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企業法務/会社法務(13)譲渡制限株式の評価

2016.01.14更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、譲渡制限株式の価値の算定について

所感を書きたいと思います。

 

1 目的による区分


 

 

企業価値評価は、評価の目的によって評価方法が変わります。

譲渡制限株式の価値の評価は難しいところです。

課税目的の場合は、主に財産評価基本通達が用いられますが、

取引目的・裁判目的の場合などには、

日本公認会計士協会が策定した企業価値評価ガイドラインが用いられ、

具体的には、

インカム・アプローチ(DCF方式、配当還元方式、収益還元方式)

ネットアセット・アプローチ(簿価純資産方式、修正簿価純資産方式)

マーケット・アプローチ(類似上場会社方式、取引先例価格方式)

などの全部または一部を検討して決せられます。

 

2 評価の困難性


 

 

言うと簡単なようですが、説得的な評価をする、

ということは、非常に難しいことです。

弁護士として株式売買価格決定事件などを観察していると、

裁判所の鑑定への依存度が非常に高いことを感じます。

弁護士もトレンド(DCF方式など)を踏まえて議論しています。

しかし、実際にコンサルティングなどに関与してみると、

上記の処理がいかに表面的なものかを痛感します。

現場から上がってくる数字が本当にそれで正しいのか、

社内においても、正確に把握することは容易ではありません。

社内の管理会計においてすらも、

出てきた数値と肌感覚とが一致しない場合は多いと思われます。

社外(裁判所)からこれこれの理由で、この価格にすべし、

と決定される場合に、会社側がその結果が説得的である

と実感することは、あまり多くないのではないかと思います。

 

3 会社のリスクを下げるためには

    裁判目的評価を避けることを優先したほうがよい


 

 

少数株主は投下資本の回収を迫られることがあります。

会社の規模が大きい場合には、それなりの経済的利益が生じるため、

株主側の弁護士が強硬策に誘導するケースも多いと思います。

 

会社にとっては、株価がいくらと算定されるか

全く分からないということは、大きなリスクです。

株式売買価格決定事件などで

株式会社が買取代金供託をしなければならない場合には、

それ自体が寝た資金になります。

資金が寝ていることは

リスクとはいいませんが(確実にマイナスだから。)、

解決時期はリスクです。

一概に言うべきことではありませんが、

多くの場合、会社側が、

むしろ株式譲渡を承認してしまう方向で考えてしまうほうが、

リスクの管理の観点からは好ましいと思います。

会社が譲渡を承認する場合、

株主は売買価格決定事件の申立をすることができなくなり、

会社は裁判目的評価を避けることができます。

次にどういう株主が現れるか分からないというのはリスクですが、

弁護士に委任して申立てをしてくる株主は、

会社とのすでに親密な仲ではないことが多く、

会社にとっては、新たな株主が現れたところで、

状況は大して変わらないように感じます。

強制的な換価が容易でないと悟れば、

次の株主候補者も消えていくこともあります。

このように会社が開き直る場合には、

株主も次の手を見いだしにくくなります。

 

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企業法務/会社法務(12)会社法整備法

2016.01.13更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、会社法整備法にまつわる注意点などについて書きます。

 

1 会社法整備法


 

 

会社法が施行される際、

「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」も施行され、

有限会社法をはじめ9本の法律が廃止され、

関連する諸法令の整備が行われました。

多くは施行の時期にまたがる出来事に関する経過措置であり、

会社法が施行されて10年近く経つにつれて、

深く検討する必要のない条文も増えてきましたが、

いまだに注意すべきことも残っています。

私自身も念のため確認しておいてよかった、

と思う経験をしたケースがいくつかありますので、

簡単に書いてみたいと思います。

 

2 有限会社法関係(特例有限会社)


 

 

特例有限会社は、組織再編行為を行うについて、

何かと制限を受けています。

・吸収合併存続会社・吸収分割承継会社になれない(整備法37条)

・株式交換、株式移転の当事者となれない(整備法38条)

 

他方で吸収合併消滅会社、会社分割の分割会社にはなれます。

要するに特例有限会社が消えていく方向の行為であれば認められる、

ということだといわれています。

 

