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企業法務/海外子会社管理(3)具体的な調査項目、調査内容の決定

2016.02.15更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

海外子会社管理の援助の業務について試論を書いていますが、

今回は、具体的な調査項目、調査内容の決定の方法について、

書いてみたいと思います。

 

1 ビジネスモデルとガバナンスの把握


 

 

どのような調査を行う場合でも、

ビジネスモデルの把握・

事業を取り巻く外部環境の把握・

ガバナンス体制(組織図など)の把握は、

調査の大前提となります。

 

社外取締役や社外監査役に就任された方であれば別ですが、

既存の弁護士業務を行ってきた弁護士にとって、

組織図を批判的に検証することは、あまりなかったことと思います。

私自身もその例外ではありませんが、

主として、

コミュニケーションと業務の円滑を阻害する事象があるのか否か、

何か問題点があるのであれば、意見を具申できるように、

準備を怠らないようにしています。

 

そのなかで、リスク(不確定事象)の有無、内容、程度を

自分なりに確認します。

そして、調査の各論に入り、調査項目、調査内容を決めていきます。

当然のことながら、日本にいる間に入手できる情報は

極力入手して分析することになります。

最近はインターネットが発達しており、

相当詳細な各種統計資料なども

ダウンロードすることができますので(ただし英語)、

これを参照します。

 

2 弁護士の担当分野とその他の担当分野


 

 

弁護士は、

ガバナンスの確認、

コンプライアンス・現地法令の確認、

重要な契約書の確認、

業務フローの確認、

内部統制など

について検討することが主です。

この部分については弁護士が自分のノウハウとして

蓄積していかなければならないところです。

 

チームを組んで調査を行う場合、

そのほかに具体的に何をするのか、ということが問題になります。

他者のノウハウに絡むことであるため、

詳細については、勝手には書きづらい事情がありますが、

大雑把にいえば、

会社は売上を向上させ、費用を減少させることで利益を得るのですから、

売上向上策と合理的な経費節減の具体的方策の検討は必須であり、

マーケティングと財務の両観点からの分析が

必要になることは自ずと明らかなことです。

 

自分の担当分野ではない部分の具体的な調査内容の決定等については、

自分よりもその分野に強い人にお任せするとしても、

問題意識をもち、

討議に参加できる程度の勉強をしておかなければなりません。

 

3 調査項目と調査内容の決定


 

 

調査の大項目を決めた後は、

中項目・小項目の何を重点的に調査していくかを決めます。

日本で入手できる資料、

具体的には、公開されている資料と当該会社の資料を付き合わせながら、

検討を進めます。

1例を挙げると、多くの場合、労働法に関わる分野については

重点的に調査を行うことが多いと思われます。

 

日本の親会社が多くの子会社を有している場合などには、

各国で使えるマニュアルを構築することも1つの目標となります。

最初の調査を通じて、モニタリング体制構築の足がかりとします。

 

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企業法務/海外子会社管理(2)調査の概要と程度

2016.02.14更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

海外子会社管理の援助の業務について、

引き続き試論を書いていきたいと思います。

2回目は調査の概要と程度について書きます。

 

1 調査の概要~焦点、重点を絞る活動


 

 

調査は的を絞って行わなければなりませんが、

調査人員、時間、コストからの制約があり、

自ずと、調査の焦点を事前に絞らなければならなくなります。

また、重点的に観察すべき項目はさらに絞られてくるように思います。

 

前回に述べたとおり、

チームを組んで海外子会社の調査を行うことになりますが、

親会社の経営陣、ないし合弁会社である場合は、

他の株主の経営陣がどのような懸念をもち、

調査チームに対してどのようなリクエストをしてくるのか、

調査を受ける子会社の経営陣が

何を調査して欲しいと要望しているのか、

それらを事前に聴き取った上で、

焦点、重点を絞っていくことになります。

 

弁護士として私がチームの一員に入り、活動する場合には、

主に、コンプライアンス、内部統制についての調査を

担当することとなりますが、

何時どのような理由で

他の調査項目が関係してくるか分かりませんので、

自分の担当かどうかにかかわりなく、

全ての打ち合わせに参加するように時間のやりくりをします。

 

