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企業法務/会社法務(10)合弁契約・株主間契約

2016.01.11更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

会社設立、定款の話に引き続き、

合弁契約・株主間契約について書きます。

 

1 合弁契約と株主間契約


 

 

株主になろうとする者同士が、

会社の設立前に、出資比率、役員の選出、

会社の運営方針などについて交渉し、

合意された契約が合弁契約であり、

すでに成立した会社について、

同様の交渉をして合意された契約が株主間契約です。

合弁契約は株主間契約の一種といえます。

両契約の締結に至るまでの過程、重視すべき点は、ほぼ重なります。

 

定款に記載すれば

強行法規に違反するものとして無効となる場合でも、

株主間で合意すれば当事者間の債権契約として

有効と認められる場合があります。

定款の内容と、これらの契約の内容を異にする実利がここにあります。

 

2 契約交渉過程


 

 

機会のあるときに改めて詳しく書こうと思いますが、

だいたい決まった流れです。

交渉開始前に守秘義務契約を締結し、

デューディリジェンスを行い、

必要に応じて

中間的合意(レターオブインテント)を積み重ねていきます。

その後、本契約を締結し、定款を作成する、

という流れを踏みます。

多くの場合、合弁契約書に、表明保証条項、

誓約条項、競業避止条項等を設けます。

 

3 弁護士の関与の薄さ


 

 

これらのプロセスを踏むことは非常に重要なことです。

しかし、個別にはいろいろな論点はあるものの、

ある程度型にはまった部分もあり、

実践することはそれほど難しくないはずです。

海外進出の場合は別ですが、日本においては、

これまで弁護士の関与は薄かったと思います。

これも不思議な話です。

 

4 事前に合意する習慣が希薄なこと


 

 

これから緊密な関係に立とうとする者同士で

細かい取り決めをするのは野暮だ、ということなのかもしれません。

話が少し飛びますが、家族法で、

夫婦財産契約、という概念があります(民法755条)。

夫婦が婚姻届出前に財産について取り決めをするというものです。

日本ではほぼ皆無と言ってよいほど、ほぼ使われていません。

再婚同士だったり高齢者同士の結婚だったり、

実子の意見も尊重しなければいけない場合などには、

うまく使えば、結構意味があるような気もします。

そうは言っても、多くの場合、

夫婦の間で事前に取り決めをする必要はないように思います。

 

しかし、夫婦は愛情の世界ですが、ビジネスは論理の世界です。

これと同じようにはいかないはずです。

事前にきちんと合意することが重要です。

合弁契約や株主間契約の重要性は増してくるものと思います。

 

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企業法務/会社法務(9)設立と定款

2016.01.10更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

前回までとは少し話を変えて、会社設立、定款について書きます。

 

1 会社設立


 

 

法学部の講義や司法試験の勉強で、商法の勉強を始めると、

会社法の目的、理念を学んだ次に、

会社の設立の論点が出てきます。

理論的に奥の深い分野です。

しかし、私も弁護士になってから10年あまり経ちますが、

設立に関するアドバイスを本格的に求められるようになったのは、

ここ何年かくらいのことです。

 

会社設立、とインターネットで検索すると、

司法書士・行政書士・税理士などの専門家を紹介する広告は

上位に出てきます。

しかし、弁護士はあまり出てきません。

日本には隣接士業の方々が

十分に役割を果たされているからかもしれません。

しかし、諸外国と比較すると、特異な状況のようです。

ある人(外国の方)から、

本では会社設立にほとんど弁護士が関与していないのはおかしい、

と言われたことがあります。

設立、定款のプランニングについて

弁護士の関与が薄いのは、私の偏見ではないようです。

私が設立に関するアドバイスを受けなかったのも、

それほど奇妙なことではないかもしれません。

 

2 定款の作成について


 

 