しかし、他方で、

特例有限会社は特別清算申立をすることもできません(整備法35条)。

清算中に債務超過の原因が発見されたときは、破産により処理する

実際には、グループ内での組織再編などでは、

特別清算をしたいから組織再編行為をする、という場合が多いのですが。

破産を避けるためには、

株式会社への商号変更を行わなければならなくなります。

消えていく方向、という意味では同じなので、

価値判断的には、許容しても良いのではないかと思うのですが。

もともとの由来する法律が違う、という建前論は分かるのですが、

何となくピンとこない話です。

実際に経験したことがあります。

有限会社、と書いてあると注意を払うようにしています。

しかしながら、スキーム図などに、(有)と略称にしてあると、

見つけ出すのにも結構きついものがあります。

目を皿のようにして見ていくことが必要です。

 

3 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律関係


 

 

小会社が曲者です。

会社法施行時において、

旧商法特例法第1条の2第2項の小会社であった会社

(資本の額が1億円以下、最終の貸借対照表の

 負債の部に計上した金額の合計額も200億円未満)は、

会社法施行後においても、

定款に会社法第389条第1項の定めがあるもの

とみなされます(会社法整備法53条)。

監査役の監査の範囲は会計に関するものに限定されます。

小会社においては、監査役は、会社法386条2項1号にいう

「取締役の責任を追及する訴えの提起」の請求(提訴請求)の

名宛人となる資格を有さず、正しい名宛人は代表取締役となります。

代表訴訟を提起するときには注意が必要です。

資本金額に注目しなければいけません。

 

これまで、会社法上の「監査役設置会社」ではないのに、

登記事項証明書上は「監査役設置会社」と明記されていました。

改正会社法にて、監査役の監査の範囲を会計に関するものに

限定する旨の定款の定めがある株式会社であるときは、

その旨を登記することと定められました

(会社法第911条第3項第17号イ)。

監査役の退任などの際に

会計に限定する旨の登記がなされることにより、

徐々にこの問題は解消されてくると思いますが、

しばらくの間は注意が必要です。

 

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企業法務/会社法務(11)組織再編等

2016.01.12更新

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主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、組織再編行為(合併、会社分割、株式交換・移転等)の

進め方について、概略を書きます。

 

1 流れの概略


 

 

同一企業グループ間で完結しない手続きをとる場合には、

合弁契約・株主間契約と似たような流れをとることになります。

交渉開始前に守秘義務契約を締結し、デューディリジェンスを行い、

中間的合意(レターオブインテント)を積み重ねていきます。

最終的に買取価格等を合意し、契約(合併契約、会社分割契約など)を

締結し、組織内の意思決定(株主総会決議等)を経て、

手続きを履践する、という流れを踏みます。

ビジネスDD、税務対応、株主対応など、

全てにおいて力点が置かれます。

 

これに対し、同一企業グループ内においては、

税務対応に力点が置かれることになります。

 

2 スケジューリング


 

 

どの手続きを採用するかの選択が終了した後に、

弁護士が最初に行うことは、

会社法、労働契約承継法などを踏まえたスケジューリングです。

目標となる効力発生日を決定し、そこから逆算して、

どの日までに何の行為を行わなければならないかを決めます。

会社の担当者の方のスケジュールと繁忙度に合わせて、

ご相談しながら決めます。

 

スケジューリングの際、官報公告の申込時期、

態様には非常に神経を遣います。

中小規模の企業の場合は決算公告などを行っていない場合が多く、

組織再編前にこれをどのように行うかを決めなければなりません。

時期にもよりますが、決算公告などを兼ねる場合には、

申込みから掲載まで1ヶ月以上かかることがあります。

また、公告の方法を日刊新聞等で行う旨の定款の規定がある場合などに、

債権者に向けた公告と兼ねられるよう、

決算公告についても定款変更によって官報に掲載する方法でする旨に

変更すると安全ですが、この措置をとるために

定款変更登記が必要となり、それに時間と費用がかかります。

 

万が一にでも間違いがあってはならない箇所です。

実際に株主総会を開催する場合などには

特に神経を遣う必要があります。

株主総会を書面決議等で行える場合や、

簡易・略式組織再編行為を行うことができる場合にあっては、

どこまでスケジュールを省略できるかが

一つの腕の見せ所のように思います。

 

