企業法務/事業承継(3)相続人に事業を継がせる場合~民法の活用(生前贈与、遺言など)
2016.04.14更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で
主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。
相続人が事業を引継ぐ場合の、
法制度面で考慮すべき要素を挙げていきます。
いろいろな領域が複雑に絡み合うところですが、法の分野ごとに分け、
具体的には民法分野を最初に書きます。
1 遺言書
民法の活用の領域は、多くの範囲において、相続対策と重なります。
もっとも大事なことは、相続人の誰を後継者とし、
その後継者の持株数を何株にするかをできる限り確定しておくことです。
大事なことは、遺言書を用意しておくことであり、
後で疑義を遺さないようにするためには、
公正証書遺言を遺すことが最も望ましいです。
公正証書遺言の文案は弁護士が作成することが望ましいです。
誰々に何を相続させる、という簡単な内容でも構いませんが、
なぜそのような遺言を遺すのか、
簡潔にして要点を射た言及をしておくべきだと考えています。
生前の意思が明確になるよう事実を積み重ねて
事実に忠実な表現を用いれば後世にまで残る文書となります。
相続開始後に相続人間で紛議が生じたときに、
株式買取価格決定、株主代表訴訟など、派生的に紛争が発生し、
紛争の存在により、会社の運営に支障を来すことがあります。
そのときに、創業者がこのようなことを考えていた、という、
確実な証拠を遺すことは有意義です。
非公開会社の会社訴訟・非訟については、他の紛争類型と比べて、
裁判所は、和解による解決を当事者に求める割合が高いです。
創業者のメッセージが、後継者側が和解を求める際の、
格好の材料となることもあるかもしれません。
2 遺留分の考慮
遺言を作成する際には相続人候補者を確定します。
後継者ではない相続人にも遺留分があります。
遺留分の制約の範囲を考慮しながら、
財産の移転の方針を決定しなければなりません。
後継者でない相続人候補者に対して十分な財産を渡して、
被相続人の生前に遺留分を放棄していただくという方法もあります。
(家庭裁判所の許可を得る必要あり)
3 生前贈与
相続開始時に株式の相続が決まっておらず、
遺産分割紛争が生じると、持株数が流動的となり、
株主総会の開催に支障を来します。
後継者に対し、相続開始前に持株を移転し、
生前贈与を活用することがもっとも確実です。
後継者が生前贈与を受けた場合には、特別受益の問題が発生します。
被相続人が遺言にて特別受益の持戻し免除の意思表示をしておくとよいです。
ただし、生前贈与の贈与税率が高いという欠点があり、
贈与税に対する手当てが必要となります。
買取による場合には、買取資金をどのように工面するかについて、
検討が必要です。
いろいろな局面において税務との連携が必須となります。
次は税務について書いてみます。
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