会社を設立するには定款を作成する必要があります。

定款のひな形は巷間にあふれています。

確かに、ひな形を活用すれば会社の設立はできます。

価格競争も非常に厳しい世界のようです。

しかし、設立の時点で、将来予想されることを厳しく織り込んで、

塾考を重ねて定款を設立したほうが良いことは

間違いありません。

こればかりは、単純に費用が安ければよい、

というものではありません。

 

会社法は、

中小規模で全株式譲渡制限をした会社については、

機関設計について幅広い定款自治を認めていますが、

会社を設立した後、

定款の内容を変更することは容易ではありません。

株主間の意見の対立が現れたりすると、

特別決議を成立させることが困難な会社に

変わってしまうことがあります。

そうすると、株式に関する定めを変更することなどが難しくなります。

会社法がせっかく許容した定款自治の恩恵を

ほとんど受けられない会社は山ほどあります。

 

3 合弁契約、株主間契約の重要性


 

 

会社を設立する際には、将来の利害対立の可能性を予め織り込むため、

出資者同士できちんと議論を闘わせることが必要です。

よって、合弁契約、株主間契約のように、

対象の会社について株主の間で合意することは、非常に重要です。

合弁契約、株主間契約については項を改めます。

 

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企業法務/会社法務(8)リスクマネジメントと経営戦略

2016.01.09更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回はリスクマネジメントと経営戦略の関係について書きます。

 

1 リスクマネジメントと経営戦略の関係


 

 

リスクマネジメントと経営戦略との関連を明晰に理解している人は、

我が国においてはあまりいないように思います。

企業実務を担当している方でも、

ピンとこないという方もいるのではないか、と感じることがあります。

 

必要があって、海外子会社管理に関する本を読んでいるところです。

(「海外子会社管理の実践ガイドブック」中央経済社

   有限責任監査法人トーマツ・エンタープライズリスクサービス編著)

昨日、なるほど、と腑に落ちる記載があったので

引用します(いずれも、同文献35頁)。

「2つの定義(※野澤註 ISO31000でのリスクマネジメントの定義・COSO・ERMの定義のこと)において特徴的なのが、リスクマネジメントを経営戦略としてとらえる必要があるということである。」

「自社を取り巻くリスクを把握し、許容できるリスクとできないリスクを峻別し、これを経営戦略としてとらえる必要がある。」

企業にとってリスクは成長・発展にとってきわめて重要なものであることから、このリスクの管理が経営戦略と直結していることを認識する必要がある」

 

特に、最後の一文の、

企業にとってリスクは成長・発展にとってきわめて重要なものである

というところが特徴的だと思います。

リスクとはそもそも何なのか、というところからきちんと認識しないと、

正確な理解ができないところだと思います。

 

2 リスクとは何か


 

 

日本人は、リスク、というと危険、と認識していますが、

企業実務において、

この翻訳が誤解の原因の1つとなっているように思います。

ファイナンス理論等の用語に従い正確に、

不確実性

と訳すべきです(危険は、Danger、であるはずです)。

 

聞いたたとえ話ですが、 

高度1000mの上空を飛ぶヘリコプターから

パラシュートなく飛び降りるのと、

家の2階から飛び降りるのと、どちらがリスクが高いか、

というと、家の2階から飛び降りるほうがリスクが高い、

ということになります。

ヘリコプターの上から飛び降りると100%命はありませんが、

家の2階から飛び降りても、

けがをするか、命を落とすか、不明だからです。

階段の1段下に歩いて降りるのはどうか。

これはほとんどリスクはありません。

ほぼ確実に、命を落とすことはないからです。

どれが一番危険か、というと、

ヘリコプターから飛び降りるのが一番危険です。

 

リスクと危険は必ずしも一致しない概念です。

リスクとは不確実性、期待する方向性からの偏差のことであり、

善し悪しとの関係では、あくまで中立です。

企業が当初に策定した目標よりも

はるかに好ましい方向に働くリスクもあるわけです。

 