最初にやらなければならないことは、

具体的な調査内容を決定することです。

合議のうえ、調査のマニュアルを早急に策定することとなります。

 

2 調査の程度

  ~公認会計士における「レビュー」と「監査」の違いを類推すること


 

 

調査の程度をどの程度深化させるかは、

いつでも難しい問題のように思います。

この点について、公認会計士の業界で用いられている

「監査」と「レビュー」の両手法が参考になります。

これをある程度意識しておくと、調査がオーバースペックにならず、

柔軟に進めやすいと考えられます。

 

私は公認会計士ではありませんので上手に説明できませんが、

私の拙い理解では、

「監査」は、外部からの情報も含めて実査、立会、確認の作業を行い、

会社の内部外部を問わず情報を取得して監査手続きを行うもので、

財務諸表の整合性について積極的な意見表明を行うものです。

「レビュー」は財務諸表の分析は行うものの、

情報源は主に内部の担当者(経理担当者)が装丁されており、

財務諸表に修正を要する項目が発見されなかったことについて、

消極的な意見表明をするものです。

当然、監査のほうが負担が重く、費用もかかる、ということになります。

 

会計監査人監査を目的とするものではない調査であれば、

財務デューディリジェンスの場合には、原則としてレビューで足り、

非常に重要な事項については、監査に準じた手続きをとる、

ということで良いのではないかと思います。

 

他のパートについてもほぼ同じ考え方で臨むべきものと考えられます。

法律の分野で言えば、現地法について、

最初から頭にたたき込まなければならない、

と堅く考える必要はない、ということになります。

デューディリジェンスを極められた方からしてみれば、

至極当然のことのように聞こえると思いますが、

チームに一般の従業員などが含まれる場合もあるので

(現場業務フローを観察する人など)、

このことを意識していただくよう啓蒙することが、

私たちの仕事の1つになります。 

 

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企業法務/海外子会社管理(1)海外子会社への調査の意義

2016.02.13更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

法務の役割について一通り書く中で、

戦略法務、法務部の役割についてもブログを展開しましたので、

その延長線上で、戦略法務のあり方について

記載していきたいと思います。

具体的には、海外子会社管理の援助の業務に踏み出しています。

いまだ試論の域を出ていませんが、しばらく書いていきたいと思います。

 

1 海外子会社への調査の意義(日本の親会社からの視点)


 

 

日本にある親会社と海外にある子会社は、

距離が離れているため、

親会社が子会社を随時訪問することができないことが多く、

海外子会社の活動をチェックすることは容易ではありません。

通常は、主に月次資金繰り表や年次の決算書などを送ってもらい、

これを分析の用途に供することとなります。

大まかな経営実績を把握したとしても、

その数字が真に信頼がおけるものかどうかは不明です。

海外子会社が何を考え、

どのようなビジネスを遂行しようとしているのか、

その取引先との関係はどうかなどを知るためには、

たとえ親会社・子会社という近しい関係であるとしても、

積極的にコミュニケーションをとっていかない限り、

きちんと情報を入手できなくなるものです。

 

特に中小企業では人手が足りず、

子会社の管理のノウハウが確立されていないことが多いかと思いますが、

大企業とその海外子会社についても、質量の違いはあれども、

共通の悩みどころであるはずです。

最近では、テレビ会議等を行ったり、

電子メール等でやりとりをすることができるようになり、

かつてよりはコミュニケーションの状況は改善しています。

しかし、コミュニケーションの状況の改善は、

ビジネスの速度が速まることと裏腹の関係にあります。

海外子会社管理についても

競争相手がいることを認識しなければなりません。

かつてより子会社管理が楽になったということはなく、

むしろ煩雑になっているものと思います。

 

目が届きにくいところには不正が起きやすいものです。

多くの不正が海外子会社を通じて行われていると言われています。

海外子会社を含めた内部統制の構築が重要視されている傾向にあります。

 

2 海外子会社への調査の意義(海外子会社からの視点)


 

 

海外子会社は調査に協力することになりますが、

手間を掛けさせる側面がありますので、

親会社は、応対の手間に報いるよう、

海外子会社の活動に役に立つような調査をしなければなりません。

事前に入念に調査して臨むことが必要なことは当然です。

海外子会社の尊厳を傷つけたり、横柄な態度、

搾取を仄めかすような態度を示すことは、

モチベーションを下げるきっかけになりますので、

あってはならないことです。

 

