不動産事件(9)賃料増減額に関する紛争
2016.04.03更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で
主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。
今回は、賃料増減額をめぐる紛争の処理について書きます。
1 借地借家法に基づく増減額請求権
まずは条文上の根拠を挙げます。
土地については借地借家法11条、建物については借地借家法32条です。
借地借家法11条1項
地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、
土地に対する租税その他の公課の増減により、
土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、
又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、
契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
借地借家法32条1項
建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、
土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、
又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、
契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
商業不動産開発などが盛んであった時代などにおいては、
年々ますます景気が良くなるだろう、という見通しのもと、
賃料自動増額条項などが契約書に設けられ、所有者を勧誘していた事例がありました。
私が弁護士になった時期ごろにこの件に関する紛争が多発しており、
裁判例も蓄積されていました。
増額、減額のトレンドは、景気に左右されます。
賃料自動増額条項などに関連する紛争は少なくなっていると思いますが、
最近、都市部においては増額のトレンドになりかけているような気がします。
権利行使までの調査の内容、権利行使のタイミングについてアドバイスをすることが、
請求を行う側の弁護士の重要な仕事です。
2 調停
賃貸人、賃借人間の交渉がまとまらない場合には、
請求をする側の当事者は調停を申し立てなければなりません。
多くの場合、裁判所による鑑定を経ていない状況で調停を行います。
片方の当事者が依頼した不動産鑑定士による鑑定書がある場合でも、
その内容を相手方当事者が受け入れないことが多く、
私の実感としては調停が成立して紛争が終結するケースは割と少ない気がします。
3 訴訟
調停が不調に終わった場合は請求をする側の当事者が訴訟を提起することになります。
お互いの主張立証を一応尽くした後に、不動産鑑定を実施します。
鑑定書が出された後に、話し合いの機会が持たれることが多く、
話し合いが決裂した場合には証人尋問、判決という流れに移行します。
4 弁護士の活動
訴訟にまで至った場合、不動産鑑定士による鑑定の内容が結論においても採用される可能性が高く、
正直なところ、弁護士が知恵を働かせて大きく流れを変える、ということはあまり多くありません(特に被告の場合)。
しかし、法廷の場で賃料の増減額を争うにまで至る背景には、
賃貸人・賃借人の間で別のトラブル(賃料不払い、用法違反など)も隠れていることが多く、
訴訟上の和解の場でこれを解決できる可能性もあります。
また、どの時点から賃料を増額するか(意思表示時か、和解時か)、
鑑定費用を誰が負担するか、などにおいて、
駆け引きを行いやすい環境があります。
話し合いを成立させるための戦略、駆け引きについては、
弁護士の出る幕は大いにあります。
5 弁護士費用
弁護士費用については、月額の増減額の請求幅または実現幅×7年分を経済的利益とみなし、
それを交渉、調停、訴訟の着手金・報酬金の算定式にあてはめることでお願いしています。
鑑定費用は別途必要です。鑑定費用をどの当事者が負担するかは、話し合いの場合はその内容次第であり、
判決の場合は、概ね、鑑定費用の金額に敗訴割合を乗じた金額となります。
(このことから、判決が不利な内容の場合には、話し合いをしたほうがよい場合が多いといえます。)
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