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企業法務/事業承継(3)相続人に事業を継がせる場合~民法の活用(生前贈与、遺言など)

2016.04.14更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

相続人が事業を引継ぐ場合の、

法制度面で考慮すべき要素を挙げていきます。

いろいろな領域が複雑に絡み合うところですが、法の分野ごとに分け、

具体的には民法分野を最初に書きます。

 

1 遺言書


 

 

民法の活用の領域は、多くの範囲において、相続対策と重なります。

もっとも大事なことは、相続人の誰を後継者とし、

その後継者の持株数を何株にするかをできる限り確定しておくことです。

大事なことは、遺言書を用意しておくことであり、

後で疑義を遺さないようにするためには、

公正証書遺言を遺すことが最も望ましいです。

 

公正証書遺言の文案は弁護士が作成することが望ましいです。

誰々に何を相続させる、という簡単な内容でも構いませんが、

なぜそのような遺言を遺すのか、

簡潔にして要点を射た言及をしておくべきだと考えています。

生前の意思が明確になるよう事実を積み重ねて

事実に忠実な表現を用いれば後世にまで残る文書となります。

 

相続開始後に相続人間で紛議が生じたときに、

株式買取価格決定、株主代表訴訟など、派生的に紛争が発生し、

紛争の存在により、会社の運営に支障を来すことがあります。

そのときに、創業者がこのようなことを考えていた、という、

確実な証拠を遺すことは有意義です。

非公開会社の会社訴訟・非訟については、他の紛争類型と比べて、

裁判所は、和解による解決を当事者に求める割合が高いです。

創業者のメッセージが、後継者側が和解を求める際の、

格好の材料となることもあるかもしれません。

 

2 遺留分の考慮


 

遺言を作成する際には相続人候補者を確定します。

後継者ではない相続人にも遺留分があります。

遺留分の制約の範囲を考慮しながら、

財産の移転の方針を決定しなければなりません。

後継者でない相続人候補者に対して十分な財産を渡して、

被相続人の生前に遺留分を放棄していただくという方法もあります。

(家庭裁判所の許可を得る必要あり)

 

3 生前贈与


 

相続開始時に株式の相続が決まっておらず、

遺産分割紛争が生じると、持株数が流動的となり、

株主総会の開催に支障を来します。

後継者に対し、相続開始前に持株を移転し、

生前贈与を活用することがもっとも確実です。

 

後継者が生前贈与を受けた場合には、特別受益の問題が発生します。

被相続人が遺言にて特別受益の持戻し免除の意思表示をしておくとよいです。

 

ただし、生前贈与の贈与税率が高いという欠点があり、

贈与税に対する手当てが必要となります。

買取による場合には、買取資金をどのように工面するかについて、

検討が必要です。 

 

 

いろいろな局面において税務との連携が必須となります。

次は税務について書いてみます。

 

 

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投稿者: 弁護士 野澤吉太郎

企業法務/事業承継(2)事業を継がせる後継者の選定、ナンバー2・・の選定の方針

2016.04.13更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

事業承継に関し、後継者などの選定について書いてみます。

 

1 事業承継の最大の悩み事は後継者


 

事業承継の段取り、手続きについては、専門家に任せればよいことです。

むしろ、経営者の最大の悩みどころは、

誰に事業を引き継がせるか、

どのように引き継がせるかという点にあります。

 

困った経営者の方々が専門家にアドバイスを求めても

それは経営者が決めることだ、というスタンスを

取られたりすることもあるでしょう。

理屈は正しいかも知れませんが、何のためにあなたがいるんですか、

という思いを拭えないこともあるのではないかと推察します。

専門家は、実行以前の段階から悩みに真摯に向き合う必要があります。

 

2  後継者を指名する仕組み


 

客観的な立場、しがらみの薄い立場からみていくと、

上下関係からは見えてこない後継者の長所、短所が見えてくることもあります。

会社法上の委員会設置会社には、

取締役等の指名委員会という機関が存在します。

法制度上の根拠を持たなくとも、

契約や慣習を根拠として、類似の制度を創ることは十分に可能です。

指名する機関を創りたいから委員会設置会社を創る、と、

直ちに結びつけるのは飛躍だと思います。

 

