野澤吉太郎法律事務所 弁護士 野澤吉太郎

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不動産事件(10)環境規制について

2016.04.04更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は不動産の開発に伴う環境規制について書きます。

 

1 不動産と環境規制


 

 

不動産に関するデューディリジェンスをおこなうにあたり、

環境法規制に関する考察は避けては通れないものになっています。

環境被害の多くは、土地建物を問わず、不動産から生じるものです。

 

不動産の開発申請については、会社、不動産業者と行政側の折衝によって行われることが多く、

それで大体事足りており、弁護士が参与することはあまり多くなかったように思います。

弁護士も細かな法規制についてはあまり知らないことが多く、

私自身もあまり明るくない分野がたくさんあります。

 

しかし、ビジネスの構築に寄与することがこれからの弁護士に求められているものと思いますし、

その中には不動産の開発等が密接に絡むものも沢山あります。

環境規制は、無尽蔵ではないかと思えるくらい、多種多様にわたります。

1つ1つ条文から勉強していくことは途方もないくらいです。

私自身は、ビジネスの構築の経験を積む過程で、少しずつ詳しくなることを目指しています。

 

2 法律や文献の調べ方など


 

 

公害規制的な内容のものとしては、廃棄物処理法などがあります。

自然保護的な内容のものとしては、自然公園法、森林法、河川法などがあります。

挙げればキリがないくらいです。

インターネットなどで環境規制を総ざらいし、

必要性の高そうなものについて深掘りして調べていくことが必要です。

 

何年か前に森林法について詳しく調べようとしたことがあります。

しかし、そのころ、これらの法規制について、

考察を加えた文献がほとんどありませんでした。

官庁の図書館などに出入りしながら根気よく調べました。

せっかく文献を見つけても、行政の解釈については言及されてはいるものの、

法制度の問題点などを明示に指摘するようなものは特にありませんでした(当然ですが)。

文脈のウラを読んでいく作業に非常に苦心したことが思い出となっています。

温泉法、河川法などについても同様の状況であったと思います。

 

3,4年くらい前からだったと思いますが、徐々に、文献が出始めています。

弁護士増員の成果といえばうがった見方かもしれませんが、

徐々に業務が開拓されている実感があります。非常に面白い状況だと思っています。

 

3 新規事業と環境規制


 

 

原発事故の後、環境への配慮から、

再生可能エネルギーが奨励された時期がありましたが、

再生可能エネルギーが必ず環境に優しいか?と考えてみると、そうでもないように思います。

 

特に、メンテナンス不十分な太陽光発電などは、漏電、発火のおそれがあり、非常に危険です。

パネルを見ると何となく楽しくなります。

触りたくなる人もいるかも知れませんが、感電死してしまいかねません。

 

環境規制を厳しくして生まれた事業にも別の環境規制が必要となります。

終わりのないリスク管理の連続です。

 

環境規制について絶えず厳しくチェックする仕事は、相当の潜在的需要があるように思います。

 

4 海外の不動産においても概ね共通の問題があること


 

 

しかも、環境規制は日本国内に限ったものではなく、世界的にほぼ同種の規制がある、

という点が非常に興味深いところです。

日本国内の環境規制に詳しくなれるのであれば、

海外事業でも応用を利かせられるのではないかと思っています。

 

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不動産事件(9)賃料増減額に関する紛争

2016.04.03更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、賃料増減額をめぐる紛争の処理について書きます。

 

1 借地借家法に基づく増減額請求権


 

 

まずは条文上の根拠を挙げます。

土地については借地借家法11条、建物については借地借家法32条です。

 

借地借家法11条1項

地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、

土地に対する租税その他の公課の増減により、

土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、

又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、

契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。

ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

借地借家法32条1項

建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、

土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、

又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、

契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。

ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

 

