企業法務/会社法務(2)100%子会社の株主総会~書面決議の意味
2016.01.03更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で
主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。
今回は、一人会社(会社の株主が1名の会社)、
いわゆる100%子会社の株主総会について書きます。
現実の会議を開催しなくともよいことは常識だと思いますが、
その結果どうなるか、ということも含めて書いていこうと思います。
1 招集通知の省略、書面決議が可能
議決権を行使できる株主全員の同意があるときは、
招集通知、計算書類・事業報告の提供をせずに、
株主総会を開催することが可能です
(会社法300条、325条)。
また、会議を開催しない書面決議を行うことも可能です
(会社法319条等)。
現実の会議を開催しない場合を法が認めているということになります。
2 組織再編行為などでタイムスケジュールの短縮が可能
これは常識だと思います。
午前10時に株主総会招集通知省略の同意をもらい、
午前11時にM&Aを行う株主総会決議を行い、
午前11時30分ごろに会社登記を行い、
正午に次の株主総会招集通知省略の同意をもらい、
午後1時に解散の株主総会決議を行い、
午後1時30分ごろに解散登記を行う、
といったテクニックを使うこともできます。
荒技のようですが、会社法上特に問題はありません。
よく使わせてもらう手です。
3 ある日突然、書面決議によって取締役、監査役を解任される
これはあまり知られていない事柄だと思います。
100%株主がいる会社の取締役、監査役は、
株主との関係に気をつけなければなりません。
株主は、以上に書いたのと同じ方法で、
取締役、監査役に全く気がつかれることもなく、
書面決議の方法により、
取締役を解任する株主総会決議を行うことができます。
登記上解任登記を入れられたということではなく、
実体法上も有効であるところが恐ろしいところです。
任期中の解任について取締役が損害賠償請求権を有するのみです。
損害賠償請求権も、月額報酬が安い場合、
会社が破綻寸前の場合などには、絵に描いた餅です。
取締役や監査役は、何の前触れもなく、突然職を失うことになります。
銀行の印鑑を改印されたり、
オフィスに行くカードキーにロックがかかったりすると、
ある日突然、オフィスに立ち入ることもできなくなります。
しかも、法務局ないし司法書士が登記申請をする場合に、
誰がその会社の株主かを終局的に確認するすべは、存在しません。
形式審査を経れば登記だけが受け付けられてしまう、
というのが恐ろしいところです。
一度調べたことがありますが、
事後に公正証書原本不実記載罪が成立する可能性がある程度で、
事前の歯止めとなりうる契機はあまりないようです。
4 支配株主の強大な権限
3の件は、
支配株主の権限が強大であることの典型的な事例だと思います。
必要やむを得ない場合もありますが、
登記合戦のような紛争を招きかねない点は恐ろしいところです。
日本の会社法は、
支配株主の権限の抑制について議論が甘いように思います。
支配株主と少数株主、親会社と子会社の問題については、
機会のあるときに改めて書いていきたいと思います。
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