3 各種書面の作成

 

その後、開示書面等の書式を起案し、作成することになります。

契約書自体は定型的なものが多いですが、

債権債務をリスト化したり、金銭的に評価を加える箇所については、

当然のことながら、非常に神経を遣います。

特に、会社分割の際の承継権利義務明細表の作成には時間を要します。

税理士・会計士の先生と問答を繰り返しながら、

お客様と打ち合わせをすることになります。

 

4 関係者への対応


 

 

株主総会の対応が必要なものについては、

株主総会の招集、開催も行うことになります。

労働者・労働組合への対応も重要です。

退職慰労金、社会保険等の切り替えに万全を期す必要があります。

許認可等が絡む業種については、許認可を承継できること、

円滑に再取得できることを事前に確認しておかなければなりません。

 

5 弁護士費用等


 

 

関与の内容と程度により、ご相談にて決めることとなります。

基本的な考え方を載せますが、

支払余力などにも左右されることと思います。

あくまで随時ご相談と考えています。

スケジューリング・各種書面作成の場合には、

基本は100万円(税別)程度で、

関係者対応(債権者対応、株主対応=株主総会)が絡む場合には、

それに準じた費用(株主総会の場合、50万円(税別)程度)を加算し、

特別清算等を行う場合には、

その費用50万円(税別)程度を加算していただく、

という感じだと思います。

 

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企業法務/会社法務(10)合弁契約・株主間契約

2016.01.11更新

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主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

会社設立、定款の話に引き続き、

合弁契約・株主間契約について書きます。

 

1 合弁契約と株主間契約


 

 

株主になろうとする者同士が、

会社の設立前に、出資比率、役員の選出、

会社の運営方針などについて交渉し、

合意された契約が合弁契約であり、

すでに成立した会社について、

同様の交渉をして合意された契約が株主間契約です。

合弁契約は株主間契約の一種といえます。

両契約の締結に至るまでの過程、重視すべき点は、ほぼ重なります。

 

定款に記載すれば

強行法規に違反するものとして無効となる場合でも、

株主間で合意すれば当事者間の債権契約として

有効と認められる場合があります。

定款の内容と、これらの契約の内容を異にする実利がここにあります。

 

2 契約交渉過程


 

 

機会のあるときに改めて詳しく書こうと思いますが、

だいたい決まった流れです。

交渉開始前に守秘義務契約を締結し、

デューディリジェンスを行い、

必要に応じて

中間的合意(レターオブインテント)を積み重ねていきます。

その後、本契約を締結し、定款を作成する、

という流れを踏みます。

多くの場合、合弁契約書に、表明保証条項、

誓約条項、競業避止条項等を設けます。

 

3 弁護士の関与の薄さ


 

 

これらのプロセスを踏むことは非常に重要なことです。

しかし、個別にはいろいろな論点はあるものの、

ある程度型にはまった部分もあり、

実践することはそれほど難しくないはずです。

海外進出の場合は別ですが、日本においては、

これまで弁護士の関与は薄かったと思います。

これも不思議な話です。

 

4 事前に合意する習慣が希薄なこと


 

 

これから緊密な関係に立とうとする者同士で

細かい取り決めをするのは野暮だ、ということなのかもしれません。

話が少し飛びますが、家族法で、

夫婦財産契約、という概念があります(民法755条)。

夫婦が婚姻届出前に財産について取り決めをするというものです。

日本ではほぼ皆無と言ってよいほど、ほぼ使われていません。

再婚同士だったり高齢者同士の結婚だったり、

実子の意見も尊重しなければいけない場合などには、

うまく使えば、結構意味があるような気もします。

そうは言っても、多くの場合、

夫婦の間で事前に取り決めをする必要はないように思います。

 

しかし、夫婦は愛情の世界ですが、ビジネスは論理の世界です。

これと同じようにはいかないはずです。

事前にきちんと合意することが重要です。

合弁契約や株主間契約の重要性は増してくるものと思います。

 

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企業法務/会社法務(9)設立と定款

2016.01.10更新

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前回までとは少し話を変えて、会社設立、定款について書きます。