商業不動産開発などが盛んであった時代などにおいては、

年々ますます景気が良くなるだろう、という見通しのもと、

賃料自動増額条項などが契約書に設けられ、所有者を勧誘していた事例がありました。

私が弁護士になった時期ごろにこの件に関する紛争が多発しており、

裁判例も蓄積されていました。

 

増額、減額のトレンドは、景気に左右されます。

賃料自動増額条項などに関連する紛争は少なくなっていると思いますが、

最近、都市部においては増額のトレンドになりかけているような気がします。

権利行使までの調査の内容、権利行使のタイミングについてアドバイスをすることが、

請求を行う側の弁護士の重要な仕事です。

 

2 調停


 

 

賃貸人、賃借人間の交渉がまとまらない場合には、

請求をする側の当事者は調停を申し立てなければなりません。

多くの場合、裁判所による鑑定を経ていない状況で調停を行います。

片方の当事者が依頼した不動産鑑定士による鑑定書がある場合でも、

その内容を相手方当事者が受け入れないことが多く、

私の実感としては調停が成立して紛争が終結するケースは割と少ない気がします。

 

3 訴訟


 

 

調停が不調に終わった場合は請求をする側の当事者が訴訟を提起することになります。

お互いの主張立証を一応尽くした後に、不動産鑑定を実施します。

鑑定書が出された後に、話し合いの機会が持たれることが多く、

話し合いが決裂した場合には証人尋問、判決という流れに移行します。

 

4 弁護士の活動


 

 

訴訟にまで至った場合、不動産鑑定士による鑑定の内容が結論においても採用される可能性が高く、

正直なところ、弁護士が知恵を働かせて大きく流れを変える、ということはあまり多くありません(特に被告の場合)。

しかし、法廷の場で賃料の増減額を争うにまで至る背景には、

賃貸人・賃借人の間で別のトラブル(賃料不払い、用法違反など)も隠れていることが多く、

訴訟上の和解の場でこれを解決できる可能性もあります。

また、どの時点から賃料を増額するか(意思表示時か、和解時か)、

鑑定費用を誰が負担するか、などにおいて、

駆け引きを行いやすい環境があります。

話し合いを成立させるための戦略、駆け引きについては、

弁護士の出る幕は大いにあります。

 

5 弁護士費用


 

 

弁護士費用については、月額の増減額の請求幅または実現幅×7年分を経済的利益とみなし、

それを交渉、調停、訴訟の着手金・報酬金の算定式にあてはめることでお願いしています。

鑑定費用は別途必要です。鑑定費用をどの当事者が負担するかは、話し合いの場合はその内容次第であり、

判決の場合は、概ね、鑑定費用の金額に敗訴割合を乗じた金額となります。

(このことから、判決が不利な内容の場合には、話し合いをしたほうがよい場合が多いといえます。)

 

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不動産事件(8)管理の困難な不動産について

2016.04.02更新

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主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、管理費用の捻出が困難な不動産の案件に関与した際の、

若干の経験を書いてみたいと思います。

 

1 管理困難な不動産


 

 

マンションを活用した不動産賃貸業等を営む会社が、

支払不能になるケースなどが典型例です。

賃借人の退去が続き、売上(賃料収入)が減少すると、

費用の捻出に苦心します。

場合によっては、水道光熱費、火災保険料などを

拠出できない場合も出てきます。

不測の事態が生じた場合には、

賃借人に損害を与えるおそれがあります。

費用を工面できない場合には、

対処療法を施しながら粘っていくしかありません。

 

2 将来、管理困難な不動産の問題が深刻になっていくおそれ


 

 

詳細の言及は控えますが、

私もこのような不動産の管理に関与せざるを得なかったことがあり、

何度もヒヤッとさせられたことがあります。

営業中のテナントがいる不動産に関して、

明日電力供給を止めます、

いま水漏れが起きているけれどもどうしたらよいか、

などという緊急の電話が来たりします。

法律が絡む問題であれば、

倒産法制にしたがって処理しなければなりませんが、

背に腹を代えられない状況は沢山出てきます。

 

