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企業法務/会社法務(8)リスクマネジメントと経営戦略

2016.01.09更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回はリスクマネジメントと経営戦略の関係について書きます。

 

1 リスクマネジメントと経営戦略の関係


 

 

リスクマネジメントと経営戦略との関連を明晰に理解している人は、

我が国においてはあまりいないように思います。

企業実務を担当している方でも、

ピンとこないという方もいるのではないか、と感じることがあります。

 

必要があって、海外子会社管理に関する本を読んでいるところです。

(「海外子会社管理の実践ガイドブック」中央経済社

   有限責任監査法人トーマツ・エンタープライズリスクサービス編著)

昨日、なるほど、と腑に落ちる記載があったので

引用します(いずれも、同文献35頁)。

「2つの定義(※野澤註 ISO31000でのリスクマネジメントの定義・COSO・ERMの定義のこと)において特徴的なのが、リスクマネジメントを経営戦略としてとらえる必要があるということである。」

「自社を取り巻くリスクを把握し、許容できるリスクとできないリスクを峻別し、これを経営戦略としてとらえる必要がある。」

企業にとってリスクは成長・発展にとってきわめて重要なものであることから、このリスクの管理が経営戦略と直結していることを認識する必要がある」

 

特に、最後の一文の、

企業にとってリスクは成長・発展にとってきわめて重要なものである

というところが特徴的だと思います。

リスクとはそもそも何なのか、というところからきちんと認識しないと、

正確な理解ができないところだと思います。

 

2 リスクとは何か


 

 

日本人は、リスク、というと危険、と認識していますが、

企業実務において、

この翻訳が誤解の原因の1つとなっているように思います。

ファイナンス理論等の用語に従い正確に、

不確実性

と訳すべきです(危険は、Danger、であるはずです)。

 

聞いたたとえ話ですが、 

高度1000mの上空を飛ぶヘリコプターから

パラシュートなく飛び降りるのと、

家の2階から飛び降りるのと、どちらがリスクが高いか、

というと、家の2階から飛び降りるほうがリスクが高い、

ということになります。

ヘリコプターの上から飛び降りると100%命はありませんが、

家の2階から飛び降りても、

けがをするか、命を落とすか、不明だからです。

階段の1段下に歩いて降りるのはどうか。

これはほとんどリスクはありません。

ほぼ確実に、命を落とすことはないからです。

どれが一番危険か、というと、

ヘリコプターから飛び降りるのが一番危険です。

 

リスクと危険は必ずしも一致しない概念です。

リスクとは不確実性、期待する方向性からの偏差のことであり、

善し悪しとの関係では、あくまで中立です。

企業が当初に策定した目標よりも

はるかに好ましい方向に働くリスクもあるわけです。

 

昔、企業価値算定についての勉強会で、

リスクとは不確実性だ、

ということを報告したことがありました。

聞いている側も専門家でしたが、あまりピンときていませんでした。

そのくらい誤解に満ちあふれた言葉です。

 

3 リスクマネジメントは経営戦略そのもの


 

 

企業は、不確実性を適正に運用管理し続けて、

事業目的を達成していくことになります。

これは経営戦略そのものであるというべきです。

そうであるからこそ、先ほどの文献のいうような、

「企業にとってリスクは成長・発展にとってきわめて重要なものである」

という話になるのだと、私は勝手に思っています。

 

危険であることについて、リスクがある、

と会話レベルで話をしている分にはあまり支障がありませんが、

リスクマネジメントを企業活動の一環として実施する場合に、

リスク=危険、ととらえ続けていると、

リスクマネジメントのほうは、時に、やらされ感に満ちた、

後ろ向きの活動になってしまうのではないか、と危惧しています。

定義付けが曖昧であることによって、

本来植え付けるべき印象を違えてしまう例だと思います。

 

リスクマネジメントに助言する立場の専門家が、

リスクについて誤った認識を持って、

顧客にアドバイスすることは、顧客に非常にもったいないことです。

コンプライアンス、内部統制、リスクマネジメントなど、

全てにおいていえることですが、

どうせ対策を取らなければならないのであれば、

経営戦略との連関を考えて効率的に行っていただけるように、

助言したいものです。

 

 弁護士野澤吉太郎

 

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投稿者: 弁護士 野澤吉太郎