海外子会社の関係者は、親会社の方針などを詳しく聞くことや

適切な援助を受けることなどができず、

業務上の迷いを覚えながら仕事をしていることもあります。

海外子会社の関係者に惜しみなくノウハウを提供することで、

海外子会社の業績の改善に繋げ、

ひいてはその経営陣、従業員の待遇を改善する、

という共通の目標をもち、

前向きにコミュニケーションをとることが重要です。

 

海外子会社管理の際に、改善点を見つければ、

遠慮なく指摘します。

日本の親会社の担当者等は、

子会社の経営陣に比べれば第三者的な立場に立ちやすいといえます。

労使間に少しわだかまりがあるような場合に、

日本の親会社の担当者が、

合理的な理由に基づいて改善点の指摘、アドバイス等をした場合、

子会社の労働者は、

経営陣が同じことを言うよりも言うことを聞いてくれやすくなる、

親会社もこう言っているから改善して欲しいと言いやすくなる、

という話を聞いたこともあります。

 

3 チームを組むことの重要性


 

 

海外子会社管理は、結局のところ、

様々な視点から1つの会社をフォーカスし、

濃淡の差こそあれ、総合的なデューディリジェンスを行う業務です。

もろもろのパートにつき、

それぞれの知恵を結集して、

チームを組んで実践していくことになります。

1人ではなかなかできませんが、

どの会社でも共通のノウハウを構築することにより、

次第に少数精鋭でも活動できるようになるはずです。

 

具体的な段取り(試論)については、次回以降に回したいと思います。

 

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企業法務(10)法務部の組織構築

2016.02.12更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

臨床法務予防法務戦略法務について書いてきましたので、

最後に、それらの法務を統合した組織(または機能)である、

法務部の構築について書いていきます。

 

1 法務部または法務機能


 

 

今後の会社の法務活動においては、臨床、予防、戦略の各領域を、

バランスよく遂行していくことが必要となることは間違いありません。

予算管理等を行いながら、

部員のスキルを向上させることも職務になります。

 

当然ながら、難しい側面がたくさんあります。

戦略法務自体が

最近になってクローズアップされ始めた活動であるため、

自社の置かれた現在の環境に合わせて

職務を再定義する必要があります。

他部署との業務分掌の境界を再検討、

再構築しなければならない場合もあると思われます。

 

上場企業などの大きな会社では法務部が存在することがありますが、

既存の法務部でも、

能動的・積極的業務にどの程度関わってきたかは千差万別であり、

職務の再定義の難しさは、

法務部が存在しない(機能だけ存在する)場合とは

違った難しさがあるように思います。

法務部の有り無しにかかわらず、法務機能を構築する業務は、

非常に裾野の広い業務だと思われます。

 

2 法務部の構築に関する弁護士の関与


 

 

法務部の構築まで至ると、一部の企業内弁護士の方を除き、

弁護士が関与している例をあまり聞いたことがありません。

おそらく、前例はかなり少ないのではないかと思われます。

法務戦略構築のためには、

戦略法務までを体感的に理解する必要があり、

経営についても深く観察しなければなりません。

 

私自身は、法務機能の構築をミッションとしうる案件を抱えています。

非常に稀有なことだと思っています。

創意工夫を凝らし、覚悟をもって職務に邁進し、

貢献していきたいと思います。

 

弁護士が法務部の構築業務に関与することにより、

臨床法務、予防法務などの領域において、

外部弁護士と法務部員の間で個々に構築したノウハウを、

組織全体に還元していくことが、

初めて可能になるのではないかと思っています。

 

3 文献など


 

 

他部署との職務分掌、人員構成、割り振り、

同部署内での業務分担等についての研究は、

ほとんど進んでいないように思います。

瀧川英雄先生の

「スキルアップのための企業法務のセオリー」

「レベルアップをめざす企業法務のセオリー 応用編」

 (いずれもレクシスネクシス・ジャパン)

が非常に参考になるので、読みながらいろいろと考えています。

書いてあることは、弁護士にとっては非常に常識的で、

スッと腑に落ちるものなので、読み進めることはできます。

ではいまの自分が同じ文章を書き進められるか?