複数のテナント、賃借人がいる不動産において、

管理責任者が当事者としての責任を負えなくなることほど

恐ろしいことはありません。

ゴミ屋敷などの例がニュースで報道されたりすることもありますが、

不動産管理は不動産所有者や管理組合など、

当事者が行うのが大原則であって、

よほどのことがない限り行政が介入することはありません。

地方においては人口が減少し、

都市部においてはマンションの供給過剰の傾向にあり、

地方、都市を問わず、高齢者が増えていくという趨勢であるため、

この種の問題が今後深刻化していくことは

ほぼ間違いないと思われます。

肌実感ですが、現状の倒産法制は、

管理の荒廃について十分な配慮を施していないように思います。

 

3 高圧電力供給の問題


 

 

高圧電力供給の料金の未払いへの対処に

何度も悩まされたことがあります。

いったん電力供給を打ち切られると、

料金を支払えばすぐに供給が復旧する、

ということではなく、再開設まで2週間くらいかかる

(正確かどうかは不明です)ようです。

営業店舗などがテナントにいる場合には、

その期間の電力供給停止により、

回復不能な損害を被ることがあります。

 

そのため、多くの場合、結局は、

電力料金を支払わざるを得ないことになりますが、

そうは言っても1回分だけなら滞納できるかどうか、

など細かい注意点が沢山あります。

倒産法制の教科書的対応をしているだけでは

対処しきれないことが多いです。

私がたまたまそのような経験をさせられただけかも知れませんが、

高圧電力供給体制についてはほかの水光熱費の未払いにも

まして細心の注意を払う必要があります。

 

4 管理組合


 

 

管理組合が好き勝手な振る舞いをして

区分所有者が異常な苦労を強いられることがあります。

特定の団体(出入り業者など)が、

過半数の区分所有権を掌握したりすると、

気ままに管理組合を運営することがあります。

少数派が異議を申し述べたりしても一顧だにせず、

少数派がマンションを売却しようと思っても、

管理組合が重要事項説明書を不動産業者に提出してくれない、

したがって売却することもままならない、

などという事例があったりします。

 

区分所有法に限らず、会社法などを含め、

日本の法制度全般において、

多数決の横暴に対する歯止めの意識が弱いように思います。

 

特に単身者向けのマンションなどは横の繋がりが弱いので、

このような問題が横行しやすい下地があります。

いずれにせよ、不動産を選ぶ際には慎重に観察する必要があります。

 

 

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不動産事件(7)不動産の任意売却

2016.04.01更新

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仕事上の都合がいろいろと立て込み、更新が遅れました。

久しぶりに不動産について書いていきます。

今回は、不動産の任意売却について書きます。

 

1 オーバーローンの場合の任意売却


 

 

不動産の決済は至るところで行われています。

多くの案件では金融機関のローンを担保するため、

抵当権が設定されており、その抹消が必要となります。

売主が買主から受領した代金を原資として、

ローンの元金、利息の満額を支払ってくれれば、

金融機関は、抵当権の抹消に応じてくれます。

決済によりローンを完済できるような事案であれば、

弁護士が介入するまでもないことが多いです。

 

金融機関に対するローンの金額が不動産価値よりも多額の場合などには、

金融機関が満足する売却価格を提示しない限り、

金融機関は抵当権を抹消することに難色を示します。

とはいえ、不動産価値は市場の需給により決まるものであり、

価格をつり上げようとしても自ずと限度があります。

無謀に高価な売却価格にて売却させようとして粘りすぎると、

不動産の処分が遅れ、ローンの回収も捗りません。

金融機関は、どの程度の売却価格で売却し、どの程度の金額を弁済すれば、

不動産の処分を許容するかについて、ある程度もくろみを立てています。

このような場合、金融機関に対するローンの支払い方法に関する交渉を含みますので、

弁護士が事務処理に参与する下地があります。

 

