野澤吉太郎法律事務所 弁護士 野澤吉太郎

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弁護士によるオンライン申請(その2) ~弁護士がオンライン申請する場合の電子証明書について

2023.09.18更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で弁護士をしております、

野澤吉太郎です。

 

まずはオンライン申請をおこなうためにいくつか用意しなければならないものがあります。

 

一番大事なのは電子証明書です。

 

個人事務所の弁護士の場合、登記業務、税務業務については、

マイナンバーカードを使用することになります。

何かと嫌われるマイナンバーカードですが、用意する必要があります。

 

ただ、マイナンバーカードは士業の名において利用するためには

不十分な電子証明書です。

マイナンバーカードは士業登録と紐づいていません。

自宅住所のデータは内蔵されていますが、

事務所住所のデータは内蔵されていないからです。

 

士業用の電子証明書として、司法書士会は司法書士電子証明書、

税理士会は税理士用電子証明書(第五世代)、

社会保険労務士会は社会保険労務士電子証明書というものを

用意しています。

 

司法書士、社会保険労務士については、

セコムトラストシステムズ株式会社が有償で発行しています。

知る限りでは、司法書士の一般的な登記業務、

社会保険労務士の申請において電子署名が必要な場合には、

これらの電子証明書を使用することが

職業上義務付けられています。

 

税理士は職務上の義務かどうかまでは確認できませんが、

おそらく同様だろうと思います。

 

したがって、電子証明書が利用可能な場合に、

マイナンバーカードを利用することは通常はないと思われます。

 

社会保険労務士では、労働社会保険諸法令に基づく申請書の作成提出代行、労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成の提出等が独占業務とされています。

 

弁護士資格の保有を証明すれば社会保険労務士登録をすることができるので、社会保険労務士会に入会し、登録をすることとしました。

そうすると、電子申請するには社会保険労務士電子証明書を発行してもらう必要がでてきますので、電子証明書の発行依頼を行いました。社会保険労務士業務を行う場合にはマイナンバーカードを利用することはありません。

 

税理士業務については、税理士法51条通知による税理士業務開始の場合は、マイナンバーカードの使用でも問題ないようです。

 

したがって、私は登記業務、税理士業務については弁護士の肩書にてオンライン申請しますので、マイナンバーカードを利用しています。手探りではありますが、今のところ、マイナンバーカードを利用した電子申請でも補正なく受け付けられています。

 

他方で、社会保険労務士業務については、社会保険労務士として電子証明書でオンライン申請しています。

 

 

 

投稿者: 弁護士 野澤吉太郎

弁護士によるオンライン申請(その1)~オンライン申請に挑戦する

2023.09.17更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で弁護士をしております、

野澤吉太郎です。

 

しばらくの間、弁護士が登記、税務、労務にまたがったワンストップサービスをオンラインで行う場合の準備について書いていきます。

 

弁護士がワンストップサービスを紙媒体でおこなうことは、それほど難しいことではありません。必要な資格の登録をすませ、一応の業務知識を身につければ大丈夫です。

 

しかし、設立登記に先立つ電子定款認証と紙の定款認証の費用を比較すると、電子定款認証の場合には印紙代4万円を節約できます。最初のところで、競争力に差が出ます。

4万円くらい…と考えてくださるクライアントもおられますから、進めることはできます。しかし、それでは何となく居心地が悪いです。

やはり今どき、電子化に対応しきれていないことが、心の奥底にかなりひっかかります。

 

そこで、ワンストップサービス全般につき、オンライン申請に挑戦しようと考えました。

 

オンライン申請するにあたり、調べなければならないことが膨大であり、困難を極めます。

まず、何のソフトをインストールすればよいのか、調べること自体がとにかく大変です。ITの素人なのでなおさら分かりません。

結論をざっくりと書くと、申請用総合ソフト、e-tax、eLTAX、e-gov、gBizID、届書作成プログラム、というものをインストールする必要があります。

弁護士にとっては、それらのソフトを把握するだけで大変です。

そして、それぞれのシステムには全く統一感がありません。どの順序でどのソフトをインストールすればよいかも手探りです。

 