昔、企業価値算定についての勉強会で、

リスクとは不確実性だ、

ということを報告したことがありました。

聞いている側も専門家でしたが、あまりピンときていませんでした。

そのくらい誤解に満ちあふれた言葉です。

 

3 リスクマネジメントは経営戦略そのもの


 

 

企業は、不確実性を適正に運用管理し続けて、

事業目的を達成していくことになります。

これは経営戦略そのものであるというべきです。

そうであるからこそ、先ほどの文献のいうような、

「企業にとってリスクは成長・発展にとってきわめて重要なものである」

という話になるのだと、私は勝手に思っています。

 

危険であることについて、リスクがある、

と会話レベルで話をしている分にはあまり支障がありませんが、

リスクマネジメントを企業活動の一環として実施する場合に、

リスク=危険、ととらえ続けていると、

リスクマネジメントのほうは、時に、やらされ感に満ちた、

後ろ向きの活動になってしまうのではないか、と危惧しています。

定義付けが曖昧であることによって、

本来植え付けるべき印象を違えてしまう例だと思います。

 

リスクマネジメントに助言する立場の専門家が、

リスクについて誤った認識を持って、

顧客にアドバイスすることは、顧客に非常にもったいないことです。

コンプライアンス、内部統制、リスクマネジメントなど、

全てにおいていえることですが、

どうせ対策を取らなければならないのであれば、

経営戦略との連関を考えて効率的に行っていただけるように、

助言したいものです。

 

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企業法務/会社法務(7)コンプライアンス体制、社内規程の整備

2016.01.08更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、大雑把な内容ですが、

コンプライアンス体制の整備の段取りについて、概要を書きます。

本当に荒っぽい概要ですが。

 

1 業法の遵守、一般法令の遵守、行政罰、刑事罰の回避


 

 

これを最初のテーマに据えるべきです。

いまどき、絶対に守らなければならないところです。

一般法令の遵守、行政罰、刑事罰の回避については、

後述する社内規程の整備により対応します。

 

わりと難しいのは各種業法の遵守です。

往々にして、各拠点の現場対応に任せている可能性があります。

許認可等が必要とされる事業の場合には注意が必要です。

許認可証などの原本がどこに所在しているか、

更新手続きを怠っていないか、

失効している許認可はないか、などの点検が必要です。

わりと怠りがちなのは役所に対する報告義務だと思います。

役所のほうもそれほど厳正に報告内容を

管理しきれていないこともあるのかもしれませんが、

平常時においては届出を怠っても催促されないので、

つい報告を怠る、ということはあると思います。

いざ問題が生じたときに、

報告の不備等にかこつけて役所から突き放されるおそれがあります。

 

適切な文献などが不足しているのが痛いところです。

一部の例外を除き、多くの業法については、

役所寄りの見解を述べた文献しかない場合もあります。

それすら存在しない場合もあります。

この分野は弁護士をはじめとする法律家が活動する場面だと思います。

業法解釈についてご相談がありましたら、対応いたします。

 

2 社内規程の整備


 

 

多くの会社では、

・人事労務関係規程(就業規則、賃金・給与規程等)

・安全衛生管理規程

などについては、比較的そろっていますが、

・会社の経営事項に関する規程(取締役会規程、規程管理規定など)

・組織権限規程(組織図、業務分掌規程、職務権限規程、稟議規程など)

・経理規程、与信管理規程

・内部監査規程

・文書取扱規程、印章取扱規程

などについては、

特に中小企業などにおいて、十分にそろっていない場合が多いところです。

重要なものから順番に策定していくことが必要です。

ひな形等は出回っていますが、

会社の実情に合わせたものにする必要があります。

 

3 業務分掌規程


 

 

