企業法務/会社法務(18)支配株主に関する法規制の必要性
2016.01.19更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で
主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。
今回は会社法で立法的に解決されていない問題である、
支配株主に関する法規制について思うところを書いてみます。
1 支配株主の権限の濫用に関する規制
株主は、会社の支配株主の地位を利用して不正を行うことがあり、
具体的には、親会社が子会社を支配する、
創業家が会社を私物化する、といった態様で現れます。
中国会社法では、支配株主による株主権行使の濫用、
影響力の不正行使の禁止が明文化され、
会社が支配株主に対する損害賠償請求権を有するのに、
会社が権利行使しない場合には、
少数株主が会社に代位して代表訴訟を提起し、
支配株主の責任を追及する、という株主代表訴訟が認められています。
この問題に関しては、日本法では、ほとんど議論にのぼってないように思います。
学者の先生方は、立法による規制が必要であることを
実務的にはほとんど議論が盛り上がりません。
コーポレート・ガバナンス・コードにおいては、
少数株主や外国人株主に対して実質的に配慮する(基本原則1)、
上場会社が役員や主要株主等との取引をする際に
適切な手続きをとるよう枠組みを開示し、監視する(原則1-7)
という形で、若干触れられていますが、
他のテーマと比較してあまり重きが置かれていませんし、
非上場会社を規律するものではありません。
支配株主がいながら上場を果たしている会社も多数ありますが、
どうにも不自然な値動きをすることも多いように思います。
一般の個人投資家が右往左往するような値動きをすることは、
好ましくありません。
2 子会社管理との関係
日本では、親会社は子会社のためにならないことをしないであろう、
という、性善説に基づく運営をしてきて
支障がなかった歴史があるのかもしれません。
しかし、取締役が子会社を利用して不正行為を行った、
というケースでも、実はその取締役が
支配株主の出身者である場合が多いはずであり、
このような場合に、経営陣としての権限濫用にのみ着目するのは、
観察が足りないように思います。
海外を含め、適正なグループ管理を行う前提として、
親会社が子会社の利益を蔑ろにしないことが必要になります。
グループ管理の必要性をどれほど叫んだところで、
会社法上の法規制が不十分である場合には、
うまく機能しないように思います。
不勉強なのでこの程度にしておきますが、
英知を集結して何とか解決していただきたいと思います。
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