個々のシステムについては、士業の先生などに聞けばもう少し分かるかとも思いました。ただ、商売敵と思われてもなあ…、とも思います。そして、それ以上の問題があります。

専門の士業の先生方にとっては行政機関のプログラムの使い勝手が非常に悪いので、そのまま使っている先生方はあまりいないということです。

行政機関のシステムと連携している民間業者さんの業務用プログラム(当然、有償)を利用しておられるのだとも思います。そもそも生の行政機関のシステムのインストールなどについては、おそらくはよくご存じないだろうと感じます。

 

司法書士の先生や、税理士の先生、社会保険労務士の先生には、笑われてしまうような話が続きますが、独学でオンライン申請のソフトをインストールしてみた顛末を書いていこうと思います。

 

以下は全くの独学で調べた結果なので、理論的に誤りがあるかもしれません。今回書くにあたり再度調べなおしましたが、内容が正確かどうかは、保証しかねますのでご了承ください。

 

 

投稿者: 弁護士 野澤吉太郎

相続相談弁護士ガイドさんから取材を受けました。

2018.04.13更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

ずいぶん空いてしまいましたが、更新します。

 

このたび、相続相談弁護士ガイドさんから取材を受けましたので、

リンクを貼ります。 

https://souzoku.how-inc.co.jp/topics/4140678

 

相続相談弁護士ガイドを応援しております。

離婚慰謝料弁護士ガイドを応援しております。

残業代請求弁護士ガイドを応援しております。

不動産トラブル弁護士ガイドを応援しております。

 

かなり時間が空いてしまいましたが、またブログを再開したいと思っています。

 

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相続と弁護士(3)「最初から最後まで」を書く理由

2017.02.24更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

相続と弁護士、のテーマを長々と書いていく理由について、

この機会に書きます。

 

1 最も大事な時期は相続開始直後であること


 

 

多くの場合は、対策が不十分なまま相続が開始します。

死亡届を役所に出さないと火葬してもらえない、

その後お葬式を手配する、

現地を訪れる、年金の手続きをする、

銀行の手続きをする、など、

悲しみに暮れる間もなく、

たくさんの事務処理を進めなければなりません。

 

当初の時期に誰かが預金を引き出したり、

何かを持ち去ってしまうから「遺産争続」になる、

あるいは、債務を見落としてしまう、

ということによって、

トラブルが深刻になることが非常に多いものです。

 

トラブルになった後に、遺産分割協議に関与する、

あるいはトラブルを避けるために遺言を予め書いておく、

という形で、専門家が関与することは多いです。

遺言もないような場合に、トラブルを避けようとするのであれば、

相続開始直後にきちんと資産、負債の調査を行うことが大事です。

その領域には専門家はあまり関わっていません。

 

破産管財事件などに関与していると、

初動が大事だ、ということを、何度も何度も言われます。

相続も全く同じです。

破産と異なり、被相続人は亡くなっていますので、

早期の保全は破産の場合よりはるかに重要です。

 

しかし、そういうことを言っている専門家、

あるいは関わっている専門家をあまり聞いたことがありません。

 

やはり、四十九日、という事実上の慣習がネックになっています。

財産を分ける話はしない、というのは、

宗教上の見地からは尤もなものとして腑に落ちます。

しかし、事実を把握することは非常に大切なことです。

全相続人のために資産を保全してしまえば、

分け方の話は後でも良いのです。

 

2 専門家は断片的。


 

身の回りの人の相続について、

ほぼ最初から最後まで自分(私自身)でやってみました。

相続に関する専門家の関わり方について、

専門家の側と相続人の側で認識が恐ろしく異なることに気がつきました。

 

相続人からすると、たくさんの専門家を、

スポット的に紹介されるのは、

はっきり言って説明が面倒で、本当に困ります。

よほど上手な司令塔がいないと、はっきり言って邪魔くそになります。

野球の野手のお見合みたいな理由で、

フライを見落とすことも多いのではないか、という懸念も感じました。

 