経験上、業務分掌規程の策定には、

思わぬ副次効果があるように思いました。

各部署の業務の内容を洗い出し、点検していただく必要がありますが、

この段階で各部署が業務内容を再認識し、自覚を高める効果があります。

各部署の従業員(特に若い人)が、

「自分は何をすればよいのだろう?」

と一から考えることは、非常に苦しい部分があります。

ある程度定義付けをしてあげることで、

安心させるということも重要です。

各部署の業務が密接に関連したり、重層的に絡み合う場合には、

経営企画を担当する部署が、

部署に対する業務の割り振りをすることになります。

会社の全部署の話を聞いてみると、

各部署の抱える問題点を理解することができますし、

前向きな経営企画を策定するヒントを得ることもできます。

野球にたとえると、野手のお見合いでエラーをする、

という事態を防ぐ、というコンセプトです。

実情に合ったものを創ろうとするときには、

ひな形を参照すればできると甘く考えることはできません。

会社によると思いますが、ときには、本当に難しい作業となります。

しかし、非常に地味で地道であるものの、

最後までやり遂げることは、非常に大事な経験となります。

 

長くなってきたので、機会のあるときに内容を深掘りしたいと思います。

 

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企業法務/会社法務(6)取締役と監査役

2016.01.07更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、前回内部統制について書いてきた内容を踏まえ、

取締役と監査役の人選の重要性と、

その考え方について私見を書こうと思います。

取締役や監査役に関する法律論については、

後日機会のあるときに書きたいと思っています。

 

1 取締役の人選の重要性


 

 

内部統制について前回書きましたが、

たとえ内部統制の構築を進めていても、

上に立つ取締役がその趣旨を踏みにじるようなことをしていては、

画に描いた餅になります。

不正会計を指示したり、会社から資金を流出させたり、

現場の実情を無視した異常なノルマを強いる、

などというような話は巷間にあふれています。

日本の企業で取締役にまで昇進するには、

学閥や、部署(出身畑)による選別がなされたりしているようですが、

今日のように経営環境が日々刻々と激変する時代にあっては、

その弊害が出ているように思います。

現場で実績を出したスペシャリストであっても、

会社全体のマネジメントができるかというと、

必ずしもそうではありません。

営業力や商品開発力などと、意思決定力や人心掌握力などとは、

特に相関関係はないはずですし、

本来、一番のトップになるべき候補者は、

後者の能力に長けている人である必要があると思います。

部下の能力の発揮をいかに活用するか、

ということが重要なはずです。

トップを誰にするかによって会社の運命が変わります。

命がけの仕事だと思います。

全従業員が理解でき、

行動指針とできるような会社のポリシーを策定することも必要です。

 

ベンチャー企業においては、

卓越した技術力などがある人が代表者になることがあります。

その人がいないと事業化が進まないことが理由であったりします。

しかし、利害関係人の意見を聞かない、妙に頑固である、

配慮が欠けているなど、どこかにバランスの悪い部分があると、

どんなに優れたアイデアを持っていても、

周りの人がついていかないので、事業化はうまくいかなくなります。

当たり前のことを言っているようですが、割と重要なことだと思います。

そういう会社は資金調達も上手なことが多いです。

アイデアだけを見てよかれと思って出資すると、

後で金が返ってこない、というようなことを何度か見たことがあります。

 

2 監査役の人選の重要性


 

 

監査役の制度や権限、義務は、各国各様であり、

監査役は業務監査、会計監査を行う、という一応の定義はあるものの、

具体的にどこからどこまでの範囲で何をするか、

というところまで踏み込んでいくと、曖昧な部分が少なくありません。

そのため、監査役の人選については、

私自身も不勉強で、いまだ考えがまとまっていない部分がありますが、

少なくとも、取締役の職務内容を正確に理解し、

内部監査、内部統制に通暁している人である必要があると思います。

日本の監査役には特に専門的資格が要求されていません。

現状は、従業員であった人が横滑りしたり、

他のところで名を馳せている人を招聘したり、

というような方法で選ばれているように思いますが、

それだけで足りると考えることは、ちょっと違うのでは?と思います。

 