専門家自身が権力化してしまわないよう、

人選等にも気をつけなければなりませんし、

外部関係者としての客観性を保ち続ける心遣いを

持ち続けなければなりません。

しかし、意見を求められたら

説得的な意見を言える程度にはみておかなければなりません。

外部専門家

(弁護士のみならず、コンサルタントなどにおいても同様)にとって、

難しいさじ加減が要求されるところです。

 

3 後継者を補佐する仕組み


 

ファミリー企業に親族が務められている場合は、

後継者は概ね決まっていることが多いです。

創業者のパフォーマンスを横に見ながら後継体制を構築していきます。

成功した中小企業の経営者は、圧倒的なパフォーマンスを有しています。

トップが圧倒的なパフォーマンスを持っていると、

事業の引継ぎ前に、後継者が、

独自のパフォーマンスを発揮することは、簡単ではありません。

ある程度仕方がないことです。

サポートする腹心を含めて体制を構築することが重要です。

どのような腹心を置いて乗り切るか、ナンバー2、3・・・と考えていき、

管理職にいたるまで、組織を構築する提案を行います。

 

ここで重要なことは、

耳の痛いことを言える人がいること、のように思います。

歯止めになる人がいない場合、少しずつ組織の歯車が狂います。

いざとなれば歯止めになる人をどこから確保するかについて、

事業承継の準備段階から考案しておく必要があります。

古参幹部に引き続き働いてもらうようにお願いすることも選択肢です。

社内の人材に適任者がいればよいですが、

存在しないことも多いと思われます。

社内にいなければ外部から招聘できるか否かを検討し、

待遇がネックになるようであれば改善を提案します。

 

4 人間を観察し、信頼関係構築の橋渡しをする


 

 

後継者、これを補佐するナンバー2、3・・・を選定していく際には、

関係者を絶えず観察し、コミュニケーションをとり、

創業者と後継者の信頼関係の構築の橋渡しをすることも重要です。

 

後継者と思い定めた人が、ふとしたきっかけで、

態度を豹変させることはあり得ます。

そのような場合には、信頼できる関係者を増やしておくことが、

事業承継のリスク軽減に役立ちます。

何かトラブルのタネがあったとしても、

あの人に迷惑を掛けるから裏切れないな、

と後継者に思わせるような専門家がいることは、

トラブルの防止に役立つことと思います。

 

書き尽くせない話ですが、この程度にしておきます。

 

 

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企業法務/事業承継(1)事業承継の業務の手順

2016.04.12更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

ベンチャーについて何度かにわたり、ブログを書いてきましたが、

次に、既存の事業の引継ぎである、

事業承継について書いてみたいと思います。

事業承継は、本来の創業に次ぐ、

第2、第3の創業を成し遂げる機会です。

ベンチャー支援のあり方と相通じるところもあり、

ベンチャーに関するブログの余勢を駆って書いています。

 

1 事業承継対策の手順


 

 

事業承継対策で踏まえるべき手順は概ね以下のとおりです。

事業承継対策の具体的内容は次回以降に書きます。

 

・前提事実、現状の確認

(経営資源、資産、負債、後継者候補、相続関係等)

・方針の決定(複数の案の策定、検討)

・後継者の確定

・実施するプランの決定

・事業引継ぎの実行

 

プランを決めるまでも大変ですが、

実際に事業引継ぎを実行するプロセスにも相当の時間がかかります。

不測の事態が起き、前提事実が変更された場合は、

最初からプランを練り直して修正することになります。

 

全ての段階で、税務、法律の分野で連携をとりながら、

プランニング・モニタリングをする必要があります。

税負担などの資金需要が発生することもあり、

引継ぎを一挙に実現することができない場合もあります。

地道に着実に準備をしていかなければなりません。

逆に言えば、時間を掛けて立案することができる、

という特徴があります。

瞬発力はあまり必要ありません。

この点は、ベンチャーの場合とは異なります。

 

2 事業承継事案に関する弁護士の関与のしかた


 

 

最初の前提事実の確認、現状の確認、方針の決定が最も重要です。

 

また、弁護士が、税務、ビジネスと円滑に連携し、

根回し、コミュニケーション、

信頼関係の醸成にも努めなければなりません。

法務は弁護士に任せてください、

というスタンスだけではうまくいきません。

もろもろの事柄に主体的に関与する専門家が求められていると思います。

 

事業承継に関する解説書を読むと、

ビジネス面の記載の比重の置き方が薄いように思います。

どうしても、事業承継の法務、税務に関する手続き論に、

比重が置かれてしまっているように思います。

 

