企業法務/会社法務(4)少数株主による株主総会招集
2016.01.05更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で
主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。
今回は、少数株主による株主総会招集申立について書きます。
1 株主総会の招集
株主総会は、取締役会設置会社においては取締役会が招集を決定し、
代表取締役(委員会設置会社においては代表執行役)が招集を行います。
取締役会設置会社以外の会社においては、取締役が招集を決定し、
かつ、招集を行います。
これが原則ですが、取締役側が株主総会を招集しないことがあります。
一度も株主総会を開催したことがない会社は
、議事録の作成だけで済ませていることも多いです。
そこで、株主が裁判所の許可を得て
株主総会を招集する方途が採られています。
いわゆる少数株主による株主総会招集許可申立です。
2 申立の方法
定款に別段の定めがない限り、
①総株主の議決権の100分の3以上の議決権を保有し
②6ヶ月前から引き続き有している
との要件(※②は公開会社の場合のみ)を満たす株主について、
申立適格が認められます。
要件を満たす株主は、(通常、)代表取締役に対し、
株主総会の招集請求を行い、これに応じて代表取締役が
株主総会の招集をすればそれ以上先には進みませんが、
招集請求の後遅滞なく招集の手続きが行われない場合や、
招集請求があった日から8週間以内の日を
株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合には、
会社の本店所在地の地方裁判所に対して申立をすることができます。
以上がざっくりとした説明です。
3 少数株主にとってのハードル
そうは言うものの、非常にハードルの高い手続きです。
①持株数に争いがある場合
裁判所より、先に株主権確認の訴えなどによって
持ち株数を確定するよう求められることが多いです。
会社乗っ取りのようなケースでは、
株主権確認の訴えなどを経ている間に、
事業価値がなくなることがあります。
②申立を受けた後に、会社側が株主総会を速やかに招集し、
開催する意向を示す場合
この場合、裁判所は会社が株主総会議事録を提出するまでの間、
手続きの進行を留保させ、議事録が提出されたのちに、
申立ての利益が失われたことを理由に、申立を却下したり、
申立人に対し、取下げを勧告することになります。
③持株数に争いがあり、会社が株主総会を招集する意向を示す場合
私の経験では、会社が株主総会を開催する以上は、
議決権割合の認識も含め、会社の自治を尊重する、
と裁判所から言われたことがあります。
4 会社側のとるべき対応
①株主総会を実際に開いてしまうことが最もよい対応であることは明らかです。
これに限らず、会社紛争では、会社側が法律に従った処理をすることで、
少数株主側の打つ手がなくなることが多々あります。
多くの場合、腹をくくったほうが勝ちます。
②もっとも、少数株主が会社を経営し、多数株主が申立をする場合、
実際に株主総会を開催すると、経営陣が入れ替わるので、
会社は簡単に株主総会を開けません。
会社側は多数派株主に対して
別のところで何らかの譲歩をしなければなりませんし、
逆に、多数株主側は、会社側に対し、
何らかの譲歩を引き出すよう求めることとなります。
例えば多数株主の保証債務を外すことなどが
譲歩のきっかけになることがあります。
5 株主の立場からいえること
たとえ十中八九の割合の議決権を有する多数株主であっても、
取締役などの役職にない場合には、
会社が株主総会を招集してくれない場合、
この手続きを経ないと株主総会の招集に関与できなくなります。
少数株主側の取締役らによって拙劣な経営をされた場合、
急いでこの取締役らを排除することは容易ではありません。
多数株主は、多数の割合を保有しているだけで安心できない、
ということになります。
安易に取締役の地位を外れないようにするなど、
細心の注意を払わなければなりません、
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