社長にモノも言えない人が監査役になっても意味がありませんし、

あまりに栄達を極めた人すぎてその人に話をするのがはばかられる、

というのでも意味がありません。

昨今は、海外も含め、

子会社管理を適正に行う必要性が高まっていますが、

それらの現場を忠実に観察することのできる時間的余裕、

能力、意欲がある人である必要があるように思います。

 

3 弁護士の役割


 

 

弁護士会などで社外取締役、社外監査役の候補者を募る動きがあります。

確かにいち弁護士の立場としては悪くないと思いますが、

やるなら本気で現場を周り、企業を改善しようとする人でない限り、

意味がないように思います。

法的見解だけ述べているようならば、顧問弁護士と重複するだけです。

 

役員になると、社外の立場であれ社内の立場であれ、

法律問題以外の件についても責任を負うことになります。

むしろ、弁護士がその活動で培ってきた、人から話を聞く能力、

事実の把握の能力、公正な判断をする能力に長けている、

というところにアピールの重きを置くべきものと思いますし、

そうした活動を実践していくことが必要だと思います。

 

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企業法務/会社法務(5)内部統制

2016.01.06更新

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主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、内部統制について書いてみます。

非常に重たいテーマなので、概略になります。

 

1 内部統制の内容(概略)


 

 

会社法(会社法362条4項6号、会社法施行規則100条1項)で

定められている内容の概略は以下のとおりです。

今のところ、会社法上の大会社と委員会設置会社に

限定した規定となっています。

子会社からなる企業集団における業務の適正の確保、

との点については、平成27年5月の改正会社法により、

会社法施行規則から会社法の法律自体に格上げされており、

グループ管理の重要性が増している

との立法者の認識がうかがえます。

 

①取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを

   確保するための体制 (法令等の遵守)

②取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理

   に関する体制 (情報と伝達)

③損失の危険の管理に関する規程その他の体制

 (リスクの評価と対応)

④取締役の職務の執行が効率的に行われることを

   確保するための体制 (業務の有効性・効率性)

⑤使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを

   確保するための体制 (内部統制の目的)

⑥当該株式会社並びに当該株式会社及び子会社から成る

  企業集団における業務の適正を確保するための体制

(連結ベースでの内部統制)

 

このほか、金融商品取引法24条の4の4)においては、

上場会社について、

内部統制報告書の作成・提出義務が定められました。

これを受け、金融庁、日本公認会計士協会等が

審議を経て、基準を定めています

(いわゆる「内部統制府令ガイドライン」等)。

 

2 内部統制の問題点~「やらされ感」


 

 

しかし、これだけ書くだけでも、何となく重すぎる内容です。

まず、内部統制という言葉のイメージがあまり良くないように思います。

また、COSOに援用する部分が多いことからわかるように、

米国由来の考え方の輸入の側面がありますし、

実務上は、監査法人によって事細かに監査されるイメージが拭えず、

会社の側からみると、何となくやらされ感が漂っています。

企業側から出てきたノウハウではないので、

内部統制の文献は監査法人、法律事務所などが執筆することが多く、

これを読んでも、あまり面白みを感じない、ということになってしまいます。

とにかく本を読んでも面白くない。

 

3 本来の考え方


 

 

この内部統制のやらされ感を払拭し、

非常にポジティブにとらえ直すこと、

すなわち、適正な内部統制を構築すれば、

会社が儲かるという実感を得ること、が必要だと思います。

私自身は、内部統制は経営戦略の前提だと考えています。

どれほど前向きな戦略を描いていても、

足下が覚束ないようでは何の意味もありません。

後方が心配なければ、思い切って前に攻めることができます。

内部統制が必要なことは、どの企業にも妥当することであって、

一部の会社に限定された話ではありません。

むしろ、これから成長戦略を描く企業にこそ、

その会社の実情に合った内部統制を構築することが必要です。

費用や労力の点で疲弊しないように、徹底的に詰めるところと、

あまり力点を置かないところの区別をしながら、

サービスを提供するのが、

これからの私のライフワークだと思っています。

 