 

1 会社設立


 

 

法学部の講義や司法試験の勉強で、商法の勉強を始めると、

会社法の目的、理念を学んだ次に、

会社の設立の論点が出てきます。

理論的に奥の深い分野です。

しかし、私も弁護士になってから10年あまり経ちますが、

設立に関するアドバイスを本格的に求められるようになったのは、

ここ何年かくらいのことです。

 

会社設立、とインターネットで検索すると、

司法書士・行政書士・税理士などの専門家を紹介する広告は

上位に出てきます。

しかし、弁護士はあまり出てきません。

日本には隣接士業の方々が

十分に役割を果たされているからかもしれません。

しかし、諸外国と比較すると、特異な状況のようです。

ある人(外国の方)から、

本では会社設立にほとんど弁護士が関与していないのはおかしい、

と言われたことがあります。

設立、定款のプランニングについて

弁護士の関与が薄いのは、私の偏見ではないようです。

私が設立に関するアドバイスを受けなかったのも、

それほど奇妙なことではないかもしれません。

 

2 定款の作成について


 

 

会社を設立するには定款を作成する必要があります。

定款のひな形は巷間にあふれています。

確かに、ひな形を活用すれば会社の設立はできます。

価格競争も非常に厳しい世界のようです。

しかし、設立の時点で、将来予想されることを厳しく織り込んで、

塾考を重ねて定款を設立したほうが良いことは

間違いありません。

こればかりは、単純に費用が安ければよい、

というものではありません。

 

会社法は、

中小規模で全株式譲渡制限をした会社については、

機関設計について幅広い定款自治を認めていますが、

会社を設立した後、

定款の内容を変更することは容易ではありません。

株主間の意見の対立が現れたりすると、

特別決議を成立させることが困難な会社に

変わってしまうことがあります。

そうすると、株式に関する定めを変更することなどが難しくなります。

会社法がせっかく許容した定款自治の恩恵を

ほとんど受けられない会社は山ほどあります。

 

3 合弁契約、株主間契約の重要性


 

 

会社を設立する際には、将来の利害対立の可能性を予め織り込むため、

出資者同士できちんと議論を闘わせることが必要です。

よって、合弁契約、株主間契約のように、

対象の会社について株主の間で合意することは、非常に重要です。

合弁契約、株主間契約については項を改めます。

 

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企業法務/会社法務(8)リスクマネジメントと経営戦略

2016.01.09更新

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今回はリスクマネジメントと経営戦略の関係について書きます。

 

1 リスクマネジメントと経営戦略の関係


 

 

リスクマネジメントと経営戦略との関連を明晰に理解している人は、

我が国においてはあまりいないように思います。

企業実務を担当している方でも、

ピンとこないという方もいるのではないか、と感じることがあります。

 

必要があって、海外子会社管理に関する本を読んでいるところです。

(「海外子会社管理の実践ガイドブック」中央経済社

   有限責任監査法人トーマツ・エンタープライズリスクサービス編著)

昨日、なるほど、と腑に落ちる記載があったので

引用します(いずれも、同文献35頁)。

「2つの定義(※野澤註 ISO31000でのリスクマネジメントの定義・COSO・ERMの定義のこと)において特徴的なのが、リスクマネジメントを経営戦略としてとらえる必要があるということである。」

「自社を取り巻くリスクを把握し、許容できるリスクとできないリスクを峻別し、これを経営戦略としてとらえる必要がある。」

企業にとってリスクは成長・発展にとってきわめて重要なものであることから、このリスクの管理が経営戦略と直結していることを認識する必要がある」

 

特に、最後の一文の、

企業にとってリスクは成長・発展にとってきわめて重要なものである

というところが特徴的だと思います。

リスクとはそもそも何なのか、というところからきちんと認識しないと、

正確な理解ができないところだと思います。

 

2 リスクとは何か


 

 

日本人は、リスク、というと危険、と認識していますが、

企業実務において、

この翻訳が誤解の原因の1つとなっているように思います。

ファイナンス理論等の用語に従い正確に、

不確実性

と訳すべきです(危険は、Danger、であるはずです)。

 