相続が開始した後に、いったい何をすれば良いのか、

統一したメソッドを確立するようアドバイスする人があまりいないように思います。

周りを見回すと、遺産分割のトラブルよりも、

事務処理がひたすら面倒な事例のほうがはるかに多いように思います。

多くの人は、進め方が分からないから困っているのです。

 

全部を伝えきることはできないと思いますが、

最初から最後まで経験した一例を書くことによって、

全体像の把握に少しでも役立つようにと思い、

引き続き書き続けることとします。

 

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相続と弁護士(2)~相続人に同伴して弁護士が故人の住居を訪れる

2017.02.23更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

故人が亡くなられた後、相続の最初から最後まで弁護士が関わる場合に、

何を最初に行うか、具体例を書きます。

 

1 現場~故人の住居~を訪れる


 

まずは、調査が必要です。

何事も、最初に現場を訪れることが肝要です。

現場に残された証拠を把握することです。

相続の場合の現場とは、故人の住居です。

相続人の了承を得て、同伴することは当然です。

中にあるもの、特に資産関係には、

手をつけてはなりません。(当たり前です)。

相互監視の仕組みをつくることが重要です。

 

何を注意して見なければならないかが問題です。

一言で言えば資産と負債を把握することです。

もっとも重要なのは、負債の調査です。

預金通帳と郵便物を中心に見ていくことになります。

 

相続の相談を受けるとき、

資産の分け方についてお話される方がほとんどです。

必ず返答するようにしていることは以下のとおりです。

そうではなくて、まずは負債ですよ、

こういう債務があるとあとで面倒な目にあいます、

特に連帯保証債務はありませんか、

負債の存在をうかがわせる書類はありませんか、

ということを言います。

 

2 負債の調査~通帳履歴と郵便物の調査


負債の調査が必要だ、というアドバイスをした後に、

必ず以下のような質問を受けます。

負債は、どのように調査をすれば良いのですか?

 

難しい質問ですが、

通帳の履歴と郵便物を集めて、地道に見ていくほかない。」

と回答することになります。

 

どの程度調査すべきかは事案により異なります。 

独居の方の場合には、そうでない場合に比べ、

慎重に調査する必要があります。

 

郵便物が整理できていないまま亡くなられる方もいます。

郵便物を見るには現場に行くしか方法はありません。

この場合、書類の整理から始める必要があります。

郵便物などを信販会社ごとに分別し、

銀行預金通帳と照らし合わせて、

この債務は支払われた、支払われていない、

ということを確認していきます。

恐ろしく地道な作業になります。 

 

3 資産負債の調査は弁護士が適任であること


 

資産負債の調査については、弁護士は経験的な知見をもっています。

特に、破産関係の業務の経験が非常に生きてきます。

 

私も裁判所から破産管財人に任命されることがありますが、

就任後、破産者からの郵便物が転送されてきます。

郵便物の転送を受けている段階で、

新しい債務を発見したりすることがあるからです。

弁護士は探偵ではありませんから、全てが分かるわけではありませんが、

書類を読み込んでいくと、資産負債の「におい」を感じます。

「におう」点を重点的に調査することになります。

弁護士は、一般的に、資産負債調査の場数を踏んでいるといえます。

 

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相続と弁護士(1)~始めから終わりまで司令塔となる

2017.02.21更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

しばらくの間、ブログを書くのを止めていましたが、

久しぶりに再開し、相続について書いていきたいと思います。

 

1 相続に対する弁護士の一般的な関わり方


これまで、弁護士が相続に関与する場合、

「遺言の作成」

「相続放棄、限定承認」

「遺言執行者」

「遺産分割」 

などと、

相続の全体像の一つ一つの場面を取りあげて、

弁護士が受任する場合が多かったと思います。

 