重いテーマなので、今回はこの程度で割愛し、

折に触れて、内部統制の話を織り交ぜて、

ブログを書いていきたいと思います。

 

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企業法務/会社法務(4)少数株主による株主総会招集

2016.01.05更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、少数株主による株主総会招集申立について書きます。

 

1 株主総会の招集


 

 

株主総会は、取締役会設置会社においては取締役会が招集を決定し、

代表取締役(委員会設置会社においては代表執行役)が招集を行います。

取締役会設置会社以外の会社においては、取締役が招集を決定し、

かつ、招集を行います。

これが原則ですが、取締役側が株主総会を招集しないことがあります。

一度も株主総会を開催したことがない会社は

、議事録の作成だけで済ませていることも多いです。

 

そこで、株主が裁判所の許可を得て

株主総会を招集する方途が採られています。

いわゆる少数株主による株主総会招集許可申立です。

 

2 申立の方法


 

 

定款に別段の定めがない限り、

①総株主の議決権の100分の3以上の議決権を保有し

②6ヶ月前から引き続き有している

との要件(※②は公開会社の場合のみ)を満たす株主について、

申立適格が認められます。

要件を満たす株主は、(通常、)代表取締役に対し、

株主総会の招集請求を行い、これに応じて代表取締役が

株主総会の招集をすればそれ以上先には進みませんが、

招集請求の後遅滞なく招集の手続きが行われない場合や、

招集請求があった日から8週間以内の日を

株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合には、

会社の本店所在地の地方裁判所に対して申立をすることができます。

以上がざっくりとした説明です。

 

3 少数株主にとってのハードル


 

 

そうは言うものの、非常にハードルの高い手続きです。

 

①持株数に争いがある場合

裁判所より、先に株主権確認の訴えなどによって

持ち株数を確定するよう求められることが多いです。

会社乗っ取りのようなケースでは、

株主権確認の訴えなどを経ている間に、

事業価値がなくなることがあります。

 

②申立を受けた後に、会社側が株主総会を速やかに招集し、

   開催する意向を示す場合

この場合、裁判所は会社が株主総会議事録を提出するまでの間、

手続きの進行を留保させ、議事録が提出されたのちに、

申立ての利益が失われたことを理由に、申立を却下したり、

申立人に対し、取下げを勧告することになります。

 

③持株数に争いがあり、会社が株主総会を招集する意向を示す場合

私の経験では、会社が株主総会を開催する以上は、

議決権割合の認識も含め、会社の自治を尊重する、

と裁判所から言われたことがあります。

 

4 会社側のとるべき対応


 

 

①株主総会を実際に開いてしまうことが最もよい対応であることは明らかです。

これに限らず、会社紛争では、会社側が法律に従った処理をすることで、

少数株主側の打つ手がなくなることが多々あります。

多くの場合、腹をくくったほうが勝ちます。

 

②もっとも、少数株主が会社を経営し、多数株主が申立をする場合、

実際に株主総会を開催すると、経営陣が入れ替わるので、

会社は簡単に株主総会を開けません。

会社側は多数派株主に対して

別のところで何らかの譲歩をしなければなりませんし、

逆に、多数株主側は、会社側に対し、

何らかの譲歩を引き出すよう求めることとなります。

例えば多数株主の保証債務を外すことなどが

譲歩のきっかけになることがあります。

 

5 株主の立場からいえること


 

 

たとえ十中八九の割合の議決権を有する多数株主であっても、

取締役などの役職にない場合には、

会社が株主総会を招集してくれない場合、

この手続きを経ないと株主総会の招集に関与できなくなります。

少数株主側の取締役らによって拙劣な経営をされた場合、

急いでこの取締役らを排除することは容易ではありません。

多数株主は、多数の割合を保有しているだけで安心できない、

ということになります。

安易に取締役の地位を外れないようにするなど、

細心の注意を払わなければなりません、

 

