不動産事件(1)不動産明渡し請求と費用
2016.03.10更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で
弁護士をしております、野澤吉太郎です。
しばらくの間、不動産事件について書きます。
最初は、不動産明渡請求事件について
(中でも、もっとも件数の多いと思われる
債務不履行解除に基づく建物明渡請求事件をイメージして)
書きます。
1 債務不履行解除が認められる要件
賃貸用不動産を所有しているので、他人に貸して賃料を得て運用する、
ということがよく行われます。
賃貸借契約上の債務を賃借人が遵守してくれれば問題がありませんが、
賃料を支払わなくなったり、契約外の他人を入居させたりするなどの
債務不履行を行うことがあります。
場合によっては行方不明になってしまうような場合もあります。
賃貸人からの解除が認められるためには、
賃借人の契約違反が軽微な場合では足りず、
その違反が賃貸人・賃借人の間の信頼関係を破壊した
といえることが必要です。
2 法的手続きをきちんと履践することの重要性
信頼関係が破壊されたような場合には、賃貸人が賃借人と任意で折衝し、
自発的に退去していただく道筋を立てるのが最も適切な方法です。
それでも、賃借人が自発的に出て行ってくれないこともあります。
このような場合、賃借人が弁護士に依頼すると高く付くという理由で、
賃貸人が自力で鍵を代えたりして追い出すことが、
いまだにあるようです。
賃料を得られなくなって運用もできなくなり、
おまけに費用も何十万もかかる、という状況に暗転しますし、
本当に不誠実な賃借人もいますので、
正直なところ、気持ちが全く分からないわけでもありません。
しかし、このように強制的に追い出す行為は、
「自力救済」といわれる違法行為で、
賃貸人が損害賠償義務を負担するなどのリスクもありますし、
場合によっては不動産侵奪罪などの
刑事責任を問われるおそれもあります。
法人の貸主がこのような行為を行った場合には、
レピュテーションリスクが非常に高まります。
どうしても賃借人が退去してくれない場合、
弁護士費用の負担感は重々承知しながらも、
弁護士としては、法的手続きを取りましょう、
と言わざるを得なくなります。
3 賃料不払いの場合のメルクマール
賃料不払いの場合には、
3ヶ月分の延滞をみておけば概ね債務不履行解除が認められるので、
ここまでくれば訴訟に踏み切ることが多いです。
場合によっては2ヶ月程度の延滞で訴訟に踏み切ることもあります。
若干難しいのは、解除寸前になって
まとまった支払をしてくる賃借人への対処です。
判決までたどり着かなくとも、
賃料債務について和解調書を取得するために訴訟に踏み切ることもあります。
4 占有移転禁止仮処分が必要な場合
無断転貸などを行っている場合には、
訴訟で請求を認容してもらうことはそれほど難しくありませんが、
粛々と手続きを進めている途中に占有者が変更されるおそれがあるので、
訴訟を提起する前に仮処分申立を行い、占有者を特定します。
以前、一棟の賃貸マンションの2部屋の明渡が問題になった件で、
それぞれの賃借人が居るべき部屋を交換して
占有していたことがありました。
5 強制執行
明渡しをせよとの判決を受けた後も占有を係属する賃借人に対しては、
明渡しの強制執行を行います。
この場合、明渡し催告の際に立会人を手配し、
明渡し断行の際に執行補助者の業者を手配する必要が生じます。
6 費用
費用は概ね以下のとおりですが、
そもそも費用の支払いを残念に思う案件が多いので、
事案の内容、物件の広さ、案件数、予算等をお聞きし、
柔軟に対応します。
訴訟
・着手金20万円~50万円(消費税別途)
・報酬金20万円~50万円(同)
仮処分が必要な場合
・決定発令の場合 15万円(同)
・仮処分執行着手金 5万円(同)
強制執行
・申立時 10万円~20万円(同)
・断行完了時 20万円~30万円(同)
いずれも、実費は別途となります。
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