2 相続案件での任意売却


 

 

遺産分割案件をはじめとした相続案件において、

任意売却が必要となるケースもあります。

相続財産に不動産が含まれる場合には、現物で分けづらいので、

とりあえず法定相続分にしたがい相続人間の共有としておく、ということがあります。

そのような共有不動産をいよいよ売却する場合には、

共有者全員で売却に向けて活動することが困難な場合がありますし、

特定の共有者に対して委任をしたとしても、

その受任者が関係者に対して金銭を適正に配分するか否かが疑わしい場合などもあります。

このような場合には、専門家である弁護士に委任することが適切です。

 

3 任意売却業務の進め方 


 

 

不動産の任意売却案件は、特に破産管財人の業務で多く経験しております。

任意売却の経験が豊富な不動産業者と連携して処理することとなります。

急いで各種関係者と交渉を重ねていきます。

競売の開札期日の10日くらい前に買主候補者が見つかり、

その時点から複数の抵当権者、差押債権者(市)との交渉を始め、

買主候補者が何度も変わり、1週間程度で決済にこぎ着けたことがあります。

終わったときには40度の発熱をした思い出があります。

 

4 弁護士報酬等


 

 

事案により異なりますので、ご相談いただければと思います。

大まかな目安は、売却代金の3%程度だと考えております。

 

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不動産事件(6)敷金、保証金をめぐる紛争

2016.03.15更新

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今回は、敷金、保証金をめぐる紛争について、

若干ですが書いてみたいと思います。

 

1 敷金などのトラブル


 

 

敷金は、賃貸借契約において

賃借人の負担する債務の担保として賃貸人に交付される金銭であって、

通説によれば、

賃借物の明渡時までに生じた債務(未払賃料など)を担保する、

とされています。

実務上は、賃借人の原状回復義務を

賃貸人が代行する際に生じる原状回復費用を控除して、

敷金の残金を返還することが多いですが、

実際には、経年劣化などの賃借人の用法義務違反と関係のない費用までも

控除する例が多いようです。

頻繁にみられる事例ですが、

判例のルールがそれほど明確に確立されていない分野です。

 

十数年ほど前からの大きな流れですが、

概して、法律上の根拠が希薄な金銭の徴収、差し引きについては、

裁判所において厳しい判断が下されることが多くなっています。

過払い金などもその典型的な例だったと言えると思います。

消費者金融業者の多くが倒産処理を行いましたが、

そこまで追い込むこともやむなし、というのが、

大きな趨勢だったのだろうと思います。

 

不動産賃貸事業を大規模に展開している賃貸人の側においては、

敷金や更新料を資金繰りのアテにしすぎると、

判例の変更などにより、事業の存立基盤にリスクが生じます。 

裁判所に持ち込まれる事例も増えていますので、

具体的な事情をみながら、

トラブルの少ない処理に近づけていくことが必要だろうと思います。

 

2 保証金トラブル


 

 

商業ビルの建築協力金などの名目で、

賃貸人が賃借人予定者に対し、保証金を徴求することがあります。

この保証金の法的性質が明瞭でない場合が多く、

賃貸人が交替した場合に保証金返還債務が承継されるか、

返還請求の時期がどの時点で到来するか、

などの争点が顕在化することがあります。 

法律による規律が皆無に近い論点であるため、

賃貸人、賃借人のどちらの立場においても、

契約書上、明確なルールを設定しなければならないところです。

 

年利数%の運用益を前提として

保証金の返還を約束する事例などもありますが、

このご時世においては、運用自体が非常に難しいことですし、

大型物件の閉鎖が相次いでおり、不

動産価値そのものが下落する傾向にもあります。

大きな金額の未収が生じたりする場合がありますので、

預託する場合には非常に慎重な配慮が必要なところです。

 

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不動産事件(5)賃貸借契約の解約申入れと立退き交渉

2016.03.14更新

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今回は、不動産賃貸借契約の解約申入れと

立退き交渉について述べます。

 

