不動産事件(6)敷金、保証金をめぐる紛争
2016.03.15更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で
主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。
今回は、敷金、保証金をめぐる紛争について、
若干ですが書いてみたいと思います。
1 敷金などのトラブル
敷金は、賃貸借契約において
賃借人の負担する債務の担保として賃貸人に交付される金銭であって、
通説によれば、
賃借物の明渡時までに生じた債務(未払賃料など)を担保する、
とされています。
実務上は、賃借人の原状回復義務を
賃貸人が代行する際に生じる原状回復費用を控除して、
敷金の残金を返還することが多いですが、
実際には、経年劣化などの賃借人の用法義務違反と関係のない費用までも
控除する例が多いようです。
頻繁にみられる事例ですが、
判例のルールがそれほど明確に確立されていない分野です。
十数年ほど前からの大きな流れですが、
概して、法律上の根拠が希薄な金銭の徴収、差し引きについては、
裁判所において厳しい判断が下されることが多くなっています。
過払い金などもその典型的な例だったと言えると思います。
消費者金融業者の多くが倒産処理を行いましたが、
そこまで追い込むこともやむなし、というのが、
大きな趨勢だったのだろうと思います。
不動産賃貸事業を大規模に展開している賃貸人の側においては、
敷金や更新料を資金繰りのアテにしすぎると、
判例の変更などにより、事業の存立基盤にリスクが生じます。
裁判所に持ち込まれる事例も増えていますので、
具体的な事情をみながら、
トラブルの少ない処理に近づけていくことが必要だろうと思います。
2 保証金トラブル
商業ビルの建築協力金などの名目で、
賃貸人が賃借人予定者に対し、保証金を徴求することがあります。
この保証金の法的性質が明瞭でない場合が多く、
賃貸人が交替した場合に保証金返還債務が承継されるか、
返還請求の時期がどの時点で到来するか、
などの争点が顕在化することがあります。
法律による規律が皆無に近い論点であるため、
賃貸人、賃借人のどちらの立場においても、
契約書上、明確なルールを設定しなければならないところです。
年利数%の運用益を前提として
保証金の返還を約束する事例などもありますが、
このご時世においては、運用自体が非常に難しいことですし、
大型物件の閉鎖が相次いでおり、不
動産価値そのものが下落する傾向にもあります。
大きな金額の未収が生じたりする場合がありますので、
預託する場合には非常に慎重な配慮が必要なところです。
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