特に遺産分割に重きが置かれていたのではないかと思います。

少し前ですが、「遺産争続」というドラマがありました。

お客様の側にも、弁護士の側にも、

弁護士イコールトラブル、相続でいえば遺産分割、

の考え方が浸透していると思います。

確かに遺産分割の争いが大きい場合は、

当事者も弁護士も相応の労力を遣います。

その前後の出来事(遺産の調査、換金、登記、税務申告など)には、

関与しないか、別の専門家に任せる場合も多かったと思います。

 

2 司令塔の存在の必要~最初から最後まで相続に関与すること


 

しかし、相続の全体像を場面場面で切り分けて捉えていく考え方は、

相続人であるお客様のニーズを捉えていません。

専門家でチームを組んで対処する事例もあると思いますが、

大がかりな事例でない限り、専門家が複数介在することは、

費用が高くなり、専門家に依頼することに躊躇が生まれます。

相続人、専門家の情報が断片的になりがちです。

その躊躇の間に間違いが起こることも少なくありません。

不適切な結果をもたらすことも多いのではないかと思います。

 

最近、必要があり、相続の処理のほぼ最初から最後まで関与する機会がありました。

最初の時期の書類の確認から始め、換価を行い、

相続税申告書の原稿まで検討しました。

その中では、遺産分割協議書の作成などは取るに足らない事務処理でした。

争いのない事例であっても、その事務処理の量は非常に膨大なものです。

非常に労力を遣うということを身をもって知りました。

事務処理については誰に相談すれば良いのか?

事務遂行は弁護士に相談するべきものなのか?

一般の方々は本当に戸惑うと思います。

 

争いごとはないものの、

事務処理を円滑に進めることが大変な事例が、

圧倒的に多いのではないかと考えています。

 

「事務処理は明らかに必要だけれども、紛争はない。

だから誰に相談して良いのか分からなかった。」

という話を聞くことがあります。

争いのない事例であっても、全体の司令塔がいるほうが、

相続人はずいぶん楽になります。

 

司令塔が弁護士でなければならないわけではありません。

しかし、これから何回かに分けて理由を書こうと思いますが、

司令塔は弁護士とするのがベストであると考えます。

 

3 弁護士が紛争を解決する専門家であることは当然、

前提として、事務処理を行う専門家であるべき


 

 

弁護士は紛争を解決する専門家ですが、

それ以前に、事務処理を進める専門家です。

紛争があればそれを解決することは当然ですが、

お客様のご要望があれば、

紛争の有無にとらわれず、

最初から最後まで事務処理を執り行う姿勢で臨むべきものと思います。

 

これから具体例を書いていきたいと思います。

 

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不動産事件(12)不動産の供給過剰の傾向と不動産事件

2016.04.06更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

不動産の供給過剰の世相のもとで、

どのような不動産事件が増えるかについて、

考えを簡単に書いてみようと思います。

 

1 不動産の供給過剰とトラブル


 

 

都市部でタワーマンションやオフィスビルが次々と新築されていますが、

明らかに供給が過剰なように思います。

人口が減少しているのに住居が増えている状況です。

オフィス需要も、どの程度堅調に推移するか疑問です。

クラウドサービスの進展により、

パソコンを持ち歩けば仕事ができる時代です。

 

外国人や海外会社の需要を取り込む動きもありますが、

手放すモチベーションがどうしても高くなるように思いますし、

戻りの程度は限定的なように思います。

一時需要の取り込みも、

一歩間違えるとトラブルの原因になります。

例えば、民泊を活用する動きもありますが、

個人的には、慎重に考えたほうが良いように思います。

無断転貸、用法違反などのトラブルを招く可能性もあり、

裁判などで解決しなければならないトラブルも増えると思います。

 

2 管理の困難な不動産の後始末(賃貸借の解約、建替)


 

 

今後は、需要の減退を遠因とするトラブルが、

徐々に増えていくように思います。

賃貸不動産やマンション等は、

満室であることを前提として新築されたものが多いですが、

老朽化すると、次第に空き部屋が続出し、

管理が困難な状況に陥る物件が多くなります。

耐震設計上懸念のある不動産について、

建て替えを推し進めるべき状況も徐々に顕在化しています。

高齢化の進行もこの傾向に拍車を掛けるように思います。

 