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企業法務/会社法務(3)株主名簿

2016.01.04更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、株主名簿について書いていきます。

 

1 株主名簿


 

 

株主名簿とは、株主の氏名・名称及び住所、その持ち株数、

株式の取得日等を記載または記録する帳簿であり(会社法121条)、

株式会社にはその作成が義務づけられています。

株式取得者は、株主名簿の名義書換をしなければ、

会社に対して権利の移転を対抗できません。

株券発行会社の株式等ではない株式の取得者については、

名義書換をしなければ、第三者に対しても権利の移転を対抗できません。

 

2 実務上の争い


 

 

株主名簿は会社代表者が作成するものですが、

これを不当に拒絶されることもありますし、

会社の運営の混乱が生じると、

いろいろな内容の株主名簿があらわれるなどして、

第三者が見たときに、

誰が株主であるかが分からなくなることがあります。

このような場合には、

株主権確認を求める訴え等により解決しなければならなくなります。

 

3 株式売買と単なる資金調達との区別


 

 

ベンチャー企業などは、資金調達を急いでいる場合が多く、

何日後までに振り込んで欲しい、という要望を受け、

投資家が、資金を先に振り込み、

契約書などは後付で作成するような運用が意外と多いものです。

あるいは、口約束で株式を譲渡する約束をしたりすることもあります。

当事者間の関係が良好である場合はそれでも良いですが、

会社を長期間運営していると、後で意見の食い違いが生じ、

持株権の争いが発生することがあります。

一方が会社の業務執行を担っていると、

少数株主(とみなされる側)は徹底的に排除されることもあります。

書面を交わしておかないと後で争いのもとになるので、

気をつけていただきたいと思います。

資金を供給するときは、株式の売買なのか、単なる貸付なのかを、

ごく簡単な契約書で良いので、事前に合意しておくことが必要です。

 

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企業法務/会社法務(2)100%子会社の株主総会~書面決議の意味

2016.01.03更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、一人会社(会社の株主が1名の会社)、

いわゆる100%子会社の株主総会について書きます。

現実の会議を開催しなくともよいことは常識だと思いますが、

その結果どうなるか、ということも含めて書いていこうと思います。

 

1 招集通知の省略、書面決議が可能


 

 

議決権を行使できる株主全員の同意があるときは、

招集通知、計算書類・事業報告の提供をせずに、

株主総会を開催することが可能です

(会社法300条、325条)。

また、会議を開催しない書面決議を行うことも可能です

(会社法319条等)。

現実の会議を開催しない場合を法が認めているということになります。

 

2 組織再編行為などでタイムスケジュールの短縮が可能


 

 

これは常識だと思います。

午前10時に株主総会招集通知省略の同意をもらい、

午前11時にM&Aを行う株主総会決議を行い、

午前11時30分ごろに会社登記を行い、

正午に次の株主総会招集通知省略の同意をもらい、

午後1時に解散の株主総会決議を行い、

午後1時30分ごろに解散登記を行う、

といったテクニックを使うこともできます。

荒技のようですが、会社法上特に問題はありません。

よく使わせてもらう手です。

 

3 ある日突然、書面決議によって取締役、監査役を解任される


 

 

