歯止めの意識が弱いように思います。

 

特に単身者向けのマンションなどは横の繋がりが弱いので、

このような問題が横行しやすい下地があります。

いずれにせよ、不動産を選ぶ際には慎重に観察する必要があります。

 

 

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