野澤吉太郎法律事務所 弁護士 野澤吉太郎

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企業法務/会社法務(3)株主名簿

2016.01.04更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、株主名簿について書いていきます。

 

1 株主名簿


 

 

株主名簿とは、株主の氏名・名称及び住所、その持ち株数、

株式の取得日等を記載または記録する帳簿であり(会社法121条)、

株式会社にはその作成が義務づけられています。

株式取得者は、株主名簿の名義書換をしなければ、

会社に対して権利の移転を対抗できません。

株券発行会社の株式等ではない株式の取得者については、

名義書換をしなければ、第三者に対しても権利の移転を対抗できません。

 

2 実務上の争い


 

 

株主名簿は会社代表者が作成するものですが、

これを不当に拒絶されることもありますし、

会社の運営の混乱が生じると、

いろいろな内容の株主名簿があらわれるなどして、

第三者が見たときに、

誰が株主であるかが分からなくなることがあります。

このような場合には、

株主権確認を求める訴え等により解決しなければならなくなります。

 

3 株式売買と単なる資金調達との区別


 

 

ベンチャー企業などは、資金調達を急いでいる場合が多く、

何日後までに振り込んで欲しい、という要望を受け、

投資家が、資金を先に振り込み、

契約書などは後付で作成するような運用が意外と多いものです。

あるいは、口約束で株式を譲渡する約束をしたりすることもあります。

当事者間の関係が良好である場合はそれでも良いですが、

会社を長期間運営していると、後で意見の食い違いが生じ、

持株権の争いが発生することがあります。

一方が会社の業務執行を担っていると、

少数株主(とみなされる側)は徹底的に排除されることもあります。

書面を交わしておかないと後で争いのもとになるので、

気をつけていただきたいと思います。

資金を供給するときは、株式の売買なのか、単なる貸付なのかを、

ごく簡単な契約書で良いので、事前に合意しておくことが必要です。

 

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投稿者: 野澤吉太郎法律事務所

企業法務/会社法務(2)100%子会社の株主総会~書面決議の意味

2016.01.03更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、一人会社(会社の株主が1名の会社)、

いわゆる100%子会社の株主総会について書きます。

現実の会議を開催しなくともよいことは常識だと思いますが、

その結果どうなるか、ということも含めて書いていこうと思います。

 

1 招集通知の省略、書面決議が可能


 

 

議決権を行使できる株主全員の同意があるときは、

招集通知、計算書類・事業報告の提供をせずに、

株主総会を開催することが可能です

(会社法300条、325条)。

また、会議を開催しない書面決議を行うことも可能です

(会社法319条等)。

現実の会議を開催しない場合を法が認めているということになります。

 

2 組織再編行為などでタイムスケジュールの短縮が可能


 

 

これは常識だと思います。

午前10時に株主総会招集通知省略の同意をもらい、

午前11時にM&Aを行う株主総会決議を行い、

午前11時30分ごろに会社登記を行い、

正午に次の株主総会招集通知省略の同意をもらい、

午後1時に解散の株主総会決議を行い、

午後1時30分ごろに解散登記を行う、

といったテクニックを使うこともできます。

荒技のようですが、会社法上特に問題はありません。

よく使わせてもらう手です。

 

3 ある日突然、書面決議によって取締役、監査役を解任される


 

 

これはあまり知られていない事柄だと思います。

100%株主がいる会社の取締役、監査役は、

株主との関係に気をつけなければなりません。

株主は、以上に書いたのと同じ方法で、

取締役、監査役に全く気がつかれることもなく、

書面決議の方法により、

取締役を解任する株主総会決議を行うことができます。

登記上解任登記を入れられたということではなく、

実体法上も有効であるところが恐ろしいところです。

任期中の解任について取締役が損害賠償請求権を有するのみです。

損害賠償請求権も、月額報酬が安い場合、

会社が破綻寸前の場合などには、絵に描いた餅です。

取締役や監査役は、何の前触れもなく、突然職を失うことになります。

銀行の印鑑を改印されたり、

オフィスに行くカードキーにロックがかかったりすると、

ある日突然、オフィスに立ち入ることもできなくなります。

しかも、法務局ないし司法書士が登記申請をする場合に、

誰がその会社の株主かを終局的に確認するすべは、存在しません。

形式審査を経れば登記だけが受け付けられてしまう、

というのが恐ろしいところです。

一度調べたことがありますが、

事後に公正証書原本不実記載罪が成立する可能性がある程度で、

事前の歯止めとなりうる契機はあまりないようです。

 

4 支配株主の強大な権限


 

 

3の件は、

支配株主の権限が強大であることの典型的な事例だと思います。

必要やむを得ない場合もありますが、

登記合戦のような紛争を招きかねない点は恐ろしいところです。

日本の会社法は、

支配株主の権限の抑制について議論が甘いように思います。

支配株主と少数株主、親会社と子会社の問題については、

機会のあるときに改めて書いていきたいと思います。

 

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企業法務/会社法務(1)株主総会

2016.01.02更新

東京都を豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動しております、野澤吉太郎です。

今回から、会社法に関連する職務領域について書きたいと思います。

まずは株主総会について書きます。

 