と言われると、到底無理です。

専門化、分化が進みすぎた時代において、本当に必要なことは、

ジェネラルな暗黙知をマニュアル化することだに思います。

 

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企業法務(9)法務の役割~戦略法務

2016.02.11更新

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主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

法務の役割のうち、予防法務について書いてきましたので、

次に、戦略法務について思うところを書いていきます。 

 

1 戦略法務


 

 

私なりの理解ですが、戦略法務とは、法務の側から積極的に意見を述べ、

経営管理、経営戦略の策定のために助力する活動を指すと思われます。

相談の有り無しにかかわらず、

能動的、積極的に法務の側面から経営に対する意見を述べるものです。

 

グローバル化、ITの発展などにより、

時代の変化のスピードが著しくなっています。

個々の専門的知見を統合的に活用して、

要するに、どのような戦略を採るべきか?を探求する活動として、

戦略法務の重要性は増しているように思います。

 

2 弁護士の関与の薄さ


 

 

この分野に進出している弁護士は非常に少ないと思われます。

 

M&A,海外取引などの重大案件では、

大規模な法律事務所を活用することもあります。

しかし、弁護士費用が高騰し、

日常的に依頼することは難しいこともあります。

 

弁護士数の増加により、企業内弁護士が相当に増えていますが、

まだ数が足りないような気がします。

企業内弁護士のニーズも一巡した、という声も聞こえてきますが、

仮にそうだとすると、いまだに、戦略法務の領域では、

弁護士が十分に活用されていないことを意味するように思います。

さらに、法務部門に限らず、

内部監査、経営戦略等の部門でも、活用されるべき領域、

言い換えれば、

弁護士がニーズに応えなければならない領域は

もっと多く存在していると考えています。

 

3 戦略法務が分からなければ予防法務も(臨床法務も)分からない。


 

 

臨床法務が分からないと、

どういうトラブルがあるかを説得的に説明できず、

予防法務、戦略法務も十分にこなせませんが、

同様に、戦略法務が分からないと、

経営の観点からみた対処方針が分からなくなるため、

予防法務、臨床法務も十分にこなせなくなるように思います。

 

社会の耳目を集めた裁判等で、

社外の目をほとんど気にせずに徹底的に争う事例を聴くことがあります。

ときに徹底的に争うことも必要ですが、

経営の観点からは、それを控えたほうが良い場合もあると思われます。

ミクロを見るだけではダメで、

ミクロもマクロも両方とも見なければなりません。

臨床法務、予防法務、戦略法務を

厳然と分けられたものとしてとらえるのではなく、

複眼的思考を徹底し、

統合的に把握していくことが必要だと考えています。

 

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企業法務(8)法務の役割~予防法務

2016.02.10更新

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主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

法務の役割のうち、次に、

予防法務について思うところを書いていきます。 

 

1 予防法務


 

 

予防法務とは、

将来の紛争の発生を事前に予防するために行われる法務の活動です。

弁護士との関係では、多くの場合、事前に契約書をみてもらい、

確認を受ける、という活動が主になります。

そのために顧問弁護士を選任し、

顧問契約を締結したりすることもあります。

 

契約書等について

外部専門家の確認を受ける必要性を感じておられる会社は沢山あります。

予防法務の分野くらいまでは、

弁護士等もある程度進出している分野ということができます。

 

2 差別化の難しい業務


 

 

しかし、予防法務は、他との差別化の難しい分野です。

最近は会社自体の経験が蓄積され、

他にも文献のみならず、インターネット等の情報媒体も発達しており、

ある程度のレベルのものであれば、

努力すれば、情報を入手することができるようになっています。

 

必ずしも弁護士に事前に意見を聴くまでのことはない事例もあります。

臨床法務の場合と比べ、

弁護士に意見を聴く必要性のイメージが確立されきていないため、

事前に意見を聴くことの必要性に対する感度がどうしても薄くなります。

 