しかし、誰に事業を継がせるか、どのような体制を構築するかが、

最も難しい考慮要素であり、

そこに莫大なエネルギーを費やすことは疑いようもありません。

誰を後継者にするのか、という点について、経営者の方々が、

深く悩まれていることも疑いようもありません。

後継者の選定に関する悩み事についても、

時間を掛けながら話を聞き、ともに解決していく姿勢が必要です。

後継は自分で決めてくれ、という態度で突き放してしまうのであれば、

専門家の存在意義は薄いように思います。

 

解説本に悪意があるわけではありませんが、

専門家が、解説書のページの割き方にとらわれると、

自分の立ち位置を間違えてしまう可能性があります。

最も記載が薄い理由は、最も説明が難しく、

骨の折れることだからです。

 

事業承継協議会・事業承継ガイドライン検討委員会が策定した、

事業承継ガイドラインなどを参照すると、

比重の置き方が適切だな、という気がします。

 

専門家はともかく、問題意識をお持ちの方は、

最初にこれを読むと良いと思います。

 

3 付随業務の発生


 

 

事業承継を検討することと並行して、

この際、社内の体制をしっかり整備して欲しい、

という依頼を受けることがあります。

 

具体的には、組織、社内規程、各種契約書の点検・整備などです。

そのような依頼があればお請けすることはもちろんのことです。

さらに、法律、税務、などの分野を問わず、

とにかく相談があるので、聞いてほしい。

というケースもあります。

ご要望があれば、そのようなお話もお聞きすることとなります。

とにかく、時間がかかっても信頼関係を構築することが重要です。

特に用件がなくとも顔を出すことなどが重要な分野でもあります。

既存の業務にとらわれない柔軟な姿勢が必要であると考えています。 

 

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企業法務/新規事業・ベンチャー立ち上げ支援(5)~顧問弁護士や非常勤役員、社外取締役等としての関与

2016.04.11更新

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ベンチャーについて何度かにわたり、ブログを書いてきましたが、

最後に、弁護士の関わりの継続について書きます。

 

1 原型を構築した専門家の強み


 

 

ベンチャー企業の創造に関与した専門家の強みは、

原型を最も理解していることにあります。

あるべき原型を意識しておけば、その後にも役に立ちます。

会社が発展していったときに、

どの点が原型から外れかけていくかを突き止めることが容易です。

 

2 顧問弁護士


 

 

組織の構築がある程度進んできた場合には、

集まってきた人材によって組織を運営することになります。

 

組織構築等については、徐々に弁護士の手を離れていきますし、

そのほうが望ましいと思います。

 しかし、できる限り、顧問弁護士等として残していただくことが、

会社にとっても望ましいと思います。

その会社の本来のオペレーションを知っているからです。

 

また、その会社がさらに新しい事業を開始しようとするときには、

ベンチャー弁護士として引き続き関与することもあり得ます。

よく知っている会社の新規事業に関与することは、円滑なことです。

その場合、新規事業に関するブログの振り出しに戻り、

仕事をすることになります。

 

3 非常勤役員、社外取締役等


 

 

顧問弁護士と両立しうるものではないと思いますが、

役員としてその会社のガバナンスの一翼を担い、

引き続き参与することも考えられます。

ご要望があれば、喜んでお請けしたいと思います。

 

4 謙虚さを忘れないこと


 

 

新規事業の立ち上げに関与したとしても、

威張らないことが肝心です。

弁護士自体が権力の一部を構成してしまうと、

会社の健全な発展を阻害してしまいます。

その志は常に肝に銘じておきたいところです。

 

次回から事業承継について書こうと考えています。

 

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企業法務/新規事業・ベンチャー立ち上げ支援(4)~契約書ひな形・社内規程等の作成

2016.04.10更新

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主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、ベンチャー企業における、

契約書のひな形、社内規程等の策定の段取りについて書きます。

流れを理解していただくためにあらましを書いています。

 

1 段取り


 

 

これらの業務は、ルールに関する事柄であり

、本来的な弁護士業務に近い領域です。

前回、業務フローに関するブログで述べたのと

同じことがいえると思いますが、

ある程度組織が大きくなってくると、かつての書式が焼け太り、

後で修正するには労力がかかります。

 

早いうちに枠組みを固めておいたほうがよいことが沢山あります。

もっとも、管理部門を置くために、

新規事業を立ち上げたわけではありませんから、

手を付けやすい分野から、段階的に行っていけばよいと思います。

 