聞いたたとえ話ですが、 

高度1000mの上空を飛ぶヘリコプターから

パラシュートなく飛び降りるのと、

家の2階から飛び降りるのと、どちらがリスクが高いか、

というと、家の2階から飛び降りるほうがリスクが高い、

ということになります。

ヘリコプターの上から飛び降りると100%命はありませんが、

家の2階から飛び降りても、

けがをするか、命を落とすか、不明だからです。

階段の1段下に歩いて降りるのはどうか。

これはほとんどリスクはありません。

ほぼ確実に、命を落とすことはないからです。

どれが一番危険か、というと、

ヘリコプターから飛び降りるのが一番危険です。

 

リスクと危険は必ずしも一致しない概念です。

リスクとは不確実性、期待する方向性からの偏差のことであり、

善し悪しとの関係では、あくまで中立です。

企業が当初に策定した目標よりも

はるかに好ましい方向に働くリスクもあるわけです。

 

昔、企業価値算定についての勉強会で、

リスクとは不確実性だ、

ということを報告したことがありました。

聞いている側も専門家でしたが、あまりピンときていませんでした。

そのくらい誤解に満ちあふれた言葉です。

 

3 リスクマネジメントは経営戦略そのもの


 

 

企業は、不確実性を適正に運用管理し続けて、

事業目的を達成していくことになります。

これは経営戦略そのものであるというべきです。

そうであるからこそ、先ほどの文献のいうような、

「企業にとってリスクは成長・発展にとってきわめて重要なものである」

という話になるのだと、私は勝手に思っています。

 

危険であることについて、リスクがある、

と会話レベルで話をしている分にはあまり支障がありませんが、

リスクマネジメントを企業活動の一環として実施する場合に、

リスク=危険、ととらえ続けていると、

リスクマネジメントのほうは、時に、やらされ感に満ちた、

後ろ向きの活動になってしまうのではないか、と危惧しています。

定義付けが曖昧であることによって、

本来植え付けるべき印象を違えてしまう例だと思います。

 

リスクマネジメントに助言する立場の専門家が、

リスクについて誤った認識を持って、

顧客にアドバイスすることは、顧客に非常にもったいないことです。

コンプライアンス、内部統制、リスクマネジメントなど、

全てにおいていえることですが、

どうせ対策を取らなければならないのであれば、

経営戦略との連関を考えて効率的に行っていただけるように、

助言したいものです。

 

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弁護士 野澤吉太郎(のざわ きちたろう)

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企業法務/会社法務(7)コンプライアンス体制、社内規程の整備

2016.01.08更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、大雑把な内容ですが、

コンプライアンス体制の整備の段取りについて、概要を書きます。

本当に荒っぽい概要ですが。

 

1 業法の遵守、一般法令の遵守、行政罰、刑事罰の回避


 

 

これを最初のテーマに据えるべきです。

いまどき、絶対に守らなければならないところです。

一般法令の遵守、行政罰、刑事罰の回避については、

後述する社内規程の整備により対応します。

 

わりと難しいのは各種業法の遵守です。

往々にして、各拠点の現場対応に任せている可能性があります。

許認可等が必要とされる事業の場合には注意が必要です。

許認可証などの原本がどこに所在しているか、

更新手続きを怠っていないか、

失効している許認可はないか、などの点検が必要です。

わりと怠りがちなのは役所に対する報告義務だと思います。

役所のほうもそれほど厳正に報告内容を

管理しきれていないこともあるのかもしれませんが、

平常時においては届出を怠っても催促されないので、

つい報告を怠る、ということはあると思います。

いざ問題が生じたときに、

報告の不備等にかこつけて役所から突き放されるおそれがあります。

 

適切な文献などが不足しているのが痛いところです。

一部の例外を除き、多くの業法については、

役所寄りの見解を述べた文献しかない場合もあります。

それすら存在しない場合もあります。

この分野は弁護士をはじめとする法律家が活動する場面だと思います。

業法解釈についてご相談がありましたら、対応いたします。

 

2 社内規程の整備


 

 

多くの会社では、

・人事労務関係規程(就業規則、賃金・給与規程等)

・安全衛生管理規程

などについては、比較的そろっていますが、

・会社の経営事項に関する規程(取締役会規程、規程管理規定など)