そして、契約書(8)のブログでも書いたことと裏腹の話ですが、

弁護士としての専門性を極めていけばいくほど、

どうしても裁判規範中心のものの見方になってしまい、

企業の取引実務の要望と乖離してしまう、という状況が、

弁護士に意見を聴くことの必要性に対する感度を鈍くしてしまうことも、

否定できないように思います。

裁判になったときの懸念と、会社が本当に脅威に感じている懸念とは、

必ずしも一致しない場合があります。

そのような場合には、

アドバイス自体がピンぼけになってしまうことがあります。

私自身も自戒しなければならないことです。

ピンぼけに聞こえるだろうなと承知しながら

アドバイスしなければならないこともあります。

 

予防法務は、

別の弁護士、別の専門家、別の方法(自分で努力するなど)と比較して、

この弁護士に相談して良かった、

と思わせることが、非常に難しい業務です。

 

3 予防法務もいまだに受動的業務である。


 

 

予防法務は、未だに紛争が発生しておらず、

どういう紛争が発生するかについて想像を巡らすことが必要であり、

臨床法務に比べて創造的な側面もありますが、

会社が取引形態の外枠を創っている以上、

その活動には、いまだに受動的業務の側面が残ります。

 

契約書の確認も、他社のひな形に問題がないかを確認する、

という場合も多くありますし、

さらに、沢山ある契約書を選別のうえ、

どの疑問点を抽出して弁護士に質問するか、

どの弁護士を活用するか、

という問題自体が会社の一存で決まることもあります。

ある程度法務部が手慣れていればそれで問題は起こりませんが、

そうでない場合は、会社の上層部もあまり知らない間に、

非常に高度な活動、

リスクの大きい取引などが行われてしまうことがあります。

 

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企業法務(7)法務の役割~臨床法務

2016.02.09更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

久しぶりに企業法務についてブログを書きたいと思います。

これから何回か、法務の役割(臨床法務、予防法務、戦略法務)について

思うところを書こうと思います。

最初に臨床法務について書きます。

 

1 臨床法務


 

 

臨床法務とは、問題が顕在化した場合に

その問題の解決に向けて行われる活動です。

典型的なものは裁判ですが、

交渉、クレーム対応などもこれに含まれます。

弁護士などの外部専門家に依頼することが多くなる分野です。

 

要するに個別案件を処理するということです.

しかし、時代の変化のスピードが著しい状況のもとでは、

取引に関する紛争の争点を裁判に持ち込むこと自体が

得策でないことが多く、

紛争は担当者の方による交渉によって解決される場合が多く、

弁護士が相談を受けた場合にも

交渉による解決が目指されることが通常であり、

裁判に至ることは稀です。

臨床法務が必要となる場合は、

社会関係の希薄な当事者間での

紛争処理(損害賠償事故処理、クレーム処理)の場合が

比較的多いものです。

このことは、契約書(9)のブログで述べたことと重なります。

 

2 専門家と臨床法務の関わり方


 

 

臨床法務のノウハウを構築することは

弁護士等の専門家にとって最低限保持しておくべきノウハウです。

臨床法務においては、

当該個別案件の微細な事実関係を凝視して活動することになります。

従業員よりも細かく事実関係を把握するくらいの気迫がなければ

務まらない仕事です。

関連する事項を徹底的に調べることもあります。

このことは、法律に関わる文献(裁判例・学説)に限らず、

当該業界に関する文献などを探索することもあります。

 

その過程で、

当該ビジネスの持つシンボリックな反省材料などを

見つけ出せることが多々あります。

このことは法律的な白黒とは次元の違う話だと感じます。

法律的にはこちらに理があるとしても、

ビジネスの遂行上の問題点を内包しているケースは

結構多いものです。

 

3  臨床法務≒受動的業務


 

 

しかし、多くの場合、

個別案件の処理を任された弁護士の仕事はそこでお終いになります。

反省材料などを感じ取っても、

それを伝え、改善を提案する機会が与えられなければ、

ノウハウが眠ることになります。

弁護士の側が反省材料等をどの程度会社に伝えたいと思うかは、

依頼者次第であり、

反省材料などを聞いてもらうことを無理強いする筋合いでもありませんが、

ほとんどの場合において

個別案件が終われば当然に職務は終了、

という流れになるならば、物足りない話です。

 