1 不動産賃貸借契約の解約申入れと立退き交渉


 

 

再開発などにおいてよく問題になる事例です。

借地借家法が適用される不動産賃貸借契約においては、

貸主側から解約申入れをし、退去を求めることは容易ではありません。

(他にもありますが)主な考慮要素は、

貸主の自己使用の必要性と借主の使用の必要性です。

貸主側から立退料の提供の申し出をすることが

補完要素として考慮されます。

 

しかし、再開発する場合に貸主が自己使用の必要性の要件を満たすことは

非常に困難か、もしくは無理です。

これまでの判例、裁判例などで集積された

膨大な事例についての紹介は割愛しますが、

自己使用の必要性が希薄な場合には、

認定される立退料の金額が非常に高額になるか、

もしくは立退料をいくら積んでも請求を認めることができない、

という結論になる可能性が高いです。

貸主が訴訟を提起しても

請求が認められる可能性は低いということになります。

 

この種の件で、貸主から明渡請求訴訟を提起することもありますが、

多くの場合、借主に対し、

和解の席に出てきてもらうために起こすものであり、

白黒を付ける目的ではないことが多いです。

立退料の金額などの内諾を受けている場合には、

和解契約を締結したり、即決和解手続を活用することも多いです。

 

2 紛争処理の態様と心構え


 

 

大がかりな件では、解約申入れに基づく明渡し請求訴訟と

即決和解を多数同時に抱えるなどしなければならないこともあります。

即決和解の場合はもちろんのこと、訴訟を提起する場合でも、

判決の結論をまたず、話し合いにより終結することもあります。

即決和解の場合は、合意管轄を取得して、

早期に処理してくれる裁判所を探すこともあります。

 

この種の件では、多かれ少なかれ、左右表裏問わず、

強烈な人々が入れ替わり立ち替わり言い分を述べてくる可能性が

否定できないので、その行動の予測、適切な対処、

それらに根付いた正しい戦略の策定にも非常に神経を遣います。

 

貸主、借主のいずれの場合でも、たいていは、

ブレずに対応するとトラブルを避けられる、

分不相応に自分の立場を主張しすぎると解決も困難になる、

本当に誠実に対処することが求められている事情がある場合には、

どのような相手に対しても誠実な対処をすべきである、

というのが実感です。

人間の営みに対する洞察が問われる類型であると思われます。

 

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不動産事件(4)手付金、違約金をめぐる紛争

2016.03.13更新

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今回は手付金、違約金をめぐる紛争について書きます。

 

1 手付金の定めに関する紛争の実例


 

 

不動産売買契約日と代金支払日との間に間隔が空く場合に、

手付金が支払われることがあります。

手付金は、決済時において代金の一部に充当されます。

手付金の支払後、買主が不動産売買契約を解約したい場合には、

手付金は没収され、

売主が解約する場合には手付金の倍額を返還することとなります。

現実には、買主が手付解約する事例のほうが多いと思われます。

 

住宅ローンなどの融資が下りることを前提として

不動産売買契約が締結されることがあります。

このような場合、不動産売買契約において、

融資が下りないことが確定した場合には、

手付金を返金するだけで契約を解消する特約を入れたりします。

手付解約の応用パターンです。

しかし、「融資が下りなかったこと」を立証することは、

実は、意外と難しいです。

銀行などは、融資審査の内容を不動産業者などが

聞いても教えてくれないこともあるからです。

そうすると、売主である不動産業者から、

「融資が下りなかったというのはウソで、

本当はあなたが購入する気をなくしただけだろう?