・組織権限規程(組織図、業務分掌規程、職務権限規程、稟議規程など)

・経理規程、与信管理規程

・内部監査規程

・文書取扱規程、印章取扱規程

などについては、

特に中小企業などにおいて、十分にそろっていない場合が多いところです。

重要なものから順番に策定していくことが必要です。

ひな形等は出回っていますが、

会社の実情に合わせたものにする必要があります。

 

3 業務分掌規程


 

 

経験上、業務分掌規程の策定には、

思わぬ副次効果があるように思いました。

各部署の業務の内容を洗い出し、点検していただく必要がありますが、

この段階で各部署が業務内容を再認識し、自覚を高める効果があります。

各部署の従業員(特に若い人)が、

「自分は何をすればよいのだろう?」

と一から考えることは、非常に苦しい部分があります。

ある程度定義付けをしてあげることで、

安心させるということも重要です。

各部署の業務が密接に関連したり、重層的に絡み合う場合には、

経営企画を担当する部署が、

部署に対する業務の割り振りをすることになります。

会社の全部署の話を聞いてみると、

各部署の抱える問題点を理解することができますし、

前向きな経営企画を策定するヒントを得ることもできます。

野球にたとえると、野手のお見合いでエラーをする、

という事態を防ぐ、というコンセプトです。

実情に合ったものを創ろうとするときには、

ひな形を参照すればできると甘く考えることはできません。

会社によると思いますが、ときには、本当に難しい作業となります。

しかし、非常に地味で地道であるものの、

最後までやり遂げることは、非常に大事な経験となります。

 

長くなってきたので、機会のあるときに内容を深掘りしたいと思います。

 

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企業法務/会社法務(6)取締役と監査役

2016.01.07更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、前回内部統制について書いてきた内容を踏まえ、

取締役と監査役の人選の重要性と、

その考え方について私見を書こうと思います。

取締役や監査役に関する法律論については、

後日機会のあるときに書きたいと思っています。

 

1 取締役の人選の重要性


 

 

内部統制について前回書きましたが、

たとえ内部統制の構築を進めていても、

上に立つ取締役がその趣旨を踏みにじるようなことをしていては、

画に描いた餅になります。

不正会計を指示したり、会社から資金を流出させたり、

現場の実情を無視した異常なノルマを強いる、

などというような話は巷間にあふれています。

日本の企業で取締役にまで昇進するには、

学閥や、部署(出身畑)による選別がなされたりしているようですが、

今日のように経営環境が日々刻々と激変する時代にあっては、

その弊害が出ているように思います。

現場で実績を出したスペシャリストであっても、

会社全体のマネジメントができるかというと、

必ずしもそうではありません。

営業力や商品開発力などと、意思決定力や人心掌握力などとは、

特に相関関係はないはずですし、

本来、一番のトップになるべき候補者は、

後者の能力に長けている人である必要があると思います。

部下の能力の発揮をいかに活用するか、

ということが重要なはずです。

トップを誰にするかによって会社の運命が変わります。

命がけの仕事だと思います。

全従業員が理解でき、

行動指針とできるような会社のポリシーを策定することも必要です。

 

ベンチャー企業においては、

卓越した技術力などがある人が代表者になることがあります。

その人がいないと事業化が進まないことが理由であったりします。

しかし、利害関係人の意見を聞かない、妙に頑固である、

配慮が欠けているなど、どこかにバランスの悪い部分があると、

どんなに優れたアイデアを持っていても、

周りの人がついていかないので、事業化はうまくいかなくなります。

当たり前のことを言っているようですが、割と重要なことだと思います。

そういう会社は資金調達も上手なことが多いです。

アイデアだけを見てよかれと思って出資すると、

後で金が返ってこない、というようなことを何度か見たことがあります。

 

2 監査役の人選の重要性


 

 