行政が急ぎ対処する事例も多くなると予想していますが、

予算が限られている中で、行政のみに対処を委ねていると、

手遅れになることが多いと思われます。

 

不動産が管理困難な状態に陥る予兆がある場合、

管理の継続の方法と、手じまい(取り壊し)の計画の策定を、

民間人が関与し、ノウハウを積み重ねることが

求められているように思います。

例えば、最低限の管理を継続しながら、適切なタイミングで、

賃借人に退去していただけるよう予め戦略を練る。

賃貸マンション等に比べれば、後見案件、相続案件でも、

規模は小さいものが多いですが、同様の現象がみられます。

この領域で弁護士が活動していく余地が

大いにあると踏んでいます。

 

不動産事件に関するブログは、ひとまずこれにて終わりにします。

 

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不動産事件(11)地方の不動産紛争~所有権と用益権・入会権

2016.04.05更新

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主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

私は地方の不動産紛争に何件か関与したことがありますが、

その過程で慣習上の権利の存在に直面しかけて、

非常に考えさせられたことがありましたので、概要を書きます。

 

1 土地所有権侵害


 

 

依頼者が所有する山林の中に、付近の住民が、

野草の採取のために立ち入っている、

という相談を受けたことがあります。

大学で現代の法律を学び、

その後に東京で弁護士業を何年も営んでいると、

付近住民によるそれらの行為は、土地所有権の侵害だろう、

と即断し、疑わなくなります。

当然、立ち入り禁止の看板を出そう、簡単でも良いから柵を作ろう、

侵入者には警告しよう、というアドバイスの流れになります。

 

付近住民が言いそうな主張内容はある程度想像がつきます。

たとえば、その山林の所有者はよそ者(地元と縁のない業者)だろう、

私たちの先祖が地元に根ざして土地を開拓してきたのだから、

私たちにも権利がある。というものだろうと思います。

民法の思考回路に慣れ、都会的発想にも染まった人間からみると、

所有権を否定するとんでもない論拠だ、

まったくルールを理解していない、という考えに陥ります。

 

2 慣習上の権利


 

 

しかし、その後に一見関係のない分野も含め、

いろいろなところから見聞を深めるにつれ、

私のアドバイスが少し安直だったことが分かってきました。

 

たとえば、入会権という権利があります。

入会権の定義は学者の先生方によって様々ですが、

典型例としてあげられるのは、一定地域の住民らが、

一定の山林原野で草木などを共同して採取する、というものです。

村落共同体に基礎を置く権利であり、

その対象は、山林、原野、河川、温泉、漁場など、

広範囲に及びうるものです。

 

民法上の条文は、2箇条しかありません。

・共有の性質を有する入会権については、

各地方の慣習に従うほか、この節の規定を適用する(263条)。

・共有の性質を有しない入会権については、

各地方の慣習に従うほか、この章の規定を準用する(294条)。

 

明治時代に地租改正を断行し、近代的所有権制度を確立するにあたり、

土地を官有地・私有地に分けることになりましたが、

特定の土地を、半ば強引に官有地に編入する際に、

付近住民の権利が完全に消滅することなく、

残存したものがあるようです。

明治時代の民法制定の際にも、

各種各様の権利を

条文で一律に規制することは不可能と考えられたため、

慣習にしたがう、という内容の条文しか

設けられなかった経緯のようです。

今後の民法改正でも

この条文を変更するとの話は出ていないようです。

 

かつて官有地、地方公共団体の所有であった土地については、

入会権が残存している可能性が高く、

現在においても、取得しようとする不動産業者は

細心の注意を払って調べる必要があります。

入会権は登記されているとは限らないところが厄介なところです。

 