本気で融資審査を受けていないだろう?」

というロジックで、手付金は返さず、

かえって違約金請求などをされることがあります。

住宅ローンの場合には、レピュテーションリスクがあるため、

そこまで露骨な紛争になることは少ないかも知れませんが、

事業用ローンなどの場合には、そのような事例があるように思います。

 

2 違約金の定めに関する紛争


 

 

不動産売買契約日と代金支払日との間に間隔が空く場合に、

違約金の定めが置かれることが多いです。

売主が物件を確保し、

ほかの買主候補者の購入申し出を断らなければならないためです。

違約金額は、通常、代金額の10%~20%程度です。

 

多くの場合、何らかの理由で残代金を支払うことができない買主が

違約金の請求を受けます。

割とトラブルになることの多い条項です。

私も数件、被告代理人として関与したことがあります。

個人等が巨額の請求を受けることも多く、非常に厳しい紛争です。

上記の1の手付金の紛争と絡めた形で紛争化することもあります。

 

双方が相手方に対する請求を立てる場合が多い類型です。

自分の債務を履行したが

相手が債務を履行しないから契約を履行できないのだ、

よって契約を解除し、違約金を請求する、というロジックは、

多くの場合、お互いが他方に対して言いたい言い分だからです。

 

3 買主の立場から紛争を避けるために


 

 

手付紛争については、手付金をなくすことが最も重要だと思われます。

業者は、手付金を自分の会社の資金繰りに回してしまうことも多く、

一度もらったお金は早々簡単には返金したくなくなります。

 

違約金については、なくせない場合もあると思いますが、

不当に高い分率であれば、

比較的低い割合に低減するなどの交渉を

活性化させるべきだと思われます。

契約締結の時点では率について意識しないことが多いですが、

非常に大事なことです。

個人的な感覚では、10%くらいには下げてもらうべきだと思います。

 

また、手付金・違約金のいずれの場合でも、

契約締結日と代金決済日を限りなく近づけておくことが一番安全です。

 

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弁護士 野澤吉太郎(のざわ きちたろう)

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不動産事件(3)賃貸借契約書、出店契約書など

2016.03.12更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、賃貸借売買契約書の条項で注意すべき点、

 

出店契約書などについて書きます。

 

1 不動産賃貸借契約書の条項で注意すべき点


 

 

最初に強調しておくべき点は不動産売買契約書と同じことです。

不動産業者がひな形を用意しており、

その内容もだいたい似たようなものです。 

投資ファンドが絡んだりしている件では、

若干複雑になることがありますが、基本は同じです。

契約書のスタイルを習得したい場合には、

定型書式等を読み込むことが適当かと思います。

定型的、標準的な内容から逸脱している箇所(特約条項など)を

読み取って、その点について注意喚起していかなければなりません。

 

賃貸借契約に固有の特徴は、司法の世界では無視される内容の条項、

すなわち民法または借地借家法、

これらに関する判例の規範に反する契約条項がかなり多く記載されている、

という点です。

たとえば、賃料を1回でも延滞したら賃貸借契約が解除される、

などの条項です。

貸主はいつでも契約の解約の申入れをすることができ、

その場合、借主は立退料を請求できない、などの条項もあります。

立退料の請求不可、との条文は、司法の世界ではほぼ無視されます。

 

特に借地借家法は、借主の弱い立場を保護するとの観点から、

強行法規とされる条文が多く存在し、

この場合、法律の定めよりも借主に不利な条項は

法に反するものとして無効となります。

無効となるであろう定めを敢えて残しておくことは、

当事者間の紳士協定としての意味は持つかも知れませんが、

いざ争われたら無意味である、という点を、

お客様に予めお伝えしなければならないことは、結構多いです。

 

少し違う話ですが、借主の立場からは、

中途解約条項が入っているか否かに注意が必要です。

法律には中途解約に関する条文がありませんので、

途中で退去する場合には、中途解約条項を入れてもらうことが必須です。

不動産を今後活用する必要がないのに、借り続けることを強制され、

残期間の賃料の全額を請求されるのではたまりません。

出たくなったらいつでも出られるためには、

契約に定めを置くことが必要です。

 

2 商業不動産における定期借家契約への切り替え


 