監査役の制度や権限、義務は、各国各様であり、

監査役は業務監査、会計監査を行う、という一応の定義はあるものの、

具体的にどこからどこまでの範囲で何をするか、

というところまで踏み込んでいくと、曖昧な部分が少なくありません。

そのため、監査役の人選については、

私自身も不勉強で、いまだ考えがまとまっていない部分がありますが、

少なくとも、取締役の職務内容を正確に理解し、

内部監査、内部統制に通暁している人である必要があると思います。

日本の監査役には特に専門的資格が要求されていません。

現状は、従業員であった人が横滑りしたり、

他のところで名を馳せている人を招聘したり、

というような方法で選ばれているように思いますが、

それだけで足りると考えることは、ちょっと違うのでは?と思います。

 

社長にモノも言えない人が監査役になっても意味がありませんし、

あまりに栄達を極めた人すぎてその人に話をするのがはばかられる、

というのでも意味がありません。

昨今は、海外も含め、

子会社管理を適正に行う必要性が高まっていますが、

それらの現場を忠実に観察することのできる時間的余裕、

能力、意欲がある人である必要があるように思います。

 

3 弁護士の役割


 

 

弁護士会などで社外取締役、社外監査役の候補者を募る動きがあります。

確かにいち弁護士の立場としては悪くないと思いますが、

やるなら本気で現場を周り、企業を改善しようとする人でない限り、

意味がないように思います。

法的見解だけ述べているようならば、顧問弁護士と重複するだけです。

 

役員になると、社外の立場であれ社内の立場であれ、

法律問題以外の件についても責任を負うことになります。

むしろ、弁護士がその活動で培ってきた、人から話を聞く能力、

事実の把握の能力、公正な判断をする能力に長けている、

というところにアピールの重きを置くべきものと思いますし、

そうした活動を実践していくことが必要だと思います。

 

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企業法務/会社法務(5)内部統制

2016.01.06更新

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主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、内部統制について書いてみます。

非常に重たいテーマなので、概略になります。

 

1 内部統制の内容(概略)


 

 

会社法(会社法362条4項6号、会社法施行規則100条1項)で

定められている内容の概略は以下のとおりです。

今のところ、会社法上の大会社と委員会設置会社に

限定した規定となっています。

子会社からなる企業集団における業務の適正の確保、

との点については、平成27年5月の改正会社法により、

会社法施行規則から会社法の法律自体に格上げされており、

グループ管理の重要性が増している

との立法者の認識がうかがえます。

 

①取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを

   確保するための体制 (法令等の遵守)

②取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理

   に関する体制 (情報と伝達)

③損失の危険の管理に関する規程その他の体制

 (リスクの評価と対応)

④取締役の職務の執行が効率的に行われることを

   確保するための体制 (業務の有効性・効率性)

⑤使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを

   確保するための体制 (内部統制の目的)

⑥当該株式会社並びに当該株式会社及び子会社から成る

  企業集団における業務の適正を確保するための体制

(連結ベースでの内部統制)

 

このほか、金融商品取引法24条の4の4)においては、

上場会社について、

内部統制報告書の作成・提出義務が定められました。

これを受け、金融庁、日本公認会計士協会等が

審議を経て、基準を定めています

(いわゆる「内部統制府令ガイドライン」等)。

 

2 内部統制の問題点~「やらされ感」


 

 

しかし、これだけ書くだけでも、何となく重すぎる内容です。

まず、内部統制という言葉のイメージがあまり良くないように思います。

また、COSOに援用する部分が多いことからわかるように、

米国由来の考え方の輸入の側面がありますし、

実務上は、監査法人によって事細かに監査されるイメージが拭えず、

会社の側からみると、何となくやらされ感が漂っています。

企業側から出てきたノウハウではないので、

内部統制の文献は監査法人、法律事務所などが執筆することが多く、

これを読んでも、あまり面白みを感じない、ということになってしまいます。

とにかく本を読んでも面白くない。

 

3 本来の考え方


 

 

この内部統制のやらされ感を払拭し、

非常にポジティブにとらえ直すこと、

すなわち、適正な内部統制を構築すれば、

会社が儲かるという実感を得ること、が必要だと思います。

私自身は、内部統制は経営戦略の前提だと考えています。

どれほど前向きな戦略を描いていても、

足下が覚束ないようでは何の意味もありません。

後方が心配なければ、思い切って前に攻めることができます。

内部統制が必要なことは、どの企業にも妥当することであって、

一部の会社に限定された話ではありません。

むしろ、これから成長戦略を描く企業にこそ、

その会社の実情に合った内部統制を構築することが必要です。

費用や労力の点で疲弊しないように、徹底的に詰めるところと、

あまり力点を置かないところの区別をしながら、

サービスを提供するのが、

これからの私のライフワークだと思っています。

 