2 まずは人事分野から着手する


 

 

契約書、社内規程のいずれの場合も妥当することだと思いますが、

多くの場合、雇用契約書・労働条件通知書、

誓約書、身元保証書などの人事関係の契約書、

人事関係の規程(就業規則、賃金規程、職能制度等)などを、

早急に整備することが必要なことが多いと思います。

 

労働安全衛生の観点から、

安全衛生管理規程などを整備する必要もあります。

これも、広い意味で人事関係に含まれるように思います。

 

3 その他の社内規程の整備


 

 

事例によりますが、その後、

社内で完結する事柄に着手するのが適切な場合が多いと思います。

具体的には以下のとおりです。

・会社の経営事項に関する規程(取締役会規程、規程管理規定など)

・組織権限規程(組織図、業務分掌規程、職務権限規程、稟議規程など)

・経理規程、与信管理規程

・内部監査規程

・文書取扱規程、印章取扱規程

 

以前のブログ(企業法務/会社法務(7)コンプライアンス体制、社内規程の整備)もご参照ください。

 

4 契約書のひな形の作成について


 

 

多くの場合、一番最後に来る業務が、

契約書のひな形の作成だと思われます。

取引には相手方が存在します。

取引の相手方がひな形を提示してきて、

その内容を受け入れることが半強制である場合もあります。

そうでなくとも、相手方のひな形を修正すれば事足りることがあるので、

どうしても自社のひな形の作成は後回しになります。

 

しかし、会社の規模が大きくなってくると、

それでは通用しなくなるように思います。

相手方が提示してきた契約書の文案や、コメントを見ると、

相手方の会社の法務レベル、内部統制のレベル、

管理部門にどの程度の力を置いているかは、大体知れてしまいます。

一流の会社は相手の会社の管理レベルをきちんと観察しています。

 

したがって、ある段階でプロジェクトを組んで、

望ましい契約書のひな形を整備すべきものと思います。 

 

5 教育体制の整備


 

 

これらの業務は、組織が小さいうちは、予算と相談しながら、

適宜、アウトソーシングを活用するほうが効率的です。

私自身も、ボリュームを重視して、

費用面については柔軟にご相談する心づもりはできています。

 

しかし、いつまでも外部の専門家頼みでは、

不測の事態が生じたときに対応できなくなります。

徐々に手を離し、

社内で回していける体制を少しずつ整えていきたいところです。

 

社内の後継者を少しずつ育てることが重要です。

そこまで面倒をみる専門家でありたいと思っています。

社内教育、研修などに関与することにも

積極的でありたいと思っています。

 

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企業法務/新規事業・ベンチャー立ち上げ支援(3)~ガバナンス構築と業務フローの構築

2016.04.09更新

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今回は、ベンチャーの合弁会社をイメージして、

そのガバナンス構築ないし業務フローの構築について書きます。

 

1 ガバナンスの構築


 

 

ガバナンスの構築の重要性については、

既存の会社の場合と何ら変わる点はありません。

最初に居るメンバーをよく眺め、

組織図を構築し、誰が何の担当をするか

大まかな業務分掌を早急に取り決めておく必要があります。

企業が発展したり、不都合があったりする場合には、

変更すればよいことです。

まずはスピード優先です。 

 

起業間もない会社において、

大企業と同内容のガバナンスを実現することには無理があります。

例えば、10人もいない会社に法務部を構築しようとしても、

なかなか難しいことはおわかりいただけると思います。

 

企業の発展段階に応じて、

適切な管理体制を構築していくことになります。

どのような部署、制度を構築するか、

タイミングを見計らいながら助言していくことになります。

予めポリシーを策定し、経営計画を策定できるようにしておくと、

組織構築の道筋も見えやすくなります。

 

2 業務フローの構築


 

 

早い段階から業務フローの原型を作り上げていくことも重要です。

せっかく起業したのであれば、企業の規模を大きくすることが理想です。

会社に必要とされる業務の全てを抜かりなく洗い出さないと、

発展のための計画が立てられません。

業務フローを洗い出し、

経営資源(人的資源、固定資産、流動資産など)の、

何が足りないのかを特定し、将来の計画の基礎とします。

 

