企業法務/会社法務(12)会社法整備法
2016.01.13更新
東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で
主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。
今回は、会社法整備法にまつわる注意点などについて書きます。
1 会社法整備法
会社法が施行される際、
「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」も施行され、
有限会社法をはじめ9本の法律が廃止され、
関連する諸法令の整備が行われました。
多くは施行の時期にまたがる出来事に関する経過措置であり、
会社法が施行されて10年近く経つにつれて、
深く検討する必要のない条文も増えてきましたが、
いまだに注意すべきことも残っています。
私自身も念のため確認しておいてよかった、
と思う経験をしたケースがいくつかありますので、
簡単に書いてみたいと思います。
2 有限会社法関係(特例有限会社)
特例有限会社は、組織再編行為を行うについて、
何かと制限を受けています。
・吸収合併存続会社・吸収分割承継会社になれない(整備法37条)
・株式交換、株式移転の当事者となれない(整備法38条)
他方で吸収合併消滅会社、会社分割の分割会社にはなれます。
要するに特例有限会社が消えていく方向の行為であれば認められる、
ということだといわれています。
しかし、他方で、
特例有限会社は特別清算申立をすることもできません(整備法35条)。
清算中に債務超過の原因が発見されたときは、破産により処理する
実際には、グループ内での組織再編などでは、
特別清算をしたいから組織再編行為をする、という場合が多いのですが。
破産を避けるためには、
株式会社への商号変更を行わなければならなくなります。
消えていく方向、という意味では同じなので、
価値判断的には、許容しても良いのではないかと思うのですが。
もともとの由来する法律が違う、という建前論は分かるのですが、
何となくピンとこない話です。
実際に経験したことがあります。
有限会社、と書いてあると注意を払うようにしています。
しかしながら、スキーム図などに、(有)と略称にしてあると、
見つけ出すのにも結構きついものがあります。
目を皿のようにして見ていくことが必要です。
3 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律関係
小会社が曲者です。
会社法施行時において、
旧商法特例法第1条の2第2項の小会社であった会社
(資本の額が1億円以下、最終の貸借対照表の
負債の部に計上した金額の合計額も200億円未満)は、
会社法施行後においても、
定款に会社法第389条第1項の定めがあるもの
とみなされます(会社法整備法53条)。
監査役の監査の範囲は会計に関するものに限定されます。
小会社においては、監査役は、会社法386条2項1号にいう
「取締役の責任を追及する訴えの提起」の請求(提訴請求)の
名宛人となる資格を有さず、正しい名宛人は代表取締役となります。
代表訴訟を提起するときには注意が必要です。
資本金額に注目しなければいけません。
これまで、会社法上の「監査役設置会社」ではないのに、
登記事項証明書上は「監査役設置会社」と明記されていました。
改正会社法にて、監査役の監査の範囲を会計に関するものに
限定する旨の定款の定めがある株式会社であるときは、
その旨を登記することと定められました
(会社法第911条第3項第17号イ)。
監査役の退任などの際に
会計に限定する旨の登記がなされることにより、
徐々にこの問題は解消されてくると思いますが、
しばらくの間は注意が必要です。
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