重いテーマなので、今回はこの程度で割愛し、

折に触れて、内部統制の話を織り交ぜて、

ブログを書いていきたいと思います。

 

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企業法務/会社法務(4)少数株主による株主総会招集

2016.01.05更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、少数株主による株主総会招集申立について書きます。

 

1 株主総会の招集


 

 

株主総会は、取締役会設置会社においては取締役会が招集を決定し、

代表取締役(委員会設置会社においては代表執行役)が招集を行います。

取締役会設置会社以外の会社においては、取締役が招集を決定し、

かつ、招集を行います。

これが原則ですが、取締役側が株主総会を招集しないことがあります。

一度も株主総会を開催したことがない会社は

、議事録の作成だけで済ませていることも多いです。

 

そこで、株主が裁判所の許可を得て

株主総会を招集する方途が採られています。

いわゆる少数株主による株主総会招集許可申立です。

 

2 申立の方法


 

 

定款に別段の定めがない限り、

①総株主の議決権の100分の3以上の議決権を保有し

②6ヶ月前から引き続き有している

との要件(※②は公開会社の場合のみ)を満たす株主について、

申立適格が認められます。

要件を満たす株主は、(通常、)代表取締役に対し、

株主総会の招集請求を行い、これに応じて代表取締役が

株主総会の招集をすればそれ以上先には進みませんが、

招集請求の後遅滞なく招集の手続きが行われない場合や、

招集請求があった日から8週間以内の日を

株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合には、

会社の本店所在地の地方裁判所に対して申立をすることができます。

以上がざっくりとした説明です。

 

3 少数株主にとってのハードル


 

 

そうは言うものの、非常にハードルの高い手続きです。

 

①持株数に争いがある場合

裁判所より、先に株主権確認の訴えなどによって

持ち株数を確定するよう求められることが多いです。

会社乗っ取りのようなケースでは、

株主権確認の訴えなどを経ている間に、

事業価値がなくなることがあります。

 

②申立を受けた後に、会社側が株主総会を速やかに招集し、

   開催する意向を示す場合

この場合、裁判所は会社が株主総会議事録を提出するまでの間、

手続きの進行を留保させ、議事録が提出されたのちに、

申立ての利益が失われたことを理由に、申立を却下したり、

申立人に対し、取下げを勧告することになります。

 

③持株数に争いがあり、会社が株主総会を招集する意向を示す場合

私の経験では、会社が株主総会を開催する以上は、

議決権割合の認識も含め、会社の自治を尊重する、

と裁判所から言われたことがあります。

 

4 会社側のとるべき対応


 

 

①株主総会を実際に開いてしまうことが最もよい対応であることは明らかです。

これに限らず、会社紛争では、会社側が法律に従った処理をすることで、

少数株主側の打つ手がなくなることが多々あります。

多くの場合、腹をくくったほうが勝ちます。

 

②もっとも、少数株主が会社を経営し、多数株主が申立をする場合、

実際に株主総会を開催すると、経営陣が入れ替わるので、

会社は簡単に株主総会を開けません。

会社側は多数派株主に対して

別のところで何らかの譲歩をしなければなりませんし、

逆に、多数株主側は、会社側に対し、

何らかの譲歩を引き出すよう求めることとなります。

例えば多数株主の保証債務を外すことなどが

譲歩のきっかけになることがあります。

 

5 株主の立場からいえること


 

 

たとえ十中八九の割合の議決権を有する多数株主であっても、

取締役などの役職にない場合には、

会社が株主総会を招集してくれない場合、

この手続きを経ないと株主総会の招集に関与できなくなります。

少数株主側の取締役らによって拙劣な経営をされた場合、

急いでこの取締役らを排除することは容易ではありません。

多数株主は、多数の割合を保有しているだけで安心できない、

ということになります。

安易に取締役の地位を外れないようにするなど、

細心の注意を払わなければなりません、

 

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