これはあまり知られていない事柄だと思います。

100%株主がいる会社の取締役、監査役は、

株主との関係に気をつけなければなりません。

株主は、以上に書いたのと同じ方法で、

取締役、監査役に全く気がつかれることもなく、

書面決議の方法により、

取締役を解任する株主総会決議を行うことができます。

登記上解任登記を入れられたということではなく、

実体法上も有効であるところが恐ろしいところです。

任期中の解任について取締役が損害賠償請求権を有するのみです。

損害賠償請求権も、月額報酬が安い場合、

会社が破綻寸前の場合などには、絵に描いた餅です。

取締役や監査役は、何の前触れもなく、突然職を失うことになります。

銀行の印鑑を改印されたり、

オフィスに行くカードキーにロックがかかったりすると、

ある日突然、オフィスに立ち入ることもできなくなります。

しかも、法務局ないし司法書士が登記申請をする場合に、

誰がその会社の株主かを終局的に確認するすべは、存在しません。

形式審査を経れば登記だけが受け付けられてしまう、

というのが恐ろしいところです。

一度調べたことがありますが、

事後に公正証書原本不実記載罪が成立する可能性がある程度で、

事前の歯止めとなりうる契機はあまりないようです。

 

4 支配株主の強大な権限


 

 

3の件は、

支配株主の権限が強大であることの典型的な事例だと思います。

必要やむを得ない場合もありますが、

登記合戦のような紛争を招きかねない点は恐ろしいところです。

日本の会社法は、

支配株主の権限の抑制について議論が甘いように思います。

支配株主と少数株主、親会社と子会社の問題については、

機会のあるときに改めて書いていきたいと思います。

 

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企業法務/会社法務(1)株主総会

2016.01.02更新

東京都を豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動しております、野澤吉太郎です。

今回から、会社法に関連する職務領域について書きたいと思います。

まずは株主総会について書きます。

 

1 株主総会を開催していない会社が多いこと


 

 

上場企業であれば株主総会は必ず開催されますが、

閉鎖会社では、株主総会を開催せず、

議事録の作成だけで済ませる会社は結構たくさんあります。

開催していても、会社法に則らない処理をしていることもあります。

 

2 弁護士の経験~いろいろな会社の株主総会


 

 

弁護士は、会社の外から総会準備を援助します。

いろいろな株主総会をお手伝いし、

横断的な経験を持っているので、手助けに適しています。

私も、上場企業や一度も株主総会を開催したことのない会社など、

さまざまな会社のお手伝いをしてきました。

「明日株主総会に立ち会ってくれるか?」

と言われて立ち会ったこともあります。

事前準備が何もないまま立ち会うような場合、

決議取消事由を否定しがたいようなケースもありますが、

その場合であっても最善を尽くし、

裁量棄却を得られる方向に働く事情を積み上げることを心がけました。

 

3 株主総会を開催しないことのリスク


 

 

株主の間で経営に関する意見に食い違いがない場合は、

会社法に則らない手続きを進めても、

事実上、弊害は生じないことがありますが、

ひとたび意見の食い違いが発生すると、

過去にまでさかのぼって争われるリスクが生じます。

持株数に争いがある場合に、

株主総会が開催されていないのであるから

何十年前の取締役選任も全て無効、報酬決議も無効、

などと言われると、紛争が果てしなく広がっていくこととなります。

 

4 望ましい方向性


 

 

いままで株主総会を開催していない企業であっても、

株主総会を開催していくべきです。

参加することに意義がある、という言い方がありますが、

まずは開催することが重要です。

株主総会を初めて開催する場合、

最初はどうしても重苦しく考えてしまいます。

しかし、最初は手探りでも良いと思います。

ある程度ノウハウを確立すれば、自ずとおそれを抱かなくなります。

少数株主にきちんと質疑応答の機会を与えておくことが重要です。

 

現在時点では株主の間に意見の食い違いがなくとも、

株主の間で相続が発生して、

相続人との間で意見の食い違いがでることもあります。

相続人に対する買取請求権などが定款で定められていれば、

そこで対処することもできますが、

後から定款変更をすることが難しい会社もあります。

 

5 弁護士費用


 

 

会社の規模、準備の程度にもよりますが、

株主総会準備を単発の業務としてお手伝いする場合、

1社あたり、

30万円から50万円(消費税別)ほどで

お願いすることになります。

 

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