バブル期の土地開発においては、開発を進めようとする業者に対し、

隣地住民が入会権を主張し、徹底的に抵抗する紛争があったようです。

徳川時代に形成された慣習にさかのぼって

調査をしなければならないため、

主張、立証に相当の長期間を要し、紛争が解決したときには、

開発の意味が乏しくなっていた、などという話も聞いたことがあります。

 

3 地方の不動産紛争の難しさ


 

 

私は、間違ったアドバイスをしていたわけではないのですが、

付近住民が本当に無権利なのかどうかを疑わなかったことに、

多少の問題がありました。

付近住民がその土地について昔から慣習的な権利を有しており、

現在の住民も、その慣習的な権利を承継している可能性があります。

昔からある土地の所有権を過去にさかのぼっていくと、

地租改正の時代にさかのぼります。

このような土地において、

慣習的な権利の不存在を証明することは非常に困難です。

 

入会権については、民法学者の中にも、

多大な研究業績を残されている方が何人かいらっしゃいます。

近代的所有権を出発点に考える民法の考え方からすると、

非常に理解しづらい領域です。

社会学的な分野に関心をお持ちの学者からすれば、

これ以上面白い分野はないのかもしれません。

地方の不動産紛争については、

近代的な土地所有権を鵜呑みにできない側面があります。

 

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不動産事件(10)環境規制について

2016.04.04更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は不動産の開発に伴う環境規制について書きます。

 

1 不動産と環境規制


 

 

不動産に関するデューディリジェンスをおこなうにあたり、

環境法規制に関する考察は避けては通れないものになっています。

環境被害の多くは、土地建物を問わず、不動産から生じるものです。

 

不動産の開発申請については、会社、不動産業者と行政側の折衝によって行われることが多く、

それで大体事足りており、弁護士が参与することはあまり多くなかったように思います。

弁護士も細かな法規制についてはあまり知らないことが多く、

私自身もあまり明るくない分野がたくさんあります。

 

しかし、ビジネスの構築に寄与することがこれからの弁護士に求められているものと思いますし、

その中には不動産の開発等が密接に絡むものも沢山あります。

環境規制は、無尽蔵ではないかと思えるくらい、多種多様にわたります。

1つ1つ条文から勉強していくことは途方もないくらいです。

私自身は、ビジネスの構築の経験を積む過程で、少しずつ詳しくなることを目指しています。

 

2 法律や文献の調べ方など


 

 

公害規制的な内容のものとしては、廃棄物処理法などがあります。

自然保護的な内容のものとしては、自然公園法、森林法、河川法などがあります。

挙げればキリがないくらいです。

インターネットなどで環境規制を総ざらいし、

必要性の高そうなものについて深掘りして調べていくことが必要です。

 

何年か前に森林法について詳しく調べようとしたことがあります。

しかし、そのころ、これらの法規制について、

考察を加えた文献がほとんどありませんでした。

官庁の図書館などに出入りしながら根気よく調べました。

せっかく文献を見つけても、行政の解釈については言及されてはいるものの、

法制度の問題点などを明示に指摘するようなものは特にありませんでした(当然ですが)。

文脈のウラを読んでいく作業に非常に苦心したことが思い出となっています。

温泉法、河川法などについても同様の状況であったと思います。

 

3,4年くらい前からだったと思いますが、徐々に、文献が出始めています。

弁護士増員の成果といえばうがった見方かもしれませんが、

徐々に業務が開拓されている実感があります。非常に面白い状況だと思っています。

 

3 新規事業と環境規制


 

 

原発事故の後、環境への配慮から、

再生可能エネルギーが奨励された時期がありましたが、

再生可能エネルギーが必ず環境に優しいか?と考えてみると、そうでもないように思います。

 

特に、メンテナンス不十分な太陽光発電などは、漏電、発火のおそれがあり、非常に危険です。

パネルを見ると何となく楽しくなります。

触りたくなる人もいるかも知れませんが、感電死してしまいかねません。

 

環境規制を厳しくして生まれた事業にも別の環境規制が必要となります。

終わりのないリスク管理の連続です。

 