 

商業不動産などにおいては、売上の見込めない店舗を退店させたり、

改装による集客を行わなければならない場合が多く、

借地借家法の規制にしたがうと機動的な事業再編が進まないため、

賃貸借契約でない契約を創設しようとするための

もろもろの工夫がみられました。

出店契約書などはその一例かと思います。

ざっくりと言えば、その場所を貸しているのではなく、

その場所で営業することを認めているだけだ、

という建付で、賃貸借契約ではない、

という説明をすることになりますが、

本気で争われると苦しいところです。

 

そのため、最近は、

商業不動産においても契約の性質が賃貸借であることを認め、

定期借家契約を締結するところが非常に増えているように思います。

 

出店契約書などは、各商業不動産ごとの定型書式であるため、

テナントが修正を求めることは容易ではありませんが、

たまに、標準的な内容からやや逸脱している内容が書いてあります。

他のデベロッパーの契約書にはこんな条項はないので変更して欲しい、ということを指摘するのが、

リーガルチェックの1つの仕事となります。

 

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不動産事件(2)不動産売買契約書

2016.03.11更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、不動産売買契約書の条項で

注意すべき点などについて書きます。

 

1 不動産売買契約書の条項で注意すべき点


 

 

不動産売買契約書は、多くの場合、

不動産業者がひな形を用意しており、

その内容もだいたい似たようなものです。 

投資ファンドが絡んだりしている件では、

若干複雑になることがありますが、基本は同じです。

定型契約に近いものであり、契約書のスタイルを習得したい場合には、

業界団体の発行する定型書式等を読み込むことが適当かと思います。

 

どの種類の契約でも同様ですが、

定型的、標準的な内容から逸脱している箇所を読み取って、

その点について注意喚起するのが専門家の仕事です。

典型的なものは特約条項に記載された事項です。

 

2 比較的多いトラブルとその対処法

   (契約日と支払日を同一とすること)


 

 

これまでの経験では、瑕疵担保責任の内容、手付金などの取扱い、

担保権の抹消などを巡るトラブルが多いと感じます。

契約締結と代金決済の日取りが別々の場合には、

売主は物件を買主のために押さえておく(他の顧客には売却しない)

ようにするために、手付金の預託を求めていくことがあります。

しかし、詳細は別のブログで書こうと思いますが、

手付金、違約金絡みのトラブルは結構多いものです。

 

トラブルを少なくするためには、契約書の内容を修正することよりも、

契約締結と代金決済を同時に行ってしまうことのほうが

断然に良いと思います。

この場合、通常、買主が融資を受ける銀行において決済の席を設け、

売主・買主・不動産仲介業者・売主側の担保権者・司法書士が同席し、

契約の締結、代金の支払い、登記書類等の、

全ての書類を決裁の場で授受します。

押印前の書類を相互に確認して、

間違いがない状態をもって決済の場に臨みます。

 

弁護士が破産管財人として不動産を売却するときには

必ずこの方法を用います。

契約締結と代金決済が同一時であり、手付金の授受は発生しません。

担保権の抹消書類が整っていない限り、

ローンの実行、代金の授受もなされません。

瑕疵担保責任については、破産管財物件の場合には、

売主は責任を負わない旨の特約を設けます。

 

3 弁護士の関与


 

 

決済の席に臨席することは、

職業人として不動産業界に携わる方については半ば常識ですが、

一般の方の場合には不安に思われることもあるかもしれません。

また、規模の大きい取引、重要な取引の場合には、

弁護士が立ち会ったほうが適切な場合があります。

契約書のチェックにとどまらず、

決済の場に臨席する業務もお請けしております。

また、ご依頼があれば

契約書の起案、確認を業として承ることは、当然のことです。

 