取引紛争における臨床法務は、

契約関係、当事者の紛争も予め所与のものであり、

与えられたフィールドの枠の中で最善を尽くす側面がありますし、

微細にわたり事実関係を精査の上、紛争に対処することは、

会社、弁護士の双方とも、非常にエネルギーを遣います。

終わってしまえば忘れたくもなります。

このことは、ある程度は甘受せざるを得ないことです。

しかし、少なくとも、

弁護士がそのフィールドのみに甘んじているようでは、

業界が有するポテンシャルを

十分に果たしきれないのではないかと思います。

 

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顧問弁護士(10)隠れた存在意義~法務費用の節減

2016.02.08更新

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主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

ある程度企業規模、取引規模が大きい会社の、

顧問弁護士の隠れた存在意義について書こうと思います。

 

 

1 法務費用の高騰


 

 

特殊商品を取り扱っていたり、海外投資・貿易をしていたりすると、

大手渉外事務所などに個別案件を依頼することがあります。

紛争等が存在するわけではないので、多くの場合は、

タイムチャージ制により報酬が請求されます。

知らない間にアソシエイトがついてきたりして、

弁護士報酬が非常に高額になることがあります。

 

法務部の機能が存在していれば

ある程度これを押さえることができますが、

その機能が不十分にしか存在しない場合には、

その費用を押さえることは難しくなります。

こうした場合に、もう少し近い立場から

一次的なアドバイスを行うという顧問弁護士には、

法務費用を節減する役割があります。

多少浅くても良いので、法務全般の概要を理解している弁護士でなければ,

存在意義を果たせない領域です。

 

2 法務費用節減のミッション


 

 

顧問弁護士は法務費用を増やすものだ、

というのが一般的な見方だと思いますが、

法務相談の一次的窓口を統一化し、

その顧問弁護士がエキスパートに対する割り振りを適宜実施して、

法務費用削減のミッションを顧問弁護士に与える、

というスキームが成り立ちうるように思います。

 

過去数年分くらいの法務費用を聞き、そ

れを一定程度削減することも目標にします。

もちろん、顧問弁護士も費用をいただかなければなりませんが、

それを込みにしても、

なおも法務費用を節減できるようにすればよいのです。

 

もちろん、不測の事態が起これば、

法務費用が予測よりも高騰することは避けられません。

必要な場合には惜しまず支出することが慣用化と思いますが、

予算以上の支出の理由は合理的に説明できるものでなければなりません。

こうしたプロセスを経ることにより、

企業法務費用を適正化していくことは、長い目で見れば、

業界の発展にも寄与するように思います。

 

原告専門の弁護士、被告専門の弁護士などという人種はいません。

それと同じように、弁護士は依頼を受ける側にまわっているだけでなく、

依頼を出す側にも回るのは、少しもおかしくないことだと思います。

 

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顧問弁護士(9)顧問弁護士と社外取締役・社外監査役との、弁護士からみた違い

2016.02.07更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

久しぶりに顧問弁護士について書こうと思います。

顧問弁護士の就任の要請を受ける場合と、

取締役・監査役の就任の要請を受ける場合の、

弁護士の側のものの見方の違いについて率直に書きたいと思います。

 

1 就任するかどうかの考え方の違い


 

 

違い、といえば、全然違うのは当たり前だろう、

とお叱りを受けそうですが、

仕事の依頼を受けた場合の判断要素の違いについて書きたいと思います。

 

一般的には、仕事の要請をいただくということは、

非常にありがたい話です。

しかし、取締役・監査役への就任は、顧問弁護士にくらべ、

少しハードルが高いように思います。

 

顧問弁護士は、依頼者である会社に責任を負いますが、

普通に職務遂行している限り、

それ以外の関係者に対して責任を負うことはほとんどありません。

しかし、取締役・監査役は、依頼者である会社のみならず、

依頼者ではない株主に対する責任を負うことがあります。

また、取締役・監査役に就任したとの情報は、登記されますので、

基本的に公開情報になり、職歴に残ります。

株主の動向、他の取締役の動向、内部統制等に、

何らかの問題点がある場合などには、

慎重に考えざるを得ない要素が残ります。

 

弁護士会も含め、各種団体が社外取締役、社外監査役を増やそうと

業界を挙げて取り組んでいるようです。

業界人としては助かる話です、しかし、就任する以上、

代表訴訟を提起される覚悟で臨まなければなりません。

野放図に職域を拡大しようとするだけであれば、

問題があるように思います。

リスクを覚悟しながらどこまで正論を言い続けられるか、

結果としてその人が究極的に会社に役に立つものなのかどうかは、

個々人に強く依存する問題のように思います。

 