従業員の分担を決め、どの段階で報告、打ち合わせをするかなど、

業務フローの原型を作り上げ、文書化・ルール化しておけば、

後になって内部統制の構築をする際の手間も省けます。

支店、工場などが増えたあとに再検証することは労力を要します。

 

業務フローを向上させる改善活動をする雰囲気をつくることが重要です。

特定の人の言うことがルールになったりすることがありますが、

避けるべきことです。

途中で入ってくる従業員が、

先輩の言うことを何でも聞かなければならないとすると、

その従業員の成長が阻害されることがあります。

不合理な不文律がまかり通ると、組織が沈滞化します。

従業員の規模がひとつのハードルになることがあります。

いろいろとらえ方があると思いますが、私見では、

15名、50名、200名くらいが1つの壁でしょうか。

そこで組織の成長が止まってしまうことがあります。

これを避けなければなりません。

 

ベンチャーの段階から弁護士などの外部専門家が関与する場合には、

従業員ともコミュニケーションをとり、

人事評価制度の構築をするなどして、

モチベーションをもって仕事していただけるよう、

応援していくことになります。

 

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企業法務/新規事業・ベンチャー立ち上げ支援(2)~合弁会社設立・ライセンス

2016.04.08更新

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主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、合弁会社設立、ライセンス付与について書いていきます。

 

1 合弁かライセンスか


 

 

新規事業を興そうと志願する場合の方法論は、

細かく分けていくと、いろいろな方法がありますが、

大雑把に分けていくと、

・自らが遂行するか

・他者に遂行を任せるか

の2つしかありません。

前者の代表例は合弁契約、後者の代表例はライセンス契約です。

前者は投資が大きいが関与の度合いが強く、

後者は投資は少ないが関与の度合いが弱い、

という特徴があります。

 

合弁契約にも既存企業買収、新規設立など、様々なパターンがあり、

ライセンス契約にも、知的財産権に関するライセンス、

製造販売ライセンス、フランチャイズなど、様々な小分類があり、

細目ばかりにとらわれると立ち位置を見失ってしまいます。

大まかに捉えることが重要です。

 

弁護士に相談が来るときには、経営者の方が、

合弁契約を締結したい、ライセンス契約を締結したい、

ついてはその内容を精査して欲しい、というように、

予めテーマ設定をしてくださることが多いので、通常は、

弁護士は与えられたテーマを詰めていく作業をすることになります。

しかし、細かくビジネスモデルを聞いていくうちに、

この件はライセンスで遂行したほうが良いのではないか?

この件は合弁契約で遂行したほうが良いのではないか?

という疑問を覚えることもあるかもしれません。

そのような場合には、率直な意見交換を行うようにしています。

 

2 自ら遂行する場合(合弁契約)


 

 

自ら新規事業を遂行する場合には、

資本と人材を拠出する必要があります。

 

多数株主である場合と、少数株主である場合とで、

守るべき利害が異なりますので、

背景にある事情を考察しながら、

契約書や定款の案文を作成することになります。

 

既存の会社が合弁会社を設立する場合には、

どの部署の誰をどのような方法で新会社に関与させ、

何を担当させるか、などの枠組みを、

早急に構築して交渉にあたる必要があります。

この点も意外に重要なところです。

 

弁護士が関与する領域は、

契約書や定款の作成のみならず、

事業の切り出しの方法のレビュー、

スケジューリングのレビュー、

ないし相手方当事者への説明

(外国会社であれば法制度も含めた説明)

など、多岐にわたります。

 

なお、合弁会社とその設立については、 

「企業法務/会社法務(9)設立と定款」

「企業法務/会社法務(10)合弁契約・株主間契約」

のブログにも書いています。

 

3 ライセンス


 

 

ライセンスにはいろいろな形態がありますが、

着目すべきポイントは概ね決まっているように思います。

相手方と交渉される経営者の方々からみると、

いったい何に重点をおいてライセンス契約の締結交渉をしたらよいのかは、

意外に難しいように思います。

多種多様な内容があり、骨子を捉えづらいので、

合弁と比較してイメージが湧きづらい分野です。

 

商談は自由闊達に行いたいものです。

最低限伝えるべき事項をできるだけ簡潔に明示したうえで

あとは裁量で話してください、後で適宜条文を組み立てますので、

とお伝えすることは、弁護士が果たすべき重要な職務です。

 