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不動産事件(1)不動産明渡し請求と費用

2016.03.10更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

弁護士をしております、野澤吉太郎です。

しばらくの間、不動産事件について書きます。

最初は、不動産明渡請求事件について

(中でも、もっとも件数の多いと思われる

債務不履行解除に基づく建物明渡請求事件をイメージして)

書きます。

 

1 債務不履行解除が認められる要件


 

 

賃貸用不動産を所有しているので、他人に貸して賃料を得て運用する、

ということがよく行われます。

賃貸借契約上の債務を賃借人が遵守してくれれば問題がありませんが、

賃料を支払わなくなったり、契約外の他人を入居させたりするなどの

債務不履行を行うことがあります。

場合によっては行方不明になってしまうような場合もあります。

 

賃貸人からの解除が認められるためには、

賃借人の契約違反が軽微な場合では足りず、

その違反が賃貸人・賃借人の間の信頼関係を破壊した

といえることが必要です。

 

2 法的手続きをきちんと履践することの重要性


 

 

信頼関係が破壊されたような場合には、賃貸人が賃借人と任意で折衝し、

自発的に退去していただく道筋を立てるのが最も適切な方法です。

 

それでも、賃借人が自発的に出て行ってくれないこともあります。

このような場合、賃借人が弁護士に依頼すると高く付くという理由で、

賃貸人が自力で鍵を代えたりして追い出すことが、

いまだにあるようです。

賃料を得られなくなって運用もできなくなり、

おまけに費用も何十万もかかる、という状況に暗転しますし、

本当に不誠実な賃借人もいますので、

正直なところ、気持ちが全く分からないわけでもありません。

しかし、このように強制的に追い出す行為は、

自力救済」といわれる違法行為で、

賃貸人が損害賠償義務を負担するなどのリスクもありますし、

場合によっては不動産侵奪罪などの

刑事責任を問われるおそれもあります。

法人の貸主がこのような行為を行った場合には、

レピュテーションリスクが非常に高まります。

 

どうしても賃借人が退去してくれない場合、

弁護士費用の負担感は重々承知しながらも、

弁護士としては、法的手続きを取りましょう、

と言わざるを得なくなります。

 

3 賃料不払いの場合のメルクマール


 

 

賃料不払いの場合には、

3ヶ月分の延滞をみておけば概ね債務不履行解除が認められるので、

ここまでくれば訴訟に踏み切ることが多いです。

場合によっては2ヶ月程度の延滞で訴訟に踏み切ることもあります。

 

若干難しいのは、解除寸前になって

まとまった支払をしてくる賃借人への対処です。

判決までたどり着かなくとも、

賃料債務について和解調書を取得するために訴訟に踏み切ることもあります。

 

4 占有移転禁止仮処分が必要な場合


 

 

無断転貸などを行っている場合には、

訴訟で請求を認容してもらうことはそれほど難しくありませんが、

粛々と手続きを進めている途中に占有者が変更されるおそれがあるので、

訴訟を提起する前に仮処分申立を行い、占有者を特定します。

以前、一棟の賃貸マンションの2部屋の明渡が問題になった件で、

それぞれの賃借人が居るべき部屋を交換して

占有していたことがありました。

 

5 強制執行


 

 

明渡しをせよとの判決を受けた後も占有を係属する賃借人に対しては、

明渡しの強制執行を行います。

この場合、明渡し催告の際に立会人を手配し、

明渡し断行の際に執行補助者の業者を手配する必要が生じます。

 

6 費用


 

 

費用は概ね以下のとおりですが、

そもそも費用の支払いを残念に思う案件が多いので、

事案の内容、物件の広さ、案件数、予算等をお聞きし、

柔軟に対応します。

 

訴訟

・着手金20万円~50万円(消費税別途)

・報酬金20万円~50万円(同)

仮処分が必要な場合

・決定発令の場合 15万円(同)  

・仮処分執行着手金 5万円(同)

強制執行

・申立時 10万円~20万円(同)

・断行完了時 20万円~30万円(同)

いずれも、実費は別途となります。

 

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