1 株主総会を開催していない会社が多いこと


 

 

上場企業であれば株主総会は必ず開催されますが、

閉鎖会社では、株主総会を開催せず、

議事録の作成だけで済ませる会社は結構たくさんあります。

開催していても、会社法に則らない処理をしていることもあります。

 

2 弁護士の経験~いろいろな会社の株主総会


 

 

弁護士は、会社の外から総会準備を援助します。

いろいろな株主総会をお手伝いし、

横断的な経験を持っているので、手助けに適しています。

私も、上場企業や一度も株主総会を開催したことのない会社など、

さまざまな会社のお手伝いをしてきました。

「明日株主総会に立ち会ってくれるか?」

と言われて立ち会ったこともあります。

事前準備が何もないまま立ち会うような場合、

決議取消事由を否定しがたいようなケースもありますが、

その場合であっても最善を尽くし、

裁量棄却を得られる方向に働く事情を積み上げることを心がけました。

 

3 株主総会を開催しないことのリスク


 

 

株主の間で経営に関する意見に食い違いがない場合は、

会社法に則らない手続きを進めても、

事実上、弊害は生じないことがありますが、

ひとたび意見の食い違いが発生すると、

過去にまでさかのぼって争われるリスクが生じます。

持株数に争いがある場合に、

株主総会が開催されていないのであるから

何十年前の取締役選任も全て無効、報酬決議も無効、

などと言われると、紛争が果てしなく広がっていくこととなります。

 

4 望ましい方向性


 

 

いままで株主総会を開催していない企業であっても、

株主総会を開催していくべきです。

参加することに意義がある、という言い方がありますが、

まずは開催することが重要です。

株主総会を初めて開催する場合、

最初はどうしても重苦しく考えてしまいます。

しかし、最初は手探りでも良いと思います。

ある程度ノウハウを確立すれば、自ずとおそれを抱かなくなります。

少数株主にきちんと質疑応答の機会を与えておくことが重要です。

 

現在時点では株主の間に意見の食い違いがなくとも、

株主の間で相続が発生して、

相続人との間で意見の食い違いがでることもあります。

相続人に対する買取請求権などが定款で定められていれば、

そこで対処することもできますが、

後から定款変更をすることが難しい会社もあります。

 

5 弁護士費用


 

 

会社の規模、準備の程度にもよりますが、

株主総会準備を単発の業務としてお手伝いする場合、

1社あたり、

30万円から50万円(消費税別)ほどで

お願いすることになります。

 

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労働問題(10)使用者側弁護士が気をつけるべき点~危機管理

2016.01.01更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、使用者側弁護士が気をつけるべき点について書きます。

 

1 必要な強硬策といじめとの境界線


 

 

会社が労働者に対して強硬な策をとらざるを得ないことがあります。

この際、使用者側弁護士は、会社が取ろうとしている強硬策が、

客観的な正当性の担保されている強硬策なのか、

単なるいじめ、人権侵害と見えてしまうものなのかについて、

常にチェックを怠らない姿勢が必要だと思います。

 

社畜のようなマインドを持って職務遂行してしまうと、

処分を職務規律に基づいて客観的に判断することよりも、

特定の人への従属性を重視することに繋がりかねません。

下手をうつと、社会性を失い、いじめに変わってしまいます。

このことは、中小企業であろうが有数の大企業であろうが、

変わりありません。

むしろ、大企業であればあるほど、

使用者側弁護士の仕事のボリュームも大きくなります。

客観性を担保することが難しくなることもあるかも知れません。

会社の一時的な利益を最優先しすぎると、

長い目で見て、会社は衰えていきます。

 

2 危機管理の視点

   ~個別労働問題の解決方針が会社の経営に影響を与えかねないこと


 

 

個別の労働者に対する対処であっても、一歩間違うと、

インターネット上のいわゆる「炎上」などにより、

会社の存続に深刻な影響を与えることがあります。

労働問題と企業の危機管理の問題との連関が日に日に強まっています。

 

ブラック企業大賞

などというレッテルを貼ってこられる会社もあるようです。

いわれのない場合もあるかもしれませんが、

会社外の第三者から見れば、

そう言われても仕方がないことも多く見受けられます。

特に人の命や健康など、基本的な人権にかかわることについては、

良心を忘れない業務遂行を心がけることが必要であり、

対処を誤ると、取り返すことが難しくなります。

代理人は、会社の意向を曲げて譲歩するわけにはいきません。

しかし、ロジックを積み重ねながらも、

炎上させない配慮を随所に施す必要性は高まっています。

仕事の仕方が複雑化しています。

他方で、弁護士が自分の意見に固執し、

強硬策を推し進めすぎる場合には、

会社としては注意を払う必要があります。

 

3 職務規律違反について


 

 

他方で、企業秩序紊乱行為や、職務規律違反については、

日本の会社は対処がいささか甘かったのではないかと感じます。

社内で権力をもっている人には強い対処ができないことがあります。

ここで厳然と対処することは、

内部統制違反、企業不祥事の芽を摘むことになります。

今後、職務規律違反について

厳しく対処する方向に舵が切られていくことになると思われます。

 

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