全部言い尽くすことは難しいですが、

要点を抽出すると以下のとおりかと思います。

・ライセンスの範囲。どこで、何をして良いのか。

・独占権付与か非独占権か

・ロイヤルティの算定方法

・報告義務(ロイヤルティの算定について)

・権利保護に関する取り組み

・契約終了後の措置

 

以上は概略です。ビジネスの遂行上、いろいろな事態が想定されます。

細かく考えるべき点は、弁護士が綿密に考え抜いて、アドバイスしていくことになります。

より具体的なアドバイス等が必要な場合はお問い合わせいただければと思います。

 

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企業法務/新規事業・ベンチャー立ち上げ支援(1)~ベンチャー弁護士が備えるべき条件

2016.04.07更新

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今回から、新規事業・ベンチャー支援に関して書きます。

最初に、ベンチャー支援に携わる弁護士が備えるべき条件について、

私自身の考え方を書いてみたいと思います。

 

1 ビジネスを深く理解する姿勢で取り組むこと


 

 

新規事業、ベンチャーは、全く何もないところから、

組織を創造する点に特色がありますが、

弁護士に特別な専門能力が要求される領域ではありません。

新規に行おうとしているビジネスそのものに着目し、

当該会社の既存ビジネスの情報、競争業者の事業の情報、

類似業種などで見聞した情報などを拾い集める過程を経て、

新規ビジネスから派生する法務問題を、

分野を問わず拾い上げていくことになります。

 

どの情報源にアクセスし、どのような潜在的な問題を想像し、

何を想像するか、というプロセスを回していくところに、

一定の訓練と経験が必要ですが、

偏見をもたずにビジネスに着目していく姿勢を持つことが、

最も重要なことです。

ちなみに、扱う法律問題はほぼ全ての領域にまたがる可能性があります。

何々法が専門、という、これまで弁護士のあり方とは、

相当に異なるように思います。

偏見を持たずに観察することが最も重要です。

 

2 経営者、担当者の話を丹念に聞くことができること


 

 

ビジネスそのものに着目し、一定の心証を抱いた上で、

経営者なり担当者から、大づかみな交渉状況を聞くなどして、

物事を固めていく順番を付けていくことになります。

具体的には、何の契約を締結するのか、

合弁契約なのか、ライセンスなのか、などです。

定款作成、定款認証、設立登記などの手続き、

許認可の取得などについても、イメージを持つようにします。

 

中小企業では、経営者の方々は、

先見性、パフォーマンスに圧倒的に優れた人が多いのですが、

細かく条文を規定する作業をすべき役割ではないので、

条文の作成などは部下に任せることになります。

しかも、経営者の圧倒的なパフォーマンスを、部下が、

文章に1つずつ落とし込むことができていないことが多いです。

要は、ついてこられない、ということです。

能力の問題というよりも、訓練、経験の積ませ方の問題だと思います。

設定した期限だけが先行し、精査がなされないまま、

簡単な内容の契約をもって事業を開始してしまうことが多いです。

 

経営者のパフォーマンスを文章に落とし込んでいくことが、

弁護士の仕事の1つとなります。

経営者の方々には時間がありませんので、骨子だけを聴き取り、

自分のイメージと経営者のイメージを照らし合わせて想像をめぐらし、

近い将来開始されるべき事業のオペレーションにも考えをめぐらせて、

1つ1つの条文を作成していくことになります。

必要に応じて関連部署の担当者とも打ち合わせをし、

丹念に話を聞いていきます。

とにかく、丹念に要望を聞いていくことが必要です。

弁護士の意見を過度に押しつけようとすることは禁物です。

 

3 レスポンスが早いこと


 

 

起業をめぐる情勢は、生もののように、日々動きます。

レスポンスが早いことは死活的に重要です。

論理的正確性を追求することよりも、

イメージを具現化することのほうが大事で、

すぐに方向性を示してあげないといけません。

 

弁護士が携帯電話の番号を教えておくことは必須だと思います。

これができない弁護士が意外と多いように思いますが、

ベンチャー支援をする際にはそれではダメだと思います。

軽く質問されたことについて、

取り急ぎの心証を言えないような状況では、

新しいものを創造することはできません。

 

少し話が脱線しますが、私は、具体的に依頼を受けた場合には、

携帯電話の番号を教えるようにしています。

事務所にもどってから電話する、では遅いし、かえって面倒です。

変な電話がかかってくるから教えないほうが良いよ、

と忠告されることもありますが、当人が思う以上に、

それほど変な電話はかかってこないものです。

 