2 取締役・監査役と顧問弁護士の間隙にある潜在的業務


 

 

しかし、取締役・監査役に自分ではなりづらい場合でも、

どうにかしてこの会社の助けになりたい、

という心情を抱くことは沢山あるはずです。

人助けをすることが弁護士の原点だからです。

 

このような場合には、

役員よりも身軽な立場の、顧問弁護士が役に立つと思います。

身軽な立場だからこそ貢献できる領域があります。

 

多くの会社には、すでに顧問弁護士がおり、

紛争処理、契約書のチェックなどを頼んでいますので、

余計には要らない、という考え方が一般的だと思います。

うちには顧問弁護士がいるし、ということです。

 

しかし、業務執行に関わる既存の専門業務、

すなわち紛争処理を遂行するだけが仕事ではありません。

主としてコンプライアンス・内部統制の観点から

会社業務全体を見渡す役割に特化しても良いと思いますし、

取締役・監査役間、取締役相互間、監査役相互間で

意見衝突が生じた場合に備えて調査を遂行し、オピニオンを出す、

といった存在意義を見いだすことも可能なはずです。

いまのところ、そのような活動に特化した弁護士は少なく、

費用も高額になりがちで、それゆえに、

問題が起きたときのスポット的な依頼が多いと思いますが、

裾野が増えればそのような現象はだんだん解消してくるように思います。

少なくとも私自身はホームページに記載したような

顧問弁護士報酬で請け負うことができると思っています。

 

現在の社会情勢では、上記のような内容は

社会の共通了解になっていないように思います。

しかし、役員の領域と顧問弁護士の領域の狭間には、

眠れる市場があることは間違いなく、むしろ、こちらのほうが

役員のルートを開拓するよりも裾野は広いのではないかと思われます。

 

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契約書(9)継続的契約に対する考え方

2016.02.06更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

前回の問題意識に引き続き、継続的契約について思うところを書きます。

 

1 継続的契約


 

 

取引関係に立つ当事者は、取引を反復継続していく過程で、

お互いの信頼を深めていきます。

継続的契約が網の目のようにめぐらされ、

そのネットワークは資本主義社会の根幹をなすインフラとなります。

深い信頼関係が醸成されればされるほど、

紛争を裁判の場に持ち込む可能性も低くなってきます。

 

伝統的な裁判規範に拘って細部の解釈論争ばかりを繰り広げていると、

肝心のインフラの内容が理解できなくなってくるように思います。

継続的契約は、一回限りの契約にまして重要であるのに、

その理論的分析は、

一回限りの契約の分析よりも遙かに遅れているように思います。

非常に骨太な分析を提示しているのは、

平井先生をはじめとした何人かの先生くらいかと思います。

 

2 継続的契約を理解するために


 

 

もちろん、市販の契約書のひな形をある程度読み込めば、

表面的に対処することは可能だと思いますが、

その会社が業務遂行のために採用する、

死活的に重要な継続的契約については、

業務の内容、予想されるリスク等を事前に慎重に考察しない限り、

きちんと作成することはできません。

今日のように時代の変化の波が激しい時代においては、

なおさらのことです。

5年先のことも予測が困難な時代です。

継続的契約の難しさはこの点にあります。

 

例えば、10年間効力を有する、

という場合には注意しなければなりません。

その10年の間に

IT技術が飛躍的に深化しているとことは確実でしょうし、

縁起でもありませんが、

日本経済全体がデフォルトしているかもしれません。

そこから派生するであろうルールについての

配慮もなければなりません。

過去の専門的な文献を参照しているだけでは

不十分な場合も多いと思います。 

 

ともあれ、弁護士の側に、ビジネスそのものに深く立ち入り、

企業側の予測、シミュレーションを丹念に聞き、

理解していこうとする姿勢がない限り、

法曹とビジネス側のニーズとのギャップが埋まることはないだろう、

というのが、現在の段階での私の結論です。

こうした問題意識をもとに、今後とも活動を続けていきたいと思います。 

 

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