環境規制について絶えず厳しくチェックする仕事は、相当の潜在的需要があるように思います。

 

4 海外の不動産においても概ね共通の問題があること


 

 

しかも、環境規制は日本国内に限ったものではなく、世界的にほぼ同種の規制がある、

という点が非常に興味深いところです。

日本国内の環境規制に詳しくなれるのであれば、

海外事業でも応用を利かせられるのではないかと思っています。

 

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投稿者: 弁護士 野澤吉太郎

不動産事件(9)賃料増減額に関する紛争

2016.04.03更新

東京都豊島区の池袋エリアの法律事務所で

主に城北エリアを中心に弁護士の活動をしております、野澤吉太郎です。

今回は、賃料増減額をめぐる紛争の処理について書きます。

 

1 借地借家法に基づく増減額請求権


 

 

まずは条文上の根拠を挙げます。

土地については借地借家法11条、建物については借地借家法32条です。

 

借地借家法11条1項

地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、

土地に対する租税その他の公課の増減により、

土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、

又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、

契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。

ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

借地借家法32条1項

建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、

土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、

又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、

契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。

ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

 

商業不動産開発などが盛んであった時代などにおいては、

年々ますます景気が良くなるだろう、という見通しのもと、

賃料自動増額条項などが契約書に設けられ、所有者を勧誘していた事例がありました。

私が弁護士になった時期ごろにこの件に関する紛争が多発しており、

裁判例も蓄積されていました。

 

増額、減額のトレンドは、景気に左右されます。

賃料自動増額条項などに関連する紛争は少なくなっていると思いますが、

最近、都市部においては増額のトレンドになりかけているような気がします。

権利行使までの調査の内容、権利行使のタイミングについてアドバイスをすることが、

請求を行う側の弁護士の重要な仕事です。

 

2 調停


 

 

賃貸人、賃借人間の交渉がまとまらない場合には、

請求をする側の当事者は調停を申し立てなければなりません。

多くの場合、裁判所による鑑定を経ていない状況で調停を行います。

片方の当事者が依頼した不動産鑑定士による鑑定書がある場合でも、

その内容を相手方当事者が受け入れないことが多く、

私の実感としては調停が成立して紛争が終結するケースは割と少ない気がします。

 

3 訴訟


 

 

調停が不調に終わった場合は請求をする側の当事者が訴訟を提起することになります。

お互いの主張立証を一応尽くした後に、不動産鑑定を実施します。

鑑定書が出された後に、話し合いの機会が持たれることが多く、

話し合いが決裂した場合には証人尋問、判決という流れに移行します。

 

4 弁護士の活動


 

 

訴訟にまで至った場合、不動産鑑定士による鑑定の内容が結論においても採用される可能性が高く、

正直なところ、弁護士が知恵を働かせて大きく流れを変える、ということはあまり多くありません(特に被告の場合)。

しかし、法廷の場で賃料の増減額を争うにまで至る背景には、

賃貸人・賃借人の間で別のトラブル(賃料不払い、用法違反など)も隠れていることが多く、

訴訟上の和解の場でこれを解決できる可能性もあります。

また、どの時点から賃料を増額するか(意思表示時か、和解時か)、

鑑定費用を誰が負担するか、などにおいて、

駆け引きを行いやすい環境があります。

話し合いを成立させるための戦略、駆け引きについては、

弁護士の出る幕は大いにあります。

 

5 弁護士費用


 

 

弁護士費用については、月額の増減額の請求幅または実現幅×7年分を経済的利益とみなし、

それを交渉、調停、訴訟の着手金・報酬金の算定式にあてはめることでお願いしています。

鑑定費用は別途必要です。鑑定費用をどの当事者が負担するかは、話し合いの場合はその内容次第であり、

判決の場合は、概ね、鑑定費用の金額に敗訴割合を乗じた金額となります。

(このことから、判決が不利な内容の場合には、話し合いをしたほうがよい場合が多いといえます。)

 

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