4 求められた意見については専門内外を問わず具申すること


 

 

新しいものを創造しようとするときには、

何の分野であろうが、人手が足りないことが多いです。

求められた意見については、積極的に回答することが必要です。

後で責任追及されるのではないか、という、

後ろ向きな考えでは仕事が務まりません。

 

 

私は、以上の考え方にしたがって職務を遂行しています。

ついこの間もベンチャーの職務を経験しました。

未経験の業種でしたが、想像を積み重ねながら成果を提示しました。

 

あらゆる分野の考察をしなければならない領域であるため、

全貌を書き連ねることは難しいですが、次回以降に、

個々の職務内容をいくつか拾い上げて書いてみたいと思います。

 

 

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企業法務/海外子会社管理(10)総括~グループポリシー、戦略の構築

2016.03.08更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

海外子会社管理のブログの最後に、グループポリシー、

戦略の構築の必要性について書きます。

 

1 親会社の内部統制


 

 

海外子会社管理についてしばらくブログを書いてきました。

同様に、親会社については内部統制等について適正に構築、

実施されているかの調査が必要なことがあります。

海外子会社より親会社のほうが十分な内部統制を構築している、

とは必ずしも言い切れません。

むしろその逆である場合は、意外と多いかもしれません。

 

海外子会社の調査を粛々と行っている際に、

親会社の問題を発見、または自覚することがあります。

このような場合は、親会社のやり方、

ルールに固執することなく、良いものを取り入れていくべきです。

 

2 グループポリシー、戦略の構築


 

 

海外子会社調査を通じて、

海外子会社とのコミュニケーションをとり、

双方を改善していく過程で、

グループの戦略を構築していくことになります。

 

そして、戦略を構築する土台としてポリシーが必要です。

なぜ当該戦略を適用するのかを、説得的に説明しないと、

文化、取り巻く環境がまるで異なる人々の動きは鈍くなります。

根本的な理念、ポリシーに根ざした戦略であることを

かみ砕いて説明するために、

十分なコミュニケーションをとり続けることが

どれだけ必要なものであるか、私自身も痛感しています。

 

海外子会社の関係者などに対し、

モチベーション、価値判断基準を付与していくことが、

強いグループを創る礎となります。

日本の会社と海外子会社の双方の人材を教育し、

研修していき、本当に強いグループを創ることが必要です。

なすべきことは無限にあるように思います。

 

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企業法務/海外子会社管理(9)モニタリング体制の構築

2016.03.07更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

海外子会社管理のモニタリング体制の構築について書きます。

 

1 海外子会社管理の1サイクル


 

 

これまで記載してきたことは、調査の計画を立て、

分野ごとに具体的な調査の項目を決定し、

日本側で調べられることは調べ、

最後は現地調査を行う、という流れでした。

現地調査などを経た後には、

海外子会社の内部統制の整備状況、運用状況にまで、

一通りの観察をすることになります。

 

こうして発見した事情を日本の親会社の経営陣に報告します。

海外子会社の経営陣に対しても同様です。

改善すべき点があればその旨を簡潔に記載し、改善を促します。

 

2 モニタリング体制の構築


 

 

しかし、このサイクルをいちど回すだけではあまり意味がありません。

改善策を発案した後は、その実行を促し、実行されたかどうかを確認し、

フォローアップができたかどうかを確認し、報告しなければなりません。

 

さらに、新しい課題を見つけ出したり、

経営環境が変わったりした場合には、

一連のサイクルを最初からやり直します。

何度か回しているうちにノウハウが構築され、

他の子会社(国内外を問わない)にも

応用が可能になっていくように思います。

 

3 従業員がモニタリングを担当することに意味がある


 

 

経営環境はめまぐるしく変化しますので、課題は無限にあります。

まるでモグラたたきのようなものですが、

いちいち外部専門家に頼らないとサイクルを回せない、というのでは、

会社にとってコスト倒れであり、疲弊感が漂ってしまいます。

 

私たち専門家は、従業員の方々と一緒に悪戦苦闘し、

海外子会社の調査のサイクルを何回か回すことによって、

従業員の方々にノウハウを構築していただき、

いずれはその業務から離れるか、困ったときに助言する、

というスタンスに切り替えていくのが適切だと考えています。

このような考え方を貫くことが、

この分野の裾野を広げることにつながると思っています。